2005/11/13(日)13:19
日本酒の仕込み~東の麓にて~
山形では11月にはいって続々と日本酒の仕込みをする蔵が数多く
でてきました。
この時期に日本酒の仕込みを開始する理由は2つ。
・新米の精米ができあがる時期
・外気温が下がり、低温発酵が出来るようになることと、 開放タンク
で行われる仕込みの酒のもと(もろみ)に雑菌が繁殖しにくくなる。
今日は山形県南陽市の東の麓さんにおうかがいし、仕込みを実際におこなってきました。
朝9時頃到着し、蔵の中はちょうど蒸米ができあがっているところ
でした。
今日の作業は以下のとおり。
・蒸米の放冷→添仕込・仲仕込・留仕込
・麹の手入れ(2日目)
・出品酒準備
・成分チェック
仕込みは聞いたことがあるかもしれませんが、3回に分けて行う
いわゆる3段仕込を行います。
1日目 添仕込
蒸米、水、麹、酵母を投入
~2日目 踊り(1日休んで酵母の増殖をはかる)
3日目 仲仕込
蒸米、水、麹を投入
4日目 留仕込
蒸米、水、麹を投入
これで仕込みが完了します。これで1ヶ月後の搾りまでに、成分変化
を確認しながら温度を調節していくのです。
3本のお酒の仕込みが本日あることで、添、仲、留の仕込みが体験
できました。
先ほど出来てきた蒸米を大きな釜から滑り台のようなものでおろし、
放冷機と人手によってばらします。
まだまだ冬になっていないので、外気温も10℃前後。
布の上に蒸米をのせ、広げて冷やす。
もろみの温度が少し高いので、できるだけ蒸米の温度を下げます。
蒸米はこんな感じ。
粒が小さいのは、米をすでに50%精米しているから。
ぷっくりとしたゴムのようで、手で丸めて食べてみると、
弾力があります。味は食米と違いあまりありませんが、
蒸したてはおいしいです。
冷やした蒸米はタンクへ投入。投入した蒸米はまだ固まって
いるので、タンクの中でバラけるように櫂(かい)という棒を
いれかきまぜます。
蔵人たちの掛け声のもと櫂を入れる作業はとてもつかれました。
そうこうしている間にも、麹の手入れ作業があります。
昨日麹室の床というところで盛られていた麹は、今日は囲いの中に
平にしきつけられていました。
天幕式という方法で麹に布をかけ風を入れて温度管理をする方法です。
竹の露さんで教えていただいた蓋麹とは異なりますが、東の麓さんでもお酒のスペックによって麹のつくり方をかえているということ。
こうやって手を加えることで、温度、湿度ムラがなくなり優良の麹を作る
ことができます。
本日日中だけで2時間おきに手入れをおこないました。
恐るべし麹。手間がかかります。
でも酒造りでもっとも大事なのは麹といわれていますから、手間をかけた分だけお酒に跳ね返ってくるのだとおもいます。
出来上がりはこんな感じです。白くなっているのが麹菌が繁殖しているところではぜこみと呼ばれています。
食べてみるとあま~い。米のたんぱく質を麹菌がアミラーゼという酵素
で分解し、ブドウ糖ができていますから甘いのですね。
麹菌はこれ以外にも重要な酵素をたくさん持つことになります。
一方では、明日仕込みをするための米の給水を行っていました。
限定給水という方法で、ざるに精米した米をとり水につけてストップウォッチで計り水からあげる方法です。
ひとつひとつの作業が手間がかかっています。
水を吸ったお米は周りが白くなり、真ん中に少しだけ米の色が残る
状態になります。もちろん仕込用の米と麹用の米では、給水時間は
異なりますし、年度や米の種類によっても微妙に異なります。
給水後の米はこんな感じ。
白くなっているのがわかりますか?
様々な作業があり、あっという間に午前中が終わりました。
午後の部は、出品酒の準備です。
今年の冬に搾ったお酒の原酒をろ過し、水で割ってアルコール度数を
調整し、出品酒とするのです。
ここではかなり手のかかる作業を一つ一つ丁寧に行っていました。
ろ過機とろ紙を洗浄するために
水で洗浄→醸造アルコールで洗浄→出品酒と同じお酒で洗浄
→出品酒をろ過
とここまで徹底してます。
もちろん使用する瓶も全て出品酒で洗浄します。
ろ過された原酒は、ろ過された水とあわさって初めて出品酒となり
ました。
一つ驚いたことがありました。
お酒に炭をいれることで雑味や必要のない香りをとっていること。
お酒が黒くなりますが、ろ過機を通すことで透明な原酒として
出てきたことです。
もちろん割り水も炭をいれ同じようにろ過をした水でした。
私もきき酒させてもらいましたが、飲み口がさらっとしていて香りがよく必ず合格すると信じています。
最後の作業は、成分分析です。
昨日添仕込をしたお酒の日本酒度と酸度を計測します。
まるで理科の実験ですね。
こういったデータを毎日とることで、どういった対策をとらなければ
ならないか?それが見えてくるのです。
今日は1日仕事でしたが、とても有意義だったと思います。
今まで聞いていたことでわかならかったことが実際に体験することで、
理解できたことが数多くあります。
最も大事だと聞いていた温度管理。それは仕込みをする場合でも、麹をつくる場合でも、発酵させる場合でも全てにおいて微妙な調整をしてやらなければならないことがはっきりわかりました。
また、大事だと思ったことは3点。
人手がかかること。
道具の掃除が大切だということ。
何をするにも2人ペアがほとんどでやらなければならないことが多く、
かなりの手入れが必要です。それに使う道具が多岐にわたり
道具を丁寧に清潔に使い、また洗う。そして繰り返し使うこと。蔵自体
はどこもふるいですが、全てとてもキレイなのはなによりも良い酒を
造るための条件だと思います。
そしてなにより大事だと思ったことは、蔵人たちの想いです。
一つ一つの作業を丁寧に行うことが全て酒質につながること、それが
わかっているから皆様真剣に作業をされているということ。
本日お世話になりました山田杜氏さんはじめ新藤部長さん蔵人の皆様本当にありがとうございました。
お土産に今日使った前掛けをいただきとてもうれしいです♪
12月の新酒搾りはとても楽しみですね。
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