30.東京麻布31.三十、東京麻布の人生の夢入社当日の入社式終了後、父はワシを伴って、東京の港区麻布十番に行った。SHIMZ宝町本社からはまあ近い距離だのう。麻布十番の『つるや』だった。父が昔お世話になった店らしかった。店主は矢本博一といった。関東氷上郷友会の名簿によると『柏原町出身、郵便番号106―0045港区麻布十番 』となっているなあ。ちなみに柏原高校の卒業生では無いなあ。そこでどのような話があったか、ワシゃ全く覚えとらん。しかしこの時の父山口完二の『心情』は次の詩に現されとる。 偶感 人生六十年如夢過 大戦蒙召発歓呼駅 三十年再訪復興都 恩知人滅去孤影寂 対訳(山口和久による) 偶感(思う事) 人生六十年は夢の如く過ぎてしまった 昭和の大戦に招集されて歓呼の駅を出発した 三十年後に復興された東京を再訪したが 恩知の人はすべて亡くなり、 我一人残ったその影が寂しい限りである。 というのだ。が諸君にはわかるかい?ここで初めて父は大東亜戦争の事を言っておる。今のワシにはなぜか父の気持ちがよく分かるのだ。それから長男泰俊とワシ次男和久に大きな期待をかけとる事が伺い知れるのだが。 三十一、新宿刑事事件 昭和四十六年九月二十七日新宿歌舞伎町『勇駒』にて転属者追い出しコンパが開催された。しかし、その夜から数日間ワシの姿はSHIMZの皆の視界から消えた。ワシは酒の飲み過ぎで記憶が無かったのじゃ。記憶は新宿警察署から始まる。そして、新宿留置場、そして丸の内東京地方検察庁と…思い出したくないがやはり記録にとどめておく事件であろうのう。過ぎた飲酒の結果の『暴行事件』であった。ワシゃ刑事事件の犯人となっておったのじゃよ。ワシは検察官に調書をとられ黒のスタンプで指紋をとられてしもうた。刑事犯人の指紋はほぼ永久に検察庁に残るのじゃよ。この部分の詳細はワシから妻にあてた手紙に詳しいぞ。興味あれば一読の事。しかしやな、それからの、ワシの『改心』の結果はすごいものがあるのじゃよ。それは今のワシだけを知っとる者は昔の事を知らぬから、なにも『改心』だとは思わないがのう…・・ |