ポンコツ山のタヌキの便り

2007/09/02(日)17:36

『楽園』の等少年の超能力について その3

宮部みゆき作品(135)

 等少年が描いた三角屋根の絵を見た前畑滋子は、等少年には本当に超能者ではないかとの思いを強くし、そのことを確かめるために北千住の殺人事件の調査に力を入れるようになります。前畑滋子はその調査において、等少年がサイコメトラーの持ち主の可能性について検討しています。  なお、私には「サイコメトラー」という単語は聞きなれない言葉なのですが、前畑滋子はこの言葉をつぎのように理解しています。「サイコメトラーとはあくまでも、物に"残っている"記憶を読み取ったり、人の心――これが記憶なのか意識なのか難しいところですが――を読んだりする能力を示すようです。透視、もしくは遠隔感知とでもいいますか、失踪者の居所を言い当てたり、殺人事件の犯人や未発見の被害者の遺体を捜し出したりするというのは、最近流行ってるようですけどもね、その能力の実践的応用でしょう」。  前畑滋子は、等少年がそのようなサイコメトラーだと仮定すれば、彼は北千住の殺人事件の関係者の心の中を読んで蝙蝠の風見鶏のある家を描いた可能性があるのではないかと考え、丹念に調査を続けていき、その結果、北千住の殺人事件の裏に隠された真実を知ることになります。  ところで、等少年の超能力を前畑滋子はサイコメトラーと仮定して調査をしているのですが、では前畑滋子が萩谷敏子から最初に見せられた等少年のトラックの絵も彼のサイコメトラーの能力を示すものなのでしょうか。自らのトラックによる事故死を予知する能力もサイコメトラーという概念で説明できるのか、私はこの言葉の意味を詳しく知らないのでなんとも言えないのですが、作者の宮部みゆきは小説中に別の便利な言葉を使っています。いささか古めかしい言葉ですが「千里眼」です。  等少年の曾祖母がその千里眼の能力を発揮して「拝み屋さん」をしており、依頼者の失せ物捜しや縁談、商売等の相談に乗っていたというのです。「千里眼」とは、本来は遠距離にあるものを見通すことの出来る力のことなのでしょうが、普通の人では見ることの出来ない人の心の中や遠く離れた土地の出来事、そして未来のことを予知する不思議な能力などをいまでは指しているようです。作者の宮部みゆきは、曾祖母の千里眼が曾孫の等少年にも受け継がれたという設定で『楽園』という物語を書いたのに違いありませんね。 宮部みゆきの『楽園』について3回に渡って書いてきました拙文を私のホームページに新たに「『楽園』に見る等少年の超能力」と題してアップしましたので、読んでいだけたら有難いと思います。

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