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飛鳥京香/SF小説工房(山田企画事務所)

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「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説

2018.07.19
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「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第1回
この小説のURL : https://ncode.syosetu.com/n9669cz/

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所

 僕達2人は、乗りごこちの悪いローカル線に乗っている。

列車は。僕の故郷に向かっていた。

故郷といってもあまり記憶はない。親戚もいない。

僕は都会の中で一人、孤独で何年も住んでいた。

あるきっかけで故郷へ帰ろうと思った。

 奈良県、和歌山県、三重県の3県の県境にあるふるさと。

ふるさとといっても本当に伺のとりえもない山間の小さな村だ。

それこそ、一日に三本あるかないかの鉄道、駅からパスに、パスの終点から山道、そま道を歩み、やっと、その土地、頭屋村とうやむらへたどりつくことができる。        

 帰ったところで、誰も僕を喜んでむかえてくれるわけではない。

 僕、日待明ひまちめいは頭屋封へ、何年もの町中の生活で得た悲しみ、体の中にたまりすぎた汚れを、洗いおとすために帰る。

苦しみは僕の体をむしばんでいるのだ。

なみだ岩に、行き着き、そこで涙を流すことで、僕は幸せになれるだろう。いや少なくとも、過去の傷を、いくぱくかいやすことができるだろう、と僕は考えていた。

僕の生まれた頭屋村は、「神立山」と呼ばれる深山の中にある。

奥深い、あまり人も、森林伐採でしか入れない「神立山」の森の中に「なみだ岩」と呼ばれる岩がある。

「なみだ岩」のまわりは、不思議と草が刈りとられたような芝の多い草原になっている。

その草原を深い森がかこんでいる。

「なみだ岩」はわかりにくい場所にあり、頭屋村出身でない者はたどりつくことができがタイ。

涙岩は高さおよそ15mくらい。頂上はとんがっていて、底に向かって広がっている。

土の中に岩の半分ほどが、うまっている感じだ。

全体は緑がかった乳白色で、表面は人が毎日みがいていると錯覚するほど光り輝いている。

遠くから見ると、涙のしずくが空からかちてきて、地球につきささったようなのだ。

、、、と詳しく知っているようだが、僕は父が亡くなったあと、すぐ頭屋村を出て、遠い親戚をたより、東京にでていった。

5才の頃の話だったから、なみだ岩についてくわしく覚えているわけではないのだ。

この「なみだ岩」にのぼり、その上で涙を流し、「なみだ岩」に、涙がしみこんでいくなら、その人は幸せになるという伝説がある。

この「なみだ岩」伝説を知ったのは、ふとしたきっかけだった。

親戚から東京に送られてき、父の形見を整理していた時、父の日記を見つける。

古ぼけたページを,めくっているうちに、こんな記述にであったのだ。

「涙岩は 何百年かに一度、必ず崩壊する。

そして、その跡には、指でつまめるほどの小さなかけらが残る。人はこれを原石

と呼ぶがたま、そのあとに残ることがある。

なみだ石のほとんどは夜空に舞いあがってい

く。そしてなみだ岩はきれいになくなっていて、あとには大き々穴があいている。まわりの草原も焼けただれている。

この話は、先祖代々に渡り、頭屋村に住んでいる者のみに語りつがれている。」

と、、、

 僕は子供の頃見たことのある「なみだ岩」を、もう一度、はっきりとこの眼にしたい。

涙を流したいと思う。あれほど美しい原岩がこわれぱ、どれほどの「なみだ石」ができるのだろう。涙岩の美しくくずれる瞬間、それをながめたい。

 さいわい、「なみだ岩」についてはあまり知られていない。

もし旅行維誌がとりあげれば、一たちまち大勢の人でうめられてしまうだろう。

 しかし、神立山は観光ルートからはなれた辺境で、訪れる人はほどんどない。

「なみだ岩」は、ごくわずかの人しか知られていない。

たとえ、「なみだ岩」のことを土地以外の人が知っでも、「なみだ岩」で悲しみ

をとりのぞいてもらい、本当に幸福になりたいと思う人にしか「なみだ岩」の場所を教えてはならないのだ。

僕の行動は、あらゆることを投げすて、その「涙岩」に行きつけたい。

と思った時から始まっていた。

(続く)

作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所







最終更新日  2018.07.19 00:56:29
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2017.04.04
「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第5回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://syosetu.com/usernovelmanage/top/ncode/779592/

第5回ー最終回

私が目をあけると、ヘリはすべて夜空から消えていた。
残滓が飛び散っていた。
滝は、滝であった生物は、緑色の光を櫛びた物質に変化していた。

私は草原に腰をおろし、涙岩をながめていた。
手になみだ石をにぎりしめていた。

 リーラが私の側まで歩いてきた。

 しばらくだまって私をながめていた。

 「さっき、パスの転落の時助けてくれたのは君だね、リーラ」
 「そう私。あの滝という人に来てほしくなかったのでパスを落としたの。バスの運転手も地球防衛機構の一員だった」

 思わず、私たちはお互いを抱きあい、耳元で小さな声でささやいた。

「きようならミユー」
 そして、私は涙岩の方へかえっていくリーラに同じように小さい声でつぶやいた。
「さようなら、リーラ」

 さようならを言った時、リーラの目にも涙が浮んでいた。それは、私がいま手にしているなみだ石とよく似ていた。
 リーラは罪人の私に最後の別れの機会をあたえてくれたのだった。
もちろん規則違反だ。
私という罪人に、本当の記憶をとりもどすきっかけをあたえ、私達の星への帰還をみかくらせるのは。

 私は、彼女達の旅立ちを、最後まで見届けようと決心した。

 彼女達、それからこの穢れた地球から逃れる人間達は、涙岩のまわりに整列した。
涙岩がまた輝きを増し、緑の光が彼女達をとりかこむように、みえた。

 やがて彼女リーラ達の体は、涙岩が発する緑の光の中でだんだん小さくなっていき、しまい脚は見えなくなっていった。

光り輝く涙岩の表面に小さなひびがはいっていき、まもなく、ひびは、涙岩全体を覆った。
緑色の光はオレンジ色に代わり、涙岩の端から、はじかれるようにくづれていく。このかけらは緑色に戻る。細かいなみだ石の集団は、人々が圧縮され乗り込んだ宇宙船なのだが、しばらく空間にとどまっていた。
そして、突然に、夜空の中に、すいあげられるように上昇していく。

