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最近の連載で、3回ほど、今年の商業登記法の問題の解説をしました。
なかなか、手の込んだ問題で、その全貌が、受験生にわかりにくかったことは否定できません。 このため、受験生には混乱が生じ、とくに、監査役を取締役に選任した部分では、この論点を正確に判断した受験生はまれであり、結局、「気合」で解答することになった人が多かったでしょう。 しかし、むつかしかったのは、「役員変更だけ」です。 というか、むつかしいかどうかは別として、「点をとりにくい」のは、「役員変更だけ」です。 役員変更以外でも、1つの議事録を6月1日の申請でも、7月2日の申請でも使うので少々ややこしいのですが、でも点をとりにくい問題ではありません。 受験生のみなさんは、商業登記法で苦労した人が多いようですが、私の目からみると、今年の問題は「得点源の宝庫」であって簡単に合格点がとれる問題です。 このあたり、今年の結果をみていると、「受験生は、何のための試験か、その意味がわかっているのか」と私は不思議に思ってしまいます。 たしかに、今年の問題は、全貌の解明は「むつかしい」です。 試験委員が、そうとうに精緻な問題を作ったので、その意図を限られた時間で解明することはむつかしいです。 しかし、「点を取る」のはカンタンです。 そして、試験は何のためにあるのですか。 受験生にとって、試験は、合格するためであり、そのために「点をとるため」にあるじゃないですか。 だから、今年の問題のように「点を取る」のがカンタンな問題を、むつかしいと錯覚しているようでは、何年かかって合格できるのか訳がわかりません。 そのあたりの「戦略性のなさ」が、嘆かわしいとしかいいようがありません。 では、いかに、今年の問題が「点をとる」のがカンタンか、以下に記載しましょう。 第1欄 商号変更による株式会社への移行の登記 これは、形式上、ただの「設立登記」です。 「登記の事由」と「登録免許税」は、間違えようがありません。ここで「点が入り」ます。 あとは、基本的に、定款をみて「登記事項」を探し出し、それを、解答欄に「書き移せばいい」だけです。これも「点が入り」ます。 この作業は、あまりにカンタンなので、試験委員は、「商号」「本店」「公告をする方法」「目的」については答えてくれるなとまで言っています。 それは、こんなカンタンな作業で受験生に得点された日には、採点のための持ち点(記述式合計70点)がもったいないから、答えてくれるなと言っているのです。 それはど、カンタンな作業です。 登記事項を「書き写す」だけですから。 このほか、「会社成立の年月日」と「登記記録に関する事項」も書く必要がありますが、こんな定型的な書式、間違えるほうがどうかしています(こんなもの間違えたら、単なる「基礎力」の不足です)。 で、添付書類も、「定款」「株主総会議事録」「委任状」は、商号変更による移行の登記では「ゼッタイ」必要ですからそれを書けば、「点が入り」ます。 本問では、第1欄の商号変更による設立登記ができることについては、試験委員の自白が成立しているのですから、遠慮なく、じゃんじゃん書けばよろしい。 モグラ叩きのモグラよろしく、書けば書くほど「点が入り」ます。 そして、役員変更。 これについては、試験委員が手の込んだ仕組みをつくったので、「問題がカンタン」とはいいません。 しかし、「点を取る」のはカンタンです。 だって、第1欄の商号変更による設立登記ができることについては、試験委員の自白が成立しているのです。そして、設立会社は、取締役会と監査役を設置する株式会社ですから、取締役3人と監査役1人を書かなきゃ、そもそも、登記申請は却下だから、却下されないように、登記すべき事項には「取締役3人と監査役1人」を書きます。 その候補は、ABCDしかいませんから、それを書けばいいだけです。 それで、「点が入り」ます。 しかも、受験生にとって幸いなことに、商号変更による設立登記では、役員の就任年月日を申請書の登記事項に書く必要がありません。 だから、役員変更の出題内容が、理解できていてもいなくても、ただ取締役ABC代表取締役A監査役Dと書けばいいだけのハナシです。 もともと、商号変更による設立の登記では、任期が満了して権利義務承継する役員も、任期中の役員も、商号変更のときに就任する役員も、全部、登記すべき事項に書くのだから、この「取締役ABC代表取締役A監査役D」の部分は、書くにきまっているのだから悩む必要なんてありません。 以上、みたように、第1欄は「得点の宝庫」であり、たとえ、アタマが「役員変更で大混乱していても、そのアタマを「点を取る」ためのアタマに切り替えておけば、第1欄は少なくとも85パーセントくらいは点がとれます(間違えるとすれば、添付書類の役員変更がらみの部分だけ)。 第2欄 合併と役員変更 私の目からは、第2欄もおなじようなものです。 今年のような「単純な合併」は「得点の宝庫」です。 受験生のみなさんも、試験委員の「ステルス論点」には気がついていないのですから、簡易・略式組織再編でもなく、種類株式の問題もない今年の合併は「ただ合併を書けばいい」だけの問題です。 この点、登記事項のうち、発行済株式の総数だけは、端数切捨ての論点がありましたが、その他は、何の変哲もない合併です。 「登記の事由」で得点、「登記事項」で得点、「登録免許税」で得点、そして、極め付きが「添付書類」です。 私なら、本問の場合、合併できると判断した瞬間に「添付書類」を書いちゃいます。 なぜって、合併の添付書類は「数が多い」じゃないですか。 書けば書くほど点が入ります。 モグラ叩きですから「得点の宝庫」です。 しかも、本問は、「ステルス論点」に気づかない限り、「何の変哲もない」合併ですから、受験勉強のときにならった「合併の添付書類」をアタマから順に「書けばいいだけ」です。 