25.卒業研究二十五、卒業研究はモーターボート明石高専の片岡教授に大変お世話になった。教授は流体力学の権威だったなあ。ワシは流体力学を利用し双胴船を建造した。まず設計図を描いた。長さ約五メートル。幅約二メートル。高さ約一メートル。次に、双胴船だから竜骨の細工が難しかった、ベニヤで造船した、その時船首のカーブしたところに平板を貼るのがむずかしかった。カーブした部分には薄い板を使用した。さて仕上げはガラスクロスと接着剤で行った。同級の熊谷が手伝ってくれた。熊谷は今は東芝本社(清水建設と同じ浜松町じゃよ)で働いている。ガラスクロスは強度を維持しまた防水効果にもなったのだ。船舶エンジンはカワサキの125CC空冷1気筒を使用し、スプロケットでチェーン駆動となるように設計したよ。完成し浸水式を行った。高専のプールでまずまず走ったが、エンジンがすぐ焼け付き、水で冷やしながら、走ったもんじゃ。片岡教授は及第点をくれたわい。なかなか話せる教授じゃった。彼が質問した『君らエレキバンドをやっとるが、いったい何がおもしろいんかい?』ワシゃ答えた『エレキを弾くとスカッとします。意外と簡単で、四人の息が合った時は最高です。やはり音楽の言葉のとおり音を楽しむちゅうことですかいねえ。』ワシなんか二十にもならないのにウィスキーのみながら話したような気がするなあ。サントリーレッドだったなあ。それからワシゃたばこを十五歳で始めて三十歳過ぎにはもう卒業したよなあ。たしか。 明石高専の卒業旅行は東京方面だった。鶴見ポンプ工場見学。東洋バルブ工場見学。岡谷シチズン工場。その旅行中ワシャ友達と二人、東京新宿に遊びに行った。歌舞伎町コマ劇場あたりで『和田あき子』が子分をつれて歩いていたのだ。なかなかでかいこわい女だったなあ。思い出はそれだけだわい。しかし、後日歌舞伎町でとんでもない事件にまきこまれることになるとは、たれも予測しなかった。 ジャンル別一覧
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