もう、地球防衛機構の防御手段では、手に終えない存在となった。

残った涙岩の部分は、崩れる速度がしだいに早くなり、最後には、爆発を起こしたように四方に飛び散り、最後には、涙石の集団の方へ、引きつかれていった。
別れの花火のようだった。

なみだ石の集りが、すべて、夜空に吸い込まれていくのを、私は最後までながめていた。
私の手の中には、リーラから渡された「なみだ石」が残っている。
思わず握り締める。リーラの体の温もりが思い出された。

この地球に、、一人、、取り残されたのだ。

癒される事のない寂しさ。

私ミユーは、なみだ石を握り締め、今までの2000年分の、、
過去の自分の歴史と、これから、長く続くであろうこの地球での、長い長い日々を思った。

私はかっての地球人としての生活や歴史を追っていくだろう。
時間はとりもどすことはできない。でも、たぶん場所はとりもどせる。
場所の記憶がある。
それは、地球人として私の子孫を訪れる旅になるはずだ。祖先として
子孫を、、
急に、私は、その時代、時代と愛していた女たち、子供たちを
思い起こしていた。その場所をたずねる、長い旅が、私を待っているだろう。

「リーラ」と、思わず叫んだ。
叫びとともに、私のほほを、生暖かいものが流れ、
それがなみだ石に染み込んでいった。

(完)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://syosetu.com/usernovelmanage/top/ncode/779592/






最終更新日  2017.04.04 23:36:59
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「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第4回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://syosetu.com/usernovelmanage/top/ncode/779592/

第4回

人々の悲しみの涙を集めた涙岩が、粉粉になる。
その涙岩のかけら、「なみだ石」が、緑色、瑠璃色の光を放ちながら、
漆黒の闇の中へ、消えていくはずなのだ。

今日がその日だ。

「君も芝居がうまいね、日待クン。いや本当の名前は何というのかな」
ふっと滝は鼻で笑いながらいう。

しみじみと、僕を馬鹿にしている。でも僕は理解できないでいる。
ゆっくりと、滝が口を開いた。
「それじゃな。日待クンという名のコードネームをもつ男よ。「なみだ石」のと
ころまで案内してもらおうか」
「わからないんのだ。覚えていないのだ」
僕はあわてて、ごまかそうとする。

「でまかせをいうな。さっき、村にたどりつく前に、この山腹の方で光がちらちらと見えていた。あのあたりが涙岩の位置じゃないのかな、なあ日待クンよ」

「おおっと。そうそう。忘れるところだったな。これが必要だろうな、これからはな」
 滝は短針銃ニードルガンをジャケットのポケットからと取り出し、それを僕に向けた。

短針銃ニードルガンは、超小型の針を限りなくばら撒く対人殺傷兵器だ。
が、僕はなぜ、それを知っているのか?自分の知識におののく。

「滝、よせ、あぷないじゃないか。短針銃を、、」
「おおつと。なぜ、危ないとわかる?短針銃とわかる?ふふん」
「僕は、、一体、誰だ、、、」
「もうよせ、日待クン,もう、すでにネタはあがっているぞ」

世の中がまるで180度回転したみたいだ。

僕はあきらめ、滝を後に、「涙岩」にむかい歩き始めた。

もちろん、滝は右手にその究極の殺人兵器、短針銃を構え、用心深くぴったりと
僕の背中に照準あわせているのだ。

涙岩へは小一時間ほどかかった。
悪路だった。
村人以外は、知らないよりな迷路のような道だ。

滝は先程、事故に出会ったばかりと思えないようなタフさでついてきた。
この頑丈さは。何者なのだ。
それと同じように、僕はいったい誰なのだ。何者なのだ。

「まて、日待クン」
滝は、道の徒切れていて、僕を止める。
山道がおわり丘が盛り上がり、そこからは草原の盆地になっていて、
そこに人の気配がした、
樹木のそばに隠れる。

涙岩のまわりには二百人ほどの人が集まっていた。
村人以外の人が、かなりいるようだ。
あきらかに、村の人口よりは多い。

気づかれないように、そっと草陰から眺める。

涙岩は緑色からルリ色へ、色々な透き通った色眼光を変え輝いていた。
 人々の顔がはっきり見え始めた時、滝がいった。

「ようし、日待クン、ここまでだ。いい眺めじゃないか」
 それから、僕達の出現に気づいていない人々に、隠れていた岡の上から姿を見せ見下ろし
大声で叫んだ。

「おい、君達、おれは「地球防衛機構」のものだ。代表者をだしたまえ」

 どこからともなく突然、爆音がきこえた。

夜空に「ガン=シップ」と呼ばれる攻撃用ヘリコプター
が5機、飛来してくる。

「我々には、君たちと話し合いをする用意がある。しかし我々に逆らえば、、」

「ガン=シップ」ヘリ1機から1本の空対地ミサイルが発射され、草原近くの森の木々が打ち倒された。

その人間のならから、一人の女が、前にでてきた。
何てことだ。
彼女だった。
第7回

「私が、代表者です。名前はリーラです」

 それから、ゆっくりと僕の存在をわかり、みつめ、悲しそうな顔をした。
「やっばり、来てしまったわね。ミユー。間違いだったわ、あなたに会ったのは。これで
最後だと思いあなたに会った。失敗だったわ。私は、あなたをつれていくことは、、やはり、できないのですも
の」

リーラ、そうだ。
彼女はリーラだった。
ミユー。それが私、日待明の本名?