なんて、カンタンな作業なんでしょう。 そして、第2欄の登記は、合併と役員変更ですから、たとえ、役員変更の部分が0点でも、合併の数多い「添付書類」を書いておけば、まあ、50パーセントはとれるでしょう。 そうすると、第3欄は、司法書士の聴取記録(平成24年6月1日)の1に、「第4号議案の直前に株主B及びCが退席し」という、不自然で、わざとらしい表現を見れば、発行可能株式総数の変更ができないことは、すぐにわかりますから、第3欄は終了です。 以上、第1欄85パーセント、第2欄50パーセント、第3欄100パーセントで、総得点の70パーセント越えは確実な情勢で「はい、合格」です。 そのうえで、アタマが大混乱であったかもしれない役員変更については、そのとき、自分が「これだ」と決めたことを書けば「はずれてモトモト、あたりゃ、もうけもの」です。 もう、他の部分で、合格点は突破だから、こんなものは「ばくち」でかまいません。 「ばくち」があたれば、総得点の80パーセント、90パーセントです。 ことわっておきますが、「ばくち」といっても丁半の「ばくち」を全部はずすのは、けっこうむつかしいですから、80パーセント、90パーセントの可能性は大きいのですよ(私の受験時代のようなもの。→本ブログ6月25日の記事参照)。 さて、以上の仕組みは試験の前からわかっていたことで、私は、試験は「点をとるゲーム」とみています。 これが、試験に対するリアリティであり、戦略性です。 受験というのは、要領なんです。 みんな、アタマがよくなきゃ受かんないと誤解しているんだね。 ほんとは、要領が、一番大事です。 1、問題文をよく読む 2、問われたことに答える 3、そして、点になることから書いていく これは、全部、要領です。 そこで、このことを、今の機会に、ほんとうに悟ってもらえるよう、もういちど、今年の試験の直前(6月24日、25日)に書いた「もうすぐ本試験VER4、5」に書いたことを引用します。 6月24日の記事(抜粋) 試験で点をとるには、リアリティと戦略性が大事なのです。 この、記述式で「知らないこと」が出題されるという可能性は、みなさんの、1週間後の7月1日に普通に起こってもおかしくない事態、というか、多分、起こってしまう事態ですから、ここは、真剣に考えて見ましょう。 (一部省略) ということは、その「知らないこと」は、合否を決定づける要素ではありません。まず、これが、決定的に大事なこの場合の「心得」です。 私は、最初が自分の受験で、翌年からは、受験指導で、受験生の経験談を聞いて、もう13回も本試験の問題をわが事としてみていますが、この間、普通の受験生にとって「知らないこと」ができなかっただけで不合格となったという事案はひとつもありません。 「知らないこと」ができなかっただけであれば、相撲でいえば、立会いでちょっと押し込まれたかなという程度で、勝負は、まだまだその先なのです。 力のある受験生が、それだけで負けることはありません。 しかし、私が、受験後の体験談を聞かせてもらって、「あっ、これはかわいそうなことになったかもしれない」と思うのは、次のコトバを聞いた時です。 「知らないことに動揺して(または、時間を使いすぎて)、いつもなら簡単に解答できる部分で大きなミスをしました。」 こうなると、ほとんどの場合「不合格」です。 だから、試験というのは、プラス思考が大事であって、「知っていることから確実に解答用紙を埋める」という心得が大事です。 「知らないことに動揺」というのは、たいていの場合、「失点をおそれる」受験生なのです。 でも、ホントは、記述式試験なんて、6割取れなくても基準点突破が当たり前で、年によっては、4割とれなくても合格ということまでありますから、「知っていることから」確実に解答用紙を埋めればよいわけです。 こういうところ、日本人は、もともと農耕民族なのだから、「種を植えて、肥料をやって」という感じで、着実に前進して、「知らないこと」は、どっちみちできなくてもともとなのだから、それなりの解答を書いて、少しでも点が入ればもうけものと、これでよいわけです。 さて、このあたりまで考えていくと、「試験会場で、受験生がすべき作業は何か?」という本質的な部分にハナシをすすめることが必要となります。 この点を悟ると、受験会場でのさまざまな迷いがスパッと消えるので、よく考えてみましょう。 本稿の続きは、もし、時間があれば明日に、いそがしければ、あさって以降に書くことにします。 6月25日の記事(抜粋) さて、いままで述べたことから、昨日から話していることの結論は明解になったはずです。 前提 「本試験では、必ず、知らないことが出題される」 命題 「記述試験で、知らないことが出題されたときにどうするか」 解答 「まず、知っていることから答える」 このように対処すれば、まず、第一に、「知らないことに動揺して、普段ならできる問題を間違える」という最悪の事態は、確実に避けることができます。 次いで、受験時代の私のように、「知っている」ことから「知らないことの結論」を推理して正解に至る道が開ける可能性も大きく膨らみます。 さて、以上で、6月の「もうすぐ本試験」の記事のご紹介をおわります。 まず、今年、失敗したひとは、試験における戦略性ちゃんと身につけるようにしましょう。 そして、もう一点、問題があります。 どうも、みんなのハナシをきいていると、受験生の多くは、私が昔から、記述式試験のために「やったらいいよ」と勧めている「ある方法」をやっていないのではないかという気がするのです。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2012.07.12 22:07:40
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