僕の、、いや、私の頭の中で何かが爆発した。

私の記憶の総てが急激に、、甦ってきた。

リーラ、彼女は私の妻だった。
いや、今も私ミユーの妻だ。

 はるか昔、我々は、この地球に降り立った。

我々は目的遂行のため、この地球に一定期間、滞在することになっていた。

だが、第10次探険隊長の私ミユーは、ふとしたことで、この地球上で罪を犯してしまったのだ。

私達の星の法律及び裁判に依り、私はこの星への追放刑に処せられた。

第10次探険隊長の私ミユーは、この地球に,永遠に住まざるを得ないのだ
そして同時に、私の記憶は分解された。
偽りの記憶が埋め込まれたのだ。

 1年前に、「リーラ」に会い、別れの記念に「涙石」を与えられた。
その涙石が、ここで記憶をとりもどすきっかけとなった。

今の自分に戻った私の意識。

 滝が、リーラ達にむかい、何かを必死に訴えている。
が、私は、私自身の過去の記憶を、何とかたぐりよせる事に努力し、
上の空だった。

「私は地球防衛機構を代表して話している。君達は、なぜ地球人をつれさろうとするのだ。
すでに多くの地球人が、いままでに君達によってつれさられている」
滝という名の男の声が耳に入ってきている。

 リーラは、ゆっくりと微笑んで、余裕のある態度で返事をかえす。

「滝さん。いい。ですか」
リーラは、回りに不安げにたたづむ人々を両手でしましながら、諭すように言った。

「この人達は地球では住めない人達なの。善良すぎて。この汚れた梅球ではね」

「ふつ、善良すぎるだと?リーラ。ここは我々の星だ。そして彼らは我々人類の仲間なのだ」

「ねえ、滝さん、彼らがこの地球を去るかどうかは、自分達がきめる事よ」

 私の、今までの記憶、過去はすべて造られたものだった。
この村で生まれ、育ったということ。それもすぺて彼女らに、つまり仲間遠に作られた記憶だ。

 私達が、この星地球をはじめて見た時のことを私。ミューは思い出す。

地球は本当に美しかった。
そうなのだ。
夜空の中に浮ぶ「なみだ石」のようだった。

 あれから何年たってしまったろう。
今まで20才であると思っていた僕「日待明」は、地球の上で少
なくとも2000年暮らしていた私「ミュー」を発見する。

 裁判の決果、有罪と決めつけられた私は、何人分もの地球人の人生を一人で,歩んできたのだった。
仲間は私の体に特殊処置を施した。

私は私個有の記憶をなくし、地球人幾人分かの生と死を味わったのだ。
今の今まで、私自身を忘れさっていた。

 あの日記、このなみだ石のことを書いた父の日記は誰のものだろうか。

おそらく私はリーラがそう仕掛けたと思う。

副隊長であったリーラは、自分達、第10次探険隊が引きあげる時が近づいたことを知せるためにだ。この20才の僕「日待明」の人格、頭屋村の生まれであるという記憶が、最後に作られていたのもりーラのしわざだろう。

「地球追放刑」を受けた私を、彼女の旅立ちの時に、涙岩のところまで来させたかったのだろう。
たてまえとしては、来させてはいけないのだが、彼女の本音は、やはり、ここに、別れに来てほしかったに違いない。

 滝は、本当の名前は知らないが、まだ、必死でりーラ達と話をしていた。彼女達をとめようとしていた。

涙岩の上で、涙をながさざるをえないような心のやさしい人達、今の地球に住むには心やさしすぎる地球人達、そんな人達を、我々の星に連れてかえるのが私
達の使命だ。しかし、そんなことは、今の私には、かかわりあいがない。

 滝は、地球防衛組織の一員だ。そしてどういうきっかけかはしらないが、私が地球人ではないことを知り、「涙岩」の場所をつきとめるために、私について、この神立山に来たのだろう。

かわいそうな地球人たち、、、私は常に思う。

どうやら、滝は力にうたえるらしい。

近くの森の上を旋回していたヘリ5機が、急速に近づいてきた。草原と涙岩と人々の間に、ヘリからのサーチライトの光条が飛び交う。

 それまで輝いていた「涙岩」がもっと光を増しはじめた。
 一瞬、涙岩からの閃光が私の目を射た。
そして、大きな音が聞こえ、衝撃が襲う。

(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://syosetu.com/usernovelmanage/top/ncode/779592/






最終更新日  2017.04.04 23:35:36
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「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第2回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://syosetu.com/usernovelmanage/top/ncode/779592/

第2回
 僕は、いま 1975年ー昭和50年ーの思い出の中にいる。
 正直にいうと実は、「なみだ石」を一つ持っているのだ。

 東京へでてからの僕は人づきあいの悪い人間だった。
特異な風貌、まるで禁欲的な僧侶にみえた。
なみはずれた長身、それにどことなく体から発する毅然たる態度。

 こんな僕でも恋はする。

 その彼女、香月和子こうつきかずこに出会ったのは、去年1974年の十二月。仕事の関係で知り合った。
 彼女の眼をみた僕ははっととする。
同じ種類の入間だ。

 僕は彼女に必死で話しかけ、最後には彼女が同じ頭屋村の出だとわかった。幼ない頃、村を出た僕が知らないはずだった。
彼女と知り合い、それ以後私は彼女にひかれていた。
ずっと昔から彼女を愛しているように思えた。

それからの僕の行動は、あらゆることを投げすて、彼女に会うこと、
それがわびしかった生活をなぐさめる生きる力。

 けれども、彼女にはどこか近づきがたいところがあった。
外見は20才くらいにみえるのだが。
僕と話をすると、僕がたちうちできほいほどの知識をもっていた。
まるで何百年もいきているように感じられた。

「あなたと同じようが寂しい眼をしている人々、この世の中
そう地球といってもいいわ、でやさし過ぎて生きてはいけない人々
をさがし、そんな人達を幸福にみちびいてあげるのが私なの」

 ある時、彼女は私の眼をじっとのぞきこみながらいった。

「でも残念ながら、あなたは私達の仲間にはなれない」
「仲間だって」
「そう仲間よ。一緒に長い旅にてる仲間」

「旅?」
「私達、旅立つ日が近づいている」
 彼女はさびしそく言う。
「二度と、、、
「会えなくなる」
「そんな」

「悲しい?。そう、、これをあげる」
 彼女が僕にわたしてくれたのは、ちっぽけな石。
「これは何」

 僕は立ちあがった彼女を見上げながらたずねた。
「なみだ石」

 彼女は去っていった。
「なみだ石」 僕はつぶやく。

きらきら光るそのなみだ石をじっとながめる。
彼女のあとは追いかけなかった。
 なみだ石、

聞いたことがある。その時はっきり思いだせなかった。

そうだ、ときずいた僕はさっそく下宿にとんでかえる
。もう一度、なみだ岩伝説の事を読みかえす。

 そして、決心した。涙岩をみよう。
ふるさとへ帰ろう、、と。

そうそう,僕、日待明の道ずれについて話すのをわすれていた。
知り合いといっても最近知り合ったばかり。

彼。名前は滝光一郎という。いわゆるフリーターだと本人は言っている。
知り合いになった理由は、ほんの偶然で「なみだ石」をみせてしまったからなのだ。

滝はとてもおもしろい奴だったが、こと、なみだ石のことではしっこく聞き、とうとう一緒に「涙岩」を見るために、頭屋村までついてくることになった。


僕は滝を連れてきたくなかった。
他の地域の人間には見せたくないのだ。
が、滝は、不思議にあまりに執拗に食い下がった。
何があるのだ。
唯一の知り合いなので、無下にことわることができない。

「おい、日待よ、明よ。「カンタチ」駅、この駅じゃないのか」 
色んなことを考えているうちに、やっとお目当ての駅にたどりついた。

 駅の出札口で、駅員(といっても契約社員か)が、私達に話をしかけてきた。 
「あんたら、東京の方からきなすったかね」

「ええ、そうですけれど」
 僕が、答えた。

「いやな。感でいうたんだが、近頃、このーカ月の間に、このカンタチ駅で降りる人がたくさんふえてね。それであんたら神立山カンタチヤマの方へやっぱりいくかね」

「ええ、、、やっぱりの口ですな」
そらなという表情で
滝は答え、僕の顔を見てニヤリと笑った。

「へえ、仲間がいっぱいか。涙岩のことが知られているのか。雑誌でも紹介されたかな、さては」
 僕は、僕でやはり、こない方がよかったかなあ、それにこの滝も、、と後悔しはじめる。

「いや、そんなことはないはずだよ。涙岩が、どんな新聞、雑誌にも記事になたったことがない。滝、君の方がよくしってるだろう」

「そうだな。神立山の方で他に何か祭事があるのか。まあ、いいや。あ、どうやらあそこがパス停らしいぞ。レンターカーはない?なにのだな。人口がないから、、商売にならんから、、か」

 滝は、しゃべっている間、しきりにズボンの内ポケットの中に手をつっこんでいじりまわしている。

「滝、何を、そういらいらいじくりまわしている」
「いや何も」
 こんどは、ジャケットの内ポケットに手をつっこんでいる。
「日待よ。これは俺の個人的な性癖ってやつだ。あまりつっくっ子無と友達なくすぞ。って俺しかいないか友達は、なあ明クンよ」
探し物か?僕はいぶかしく思った。内をそわそわ。

つまりは、僕の存在より、カンタチヤマへの手がかりとして僕に近づいてきた。という疑念が僕におこる。


とはゆえ、バスは、十人ほどの近くの村人達をのせて走りだす。

 僕は彼女に頭屋村で会えそうな気がしてきた。

彼女に会いたい。
一目でいい。

あの人は頭屋材出身だといっていた。

駅員が神立山の方へ行く人がふえたと言っていた。ひよっと
してその中に彼女がはいっていないだろうか。

いや絶対に帰っているに違いないと僕は思った。

僕の、自分でいうのも何だが、このロマンスというか、純真さが後で大惨事を起こすとは。思っちゃいなかった。そして僕の人生も変えてしまうとは。

それは、この田舎バスから始まったのだ。

 バスは、そう考えにふけっている僕を乗せ、
神立山へむかって坂を下りたり峠を上たり、森林を抜け走る。
あちこちに点在した人家がたまにみえる。しかしめづかしく、でこぼこ道だ。
あまり乗りごこちはよくない。

「日待、何かへんな気分だな。僕の方をみているようだ」
と、滝は、僕、日待明ひまちあきらの名前を気安く呼ぶ。

「気にするなよ。僕らのかっこが目立つからだろう・・」

「しかしだな。テレピというものがあるだろう。こいつら、テレビで東京の人間を見たことがないか」
「滝、いいわすれていたけれど、神立山の方は日本でめずらしく電気がとおっていない。だからもちろん、
テレビもみずらい。新聞・郵便物は1週間にまとめてだ」
 「へえーー、まるで日本の秘境か、まだ日本にあったか、、だな」
 滝がしゃぺった。

 「あんたらも、神立山の方へいくだか」
後の座席から、急に声がしてびっくりした。後ろには、市外地の途中のバス停で降りたらしく、もう4人しかいない。
 滝がふりかえって答えた。「ええ、そうですけれど」
 僕も後を見る。後の方の座席に80才くらいの男の老人がちょこんと腰掛けて、僕たちの方をにらんでいる。
「僕は、頭屋村トウヤムラの出なんです。頭屋村へかえるんです」
 僕が答えた。
「へえ,、そうかいね。,頭屋村のもん近頃、ようバスにのっとるで。また危ない」
「また頭屋村で人がようけいてなくなるやろらだろう・・」
「あんた、そのこというたらいかんがね」
老人の隣にいる老婆が、きつい調子でたしなめた。
「そうやったな。あのこと、を、しゃべったら、それも他の村のものがいうたら、タタリがあるの
やなあ。クワバラ、タワバラやは」
「おじいさん、ひょっとしたら涙岩伝説のことと違う」
滝がしゃぺった。
老人達は、しわい顔をしてだまりこむ。パスの中は、異様なふんいきだった。

やがて、老婆が訟もいきったようすでいった。
「そっちのにいちゃは、頭屋村の人だけど、いま、あのことをいったにんちゃは。村の人と違う
ようだね。そのことは、口にせん方が身のためだ」
「これや、これ」
今度は、老人の方が老婆をたしなめた。いっているのが聞こえてくる。

「ちえっ、しったことかいな」 滝が後を見ずに悪態をつく。
 その老人達は、次のパス停で降りていった。残りの2人も山の中に点在するバス停で逃げるよう降りていった。
 奥深い山の中を走るパスの中には僕たち二人だけ。

 年の若いニキピづらの運転手が、バスを止め、座席から振り返り話しかけてきた。迷惑そうに、たづねる。
 「あんたら、キクけどさ。本当に頭屋村までいくの?」

(続く)作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
http://syosetu.com/usernovelmanage/top/ncode/779592/






最終更新日  2017.04.04 23:31:54
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「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第1回
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 僕達2人は、乗りごこちの悪いローカル線に乗っている。
列車は。僕の故郷に向かっていた。

故郷といってもあまり記憶はない。親戚もいない。
僕は都会の中で一人、孤独で何年も住んでいた。
あるきっかけで故郷へ帰ろうと思った。

 奈良県、和歌山県、三重県の3県の県境にあるふるさと。
ふるさとといっても本当に伺のとりえもない山間の小さな村だ。
それこそ、一日に三本あるかないかの鉄道、駅からパスに、パスの終点から山道、そま道を歩み、やっと、その土地、頭屋村とうやむらへたどりつくことができる。        
 帰ったところで、誰も僕を喜んでむかえてくれるわけではない。

 僕、日待明ひまちめいは頭屋封へ、何年もの町中の生活で得た悲しみ、体の中にたまりすぎた汚れを、洗いおとすために帰る。
苦しみは僕の体をむしばんでいるのだ。

なみだ岩に、行き着き、そこで涙を流すことで、僕は幸せになれるだろう。いや少なくとも、過去の傷を、いくぱくかいやすことができるだろう、と僕は考えていた。

僕の生まれた頭屋村は、「神立山」と呼ばれる深山の中にある。
奥深い、あまり人も、森林伐採でしか入れない「神立山」の森の中に「なみだ岩」と呼ばれる岩がある。

「なみだ岩」のまわりは、不思議と草が刈りとられたような芝の多い草原になっている。
その草原を深い森がかこんでいる。
「なみだ岩」はわかりにくい場所にあり、頭屋村出身でない者はたどりつくことができがタイ。
涙岩は高さおよそ15mくらい。頂上はとんがっていて、底に向かって広がっている。
土の中に岩の半分ほどが、うまっている感じだ。
全体は緑がかった乳白色で、表面は人が毎日みがいていると錯覚するほど光り輝いている。
遠くから見ると、涙のしずくが空からかちてきて、地球につきささったようなのだ。

、、、と詳しく知っているようだが、僕は父が亡くなったあと、すぐ頭屋村を出て、遠い親戚をたより、東京にでていった。
5才の頃の話だったから、なみだ岩についてくわしく覚えているわけではないのだ。

この「なみだ岩」にのぼり、その上で涙を流し、「なみだ岩」に、涙がしみこんでいくなら、その人は幸せになるという伝説がある。

この「なみだ岩」伝説を知ったのは、ふとしたきっかけだった。

親戚から東京に送られてき、父の形見を整理していた時、父の日記を見つける。
古ぼけたページを,めくっているうちに、こんな記述にであったのだ。

「涙岩は 何百年かに一度、必ず崩壊する。
そして、その跡には、指でつまめるほどの小さなかけらが残る。人はこれを原石
と呼ぶがたま、そのあとに残ることがある。

なみだ石のほとんどは夜空に舞いあがってい
く。そしてなみだ岩はきれいになくなっていて、あとには大き々穴があいている。まわりの草原も焼けただれている。

この話は、先祖代々に渡り、頭屋村に住んでいる者のみに語りつがれている。」
と、、、

 僕は子供の頃見たことのある「なみだ岩」を、もう一度、はっきりとこの眼にしたい。
涙を流したいと思う。あれほど美しい原岩がこわれぱ、どれほどの「なみだ石」ができるのだろう。涙岩の美しくくずれる瞬間、それをながめたい。

 さいわい、「なみだ岩」についてはあまり知られていない。
もし旅行維誌がとりあげれば、一たちまち大勢の人でうめられてしまうだろう。

 しかし、神立山は観光ルートからはなれた辺境で、訪れる人はほどんどない。
「なみだ岩」は、ごくわずかの人しか知られていない。

たとえ、「なみだ岩」のことを土地以外の人が知っでも、「なみだ岩」で悲しみ
をとりのぞいてもらい、本当に幸福になりたいと思う人にしか「なみだ岩」の場所を教えてはならないのだ。

僕の行動は、あらゆることを投げすて、その「涙岩」に行きつけたい。
と思った時から始まっていた。

(続く)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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最終更新日  2017.04.04 23:30:54
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2012.01.20
「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第8回
(飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」 

第8回ー最終回

私が目をあけると、ヘリはすべて夜空から消えていた。
残滓が飛び散っていた。
滝は、滝であった生物は、緑色の光を櫛びた物質に変化していた。

私は草原に腰をおろし、涙岩をながめていた。
手になみだ石をにぎりしめていた。

 リーラが私の側まで歩いてきた。

 しばらくだまって私をながめていた。

 「さっき、パスの転落の時助けてくれたのは君だね、リーラ」
 「そう私。あの滝という人に来てほしくなかったのでパスを落としたの。バスの運転手も地球防衛機構の一員だった」

 思わず、私たちはお互いを抱きあい、耳元で小さな声でささやいた。

「きようならミユー」
 そして、私は涙岩の方へかえっていくリーラに同じように小さい声でつぶやいた。
「さようなら、リーラ」

 さようならを言った時、リーラの目にも涙が浮んでいた。それは、私がいま手にしているなみだ石とよく似ていた。
 リーラは罪人の私に最後の別れの機会をあたえてくれたのだった。
もちろん規則違反だ。
私という罪人に、本当の記憶をとりもどすきっかけをあたえ、私達の星への帰還をみかくらせるのは。

 私は、彼女達の旅立ちを、最後まで見届けようと決心した。

 彼女達、それからこの穢れた地球から逃れる人間達は、涙岩のまわりに整列した。
涙岩がまた輝きを増し、緑の光が彼女達をとりかこむように、みえた。

 やがて彼女リーラ達の体は、涙岩が発する緑の光の中でだんだん小さくなっていき、しまい脚は見えなくなっていった。
 
光り輝く涙岩の表面に小さなひびがはいっていき、まもなく、ひびは、涙岩全体を覆った。
緑色の光はオレンジ色に代わり、涙岩の端から、はじかれるようにくづれていく。このかけらは緑色に戻る。細かいなみだ石の集団は、人々が圧縮され乗り込んだ宇宙船なのだが、しばらく空間にとどまっていた。
そして、突然に、夜空の中に、すいあげられるように上昇していく。

もう、地球防衛機構の防御手段では、手に終えない存在となった。

残った涙岩の部分は、崩れる速度がしだいに早くなり、最後には、爆発を起こしたように四方に飛び散り、最後には、涙石の集団の方へ、引きつかれていった。
別れの花火のようだった。

なみだ石の集りが、すべて、夜空に吸い込まれていくのを、私は最後までながめていた。
私の手の中には、リーラから渡された「なみだ石」が残っている。
思わず握り締める。リーラの体の温もりが思い出された。

この地球に、、一人、、取り残されたのだ。

癒される事のない寂しさ。

私ミユーは、なみだ石を握り締め、今までの2000年分の、、
過去の自分の歴史と、これから、長く続くであろうこの地球での、長い長い日々を思った。

私はかっての地球人としての生活や歴史を追っていくだろう。
時間はとりもどすことはできない。でも、たぶん場所はとりもどせる。
場所の記憶がある。
それは、地球人として私の子孫を訪れる旅になるはずだ。祖先として
子孫を、、
急に、私は、その時代、時代と愛していた女たち、子供たちを
思い起こしていた。その場所をたずねる、長い旅が、私を待っているだろう。

「リーラ」と、思わず叫んだ。
叫びとともに、私のほほを、生暖かいものが流れ、
それがなみだ石に染み込んでいった。

(完)20111210改定
1975年作品(C)飛鳥京香・山田企画事務所
山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」






最終更新日  2012.02.03 23:13:24
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2012.01.19
「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第7回
(飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
 

第7回

「私が、代表者です。名前はリーラです」

 それから、ゆっくりと僕の存在をわかり、みつめ、悲しそうな顔をした。
「やっばり、来てしまったわね。ミユー。間違いだったわ、あなたに会ったのは。これで
最後だと思いあなたに会った。失敗だったわ。私は、あなたをつれていくことは、、やはり、できないのですも
の」
 
リーラ、そうだ。
彼女はリーラだった。
ミユー。それが私、日待明の本名?

僕の、、いや、私の頭の中で何かが爆発した。

私の記憶の総てが急激に、、甦ってきた。

リーラ、彼女は私の妻だった。
いや、今も私ミユーの妻だ。

 はるか昔、我々は、この地球に降り立った。

我々は目的遂行のため、この地球に一定期間、滞在することになっていた。

だが、第10次探険隊長の私ミユーは、ふとしたことで、この地球上で罪を犯してしまったのだ。

私達の星の法律及び裁判に依り、私はこの星への追放刑に処せられた。

第10次探険隊長の私ミユーは、この地球に,永遠に住まざるを得ないのだ
そして同時に、私の記憶は分解された。
偽りの記憶が埋め込まれたのだ。

 1年前に、「リーラ」に会い、別れの記念に「涙石」を与えられた。
その涙石が、ここで記憶をとりもどすきっかけとなった。

今の自分に戻った私の意識。

 滝が、リーラ達にむかい、何かを必死に訴えている。
が、私は、私自身の過去の記憶を、何とかたぐりよせる事に努力し、
上の空だった。

「私は地球防衛機構を代表して話している。君達は、なぜ地球人をつれさろうとするのだ。
すでに多くの地球人が、いままでに君達によってつれさられている」
滝という名の男の声が耳に入ってきている。

 リーラは、ゆっくりと微笑んで、余裕のある態度で返事をかえす。

「滝さん。いい。ですか」
リーラは、回りに不安げにたたづむ人々を両手でしましながら、諭すように言った。

「この人達は地球では住めない人達なの。善良すぎて。この汚れた梅球ではね」

「ふつ、善良すぎるだと?リーラ。ここは我々の星だ。そして彼らは我々人類の仲間なのだ」

「ねえ、滝さん、彼らがこの地球を去るかどうかは、自分達がきめる事よ」

 私の、今までの記憶、過去はすべて造られたものだった。
この村で生まれ、育ったということ。それもすぺて彼女らに、つまり仲間遠に作られた記憶だ。

 私達が、この星地球をはじめて見た時のことを私。ミューは思い出す。

地球は本当に美しかった。
そうなのだ。
夜空の中に浮ぶ「なみだ石」のようだった。

 あれから何年たってしまったろう。
今まで20才であると思っていた僕「日待明」は、地球の上で少
なくとも2000年暮らしていた私「ミュー」を発見する。

 裁判の決果、有罪と決めつけられた私は、何人分もの地球人の人生を一人で,歩んできたのだった。
仲間は私の体に特殊処置を施した。

私は私個有の記憶をなくし、地球人幾人分かの生と死を味わったのだ。
今の今まで、私自身を忘れさっていた。

 あの日記、このなみだ石のことを書いた父の日記は誰のものだろうか。

おそらく私はリーラがそう仕掛けたと思う。

副隊長であったリーラは、自分達、第10次探険隊が引きあげる時が近づいたことを知せるためにだ。この20才の僕「日待明」の人格、頭屋村の生まれであるという記憶が、最後に作られていたのもりーラのしわざだろう。

「地球追放刑」を受けた私を、彼女の旅立ちの時に、涙岩のところまで来させたかったのだろう。
たてまえとしては、来させてはいけないのだが、彼女の本音は、やはり、ここに、別れに来てほしかったに違いない。

 滝は、本当の名前は知らないが、まだ、必死でりーラ達と話をしていた。彼女達をとめようとしていた。

涙岩の上で、涙をながさざるをえないような心のやさしい人達、今の地球に住むには心やさしすぎる地球人達、そんな人達を、我々の星に連れてかえるのが私
達の使命だ。しかし、そんなことは、今の私には、かかわりあいがない。

 滝は、地球防衛組織の一員だ。そしてどういうきっかけかはしらないが、私が地球人ではないことを知り、「涙岩」の場所をつきとめるために、私について、この神立山に来たのだろう。

かわいそうな地球人たち、、、私は常に思う。

どうやら、滝は力にうたえるらしい。

近くの森の上を旋回していたヘリ5機が、急速に近づいてきた。草原と涙岩と人々の間に、ヘリからのサーチライトの光条が飛び交う。

 それまで輝いていた「涙岩」がもっと光を増しはじめた。
 一瞬、涙岩からの閃光が私の目を射た。
そして、大きな音が聞こえ、衝撃が襲う。

(続く)●090921改訂●
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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最終更新日  2012.02.03 11:08:14
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2012.01.18
「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第6回
(飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
山田企画事務所 ナレッジサーブ「マンガ家になる塾」
 

第6回
 
人々の悲しみの涙を集めた涙岩が、粉粉になる。
その涙岩のかけら、「なみだ石」が、緑色、瑠璃色の光を放ちながら、
漆黒の闇の中へ、消えていくはずなのだ。

今日がその日だ。
       
「君も芝居がうまいね、日待クン。いや本当の名前は何というのかな」
ふっと滝は鼻で笑いながらいう。

しみじみと、僕を馬鹿にしている。でも僕は理解できないでいる。
ゆっくりと、滝が口を開いた。
「それじゃな。日待クンという名のコードネームをもつ男よ。「なみだ石」のと
ころまで案内してもらおうか」
「わからないんのだ。覚えていないのだ」
僕はあわてて、ごまかそうとする。

「でまかせをいうな。さっき、村にたどりつく前に、この山腹の方で光がちらちらと見えていた。あのあたりが涙岩の位置じゃないのかな、なあ日待クンよ」

「おおっと。そうそう。忘れるところだったな。これが必要だろうな、これからはな」
 滝は短針銃(ニードルガン)をジャケットのポケットからと取り出し、それを僕に向けた。

短針銃(ニードルガン)は、超小型の針を限りなくばら撒く対人殺傷兵器だ。
が、僕はなぜ、それを知っているのか?自分の知識におののく。

「滝、よせ、あぷないじゃないか。短針銃を、、」
「おおつと。なぜ、危ないとわかる?短針銃とわかる?ふふん」
「僕は、、一体、誰だ、、、」
「もうよせ、日待クン,もう、すでにネタはあがっているぞ」

世の中がまるで180度回転したみたいだ。

僕はあきらめ、滝を後に、「涙岩」にむかい歩き始めた。

もちろん、滝は右手にその究極の殺人兵器、短針銃を構え、用心深くぴったりと
僕の背中に照準あわせているのだ。

涙岩へは小一時間ほどかかった。
悪路だった。
村人以外は、知らないよりな迷路のような道だ。

滝は先程、事故に出会ったばかりと思えないようなタフさでついてきた。
この頑丈さは。何者なのだ。
それと同じように、僕はいったい誰なのだ。何者なのだ。

「まて、日待クン」
滝は、道の徒切れていて、僕を止める。
山道がおわり丘が盛り上がり、そこからは草原の盆地になっていて、
そこに人の気配がした、
樹木のそばに隠れる。

涙岩のまわりには二百人ほどの人が集まっていた。
村人以外の人が、かなりいるようだ。
あきらかに、村の人口よりは多い。

気づかれないように、そっと草陰から眺める。

涙岩は緑色からルリ色へ、色々な透き通った色眼光を変え輝いていた。
 人々の顔がはっきり見え始めた時、滝がいった。

「ようし、日待クン、ここまでだ。いい眺めじゃないか」
 それから、僕達の出現に気づいていない人々に、隠れていた岡の上から姿を見せ見下ろし
大声で叫んだ。

「おい、君達、おれは「地球防衛機構」のものだ。代表者をだしたまえ」

 どこからともなく突然、爆音がきこえた。

夜空に「ガン=シップ」と呼ばれる攻撃用ヘリコプター
が5機、飛来してくる。

「我々には、君たちと話し合いをする用意がある。しかし我々に逆らえば、、」
 
「ガン=シップ」ヘリ1機から1本の空対地ミサイルが発射され、草原近くの森の木々が打ち倒された。

その人間のならから、一人の女が、前にでてきた。
何てことだ。
彼女だった。

(続く)●090921改訂
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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最終更新日  2012.02.03 11:09:26
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2012.01.17
「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第5回
(飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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第5回 

バスのとびちった部品の影に、滝が倒れていた。
「滝,しっかりしろ」

 滝は目をあけた。
服がやぶれ、血がにじんでいた。すこし焼けこげてもいた。
一、二度、頭を振って、滝は上体をおこした。

不思議そうな顔をして、滝は僕をみつめていたが、ポケットに手をつっこんでから、ゆっくりといった。
「日待、君はケガをしなかったのか」

「ああ、そうさ、運転手は?」
あたりをしばらく見渡してみた。
「どうやら、ダメなようだな」
 ポツリといった。

 滝は、僕の目をじっとみつめ、口を開いた。
「日待、どうだ、ここらでもうはっきりさせないか」

その表情は、これまでの饒舌な滝のものではなかった。別人のようだった。
「何のことだ。何のことを言っているのだ」
僕は体をこわばらせる。

「日待、いや、君の本当の名前まではわからないが、、
まだ、しらばくれる気なのか。君と君の仲間のことさ」

「僕の仲間?」
滝は立ちあがり、少しよろけたが、僕の肩に手をかけた。
「はっきりいえよ、日待。それとも」
「まってくれ、滝、一体お前、どうしたんだ」

そ時だ。隣にあるバスの残骸が爆発した。
おもわず僕達は体をふせた。
「そうだ。滝、はやく頭屋村へいこう。むこうで、君のケガをみてもらおう」
「ふっつ、どうやら、頭屋村までは、君が、案内してくれるつもりらしいな」
と皮肉っぽく言う。

 いったい、この滝の変心は、なんだ。

僕は
バスの転落、
体を包み込んだ緑色の光、
滝の豹変、

わずかの間に起こった事で混乱している。

それにしても、あの緑色の光は、涙岩の色に似ている。と僕は思った。

頭屋村までは、まだかなりの距離があった。

僕は、滝、彼も、いや彼こそ本当の名前は何だ、、もう話をする気がしなかった。
冷たい沈黙が、僕達の間にあった。
が、二人は村へ向って歩きだす。
滝に肩をかしていた。
バスの通り道へあがり、夕ぐれの中を歩きだした。


村までの風景は、僕が出かける前と、少しも変わっていなかった。
おぼろげな記憶だった
けれども、はっきりと一致していた。

ようやく村へたどりついた時、
来てはいけないところへ来た、そんな気がした。
僕をよよつけない何物かがあった。
体がぞくっとした。

 最初に滝の傷をみてもらもらおうと思った。

しかし急に「彼女」のことも思いだし、どうしても会いたいと思った。
彼女の姿を浮べ、不安を振り払おうとした。

 手近かの家からは光がもれている。
「ごめんください。」
 答えはない。
「誰もいないんですか」

無断で家にはいっていく。人の気配がない。
隣の家家にも、同じように走っていって声をかける。

やはり誰もいない。
そして、
不思議だが、村じゅう、物音一つしない。
誰もいないのか?

滝は、ポケットからタバコ箱くらいの小さな機械をとりだし操作していた。
さっきから滝が触っていたのは、これだったのか。

「滝、村には一人もいない。おかしい」
「やっぱりな、思った通りだな」

 滝は、傷のせいか、疲れた顔をしていたが、不思議に目眼だけは、
力があった。
獲物を前にしたハンターの眼だ。

「いいか、もう、はっきりしたらどうなんだ、日待よ」
「何のことをいっていろんだ。滝、君はバスが転落した時から、何をいいたいんだ。人が変ったみたいだよ」
「ふう、簡単な話じゃないか。日待、最近、この田舎の、頭屋村へ来る人々が増えていたこと。
パスの中で老人が言ったこと。そして、今現在、この頭屋村にはな、人っ子一人いないこと。すなわち、今日が。涙岩のくずれる日だ。今日は涙岩伝説の日だ」

 僕はその意味するところに、打ちのめされる。

そうか。今日が、涙岩がこわれる日に違いない。
すなわち、数百年に一度の日なのだ。

(続く)●090901改訂
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最終更新日  2012.02.03 11:02:33
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2012.01.16
「染み入れ、我が涙、巌にーなみだ石の伝説」第4回
(飛鳥京香・山田企画事務所・1975年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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第4回


 「ええ」僕は答える。

 「そうですか.僕、この路線走るのは始めてですねん。ふだんでも,このバスは,ほとんど頭屋村までいかんのですわ。
最近は、客が、よういってるようだけど。本当は、これより先はいかんのなあ。いやだなあ」
「バス停には、頭屋村まで通じてますの地図と張り紙がったぜ」
 滝がいいかえす。
 「ここからは道が、えろう悪くなるし、つづらおりの坂ばかりですわ。あまり行き
たくないんですわ。頭屋村まで、まだ40分ほどかかるという話だし、途中には全然停まるとこないんで
すわ。」
「バスで40分もかかるところ、歩いてはいけないよ」
 滝がいう。
「わかりました。では、こうしましょう。このバス停から先は特別料金をいただきますよ」
「ボリョルナ。タタシーみたいだな」
「残念ながら、ここにはタクシーはないんです。1000円余分にいりますけれど、このパスしか
ないんです」運転手は言い返す。
「そんなこと、一言もバス停の掲示板には、書いてなかったけれどな。まあいいわ、いってよ」
「すごいところだな。日待。1000円分の風景を楽しむとするか」

が、僕は滝の言葉に注意を払わず、僕は彼女のことを考え始めていた。

もうすぐ、あえるかもしれない。
心臓がなみうち始める。汗がでる、待てよ。記憶が、、そうだ。
彼女を。、、かなり昔から
ずっーとずっと前のことだ。僕が子供だった時よりも?、、、昔からだ?

変だ。僕が子供だったことより前。。、彼女を知っていた?。
どういうことだ。 僕が彼女を思うあまりに、そんな気がしたのだろうか。
 いや、まちがいない。僕は彼女を大昔から知っている。

 移り変わる新緑の山々、その外の景色に気をとられていた滝が、僕の思いつめた青い顔に気がつく。
「どうしたんだい、日待(ひまち)、まっさおだぜ、お前の顔」

 突然、バスが横に激しくゆれた。
窓の景色がひと回りした。
体が車体に勢いよく打ちつけられ、失神しそうになる。


 突熱、僕の体を、緑色の光が包み込む。光は神立山の神腹からきていた。体の重さがなくな
り、空間に浮いている。すべてのしがらみから解きはなされ、ほんとうに自由にたったような気がした。’


 僕は、緑の光につつまれ、バスが大きく回転しながら、谷間へかちていくのを、他人事のようにぼんやりとなが
めている。
 僕の名前が呼ばれたような気がした。それも遠くの方から。
 いつのまにか僕の体は、道路そば側の草の上でよこたわっている。

滝のことを気づかい、起きあがり、谷の方をのぞいてみた。
パスは車体がグシャとなり、崖下20mくらいで火に包まれていた。

 ころばないように気をつけながら、まったく無傷の僕は、バスまで降りていった。
 燃えあがるバスの残骸までたどりつき、しばらくの間呆然とながめていた。

(続く)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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最終更新日  2012.02.03 11:00:22
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