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昨日の続きです。
商業登記規則の本人確認の方法に2つあります。 A証明(高度証明) 就任承諾書の印鑑についての証明書を添付させる方法。 →就任承諾の意思の確認(61ⅣⅤ)や議事録等の真正の担保(61Ⅵ)が主目的だが、その前提として実在証明を行う。 →印鑑の一致のみで実在証明ができる。同姓同名の2人が同一の実印を用いることはないからである。印鑑証明書は原本に限る。証明力が強い。 B証明(一般証明) 就任承諾書の住所氏名と同一の記載のある証明書を添付させる方法。 →虚無人名義の登記の防止を目的とする。 →住所の一致を要する、同姓同名の2人が別の住所を有することがあるためである。住民票の写し、運転免許証、印鑑証明書などのコピーでも足りる。A証明に比較して証明力が弱い。 以上を前提に、今日は、甲説(住所不要)について述べます。 規則61Ⅳ~Ⅵの印鑑証明書を添付すれば、就任承諾書に住所の記載を要しないという立場です。 この考え方は、立法の当初は当たり前のことと思われた立場ですから、その論理はカンタン明瞭です。 まず、問題の規則61Ⅶを要約して記載します。 「取締役等の就任承諾書に記載した住所氏名と同一の住所氏名の記載ある本人確認証明書を添付しなければならない。ただし、規則Ⅳ~Ⅵの規定により印鑑証明書を添付した場合は、この限りではない。」 さて、甲説(住所不要)は、ただし書きで本文の全部を否定します。 ですから、「この限りでない」は、「就任承諾書に記載した住所氏名と同一の住所氏名の記載ある本人確認証明書を要しない」という意味になります。 そこで、先に示した規則61Ⅶをさらに要約すると「A証明に伴う印鑑証明書を添付すれば、B証明に伴う本人確認証明書を要しない」となります。 しかし、印鑑証明書はイコール本人確認証明書(しかも、その最たるもの)ですから「印鑑証明書を添付すれば、本人確認証明書を要しない」という部分は無意味です。 ですから、このただし書の真意は、A証明(高度証明)をすれば、B証明(一般証明)は不要だという意味であり、つまりは、B証明に伴う就任承諾書への住所の記載を要しない(登記官は、就任承諾書上の住所氏名と印鑑証明書の住所氏名の一致を審査しない)ということになります。 では、以上をまとめます。 甲説(住所不要) 1、規則61Ⅶただし書を「証明」のレベルで解釈する。 2、高度証明(A証明)をさせた上に、重ねて一般証明(B証明)を求めることは無意味である。 もともと、従来の商業登記規則にA証明(高度証明)の仕組みのみが存在し、その他の仕組みがなかったたため、代表権を有しない取締役や監査役について虚無人名義の登記(架空の人物の登記のこと)がされることがありました。 これが社会問題化し、その防止のためというのが、規則61Ⅶ(改正当時はⅤ)の制定の歴史的経緯です。 ですから、A証明を要しない場合に限り、B証明を求めるという考え方はごく自然なものです。 法務省HP 甲説に基づく通達(H27.2.20民商18号)の内容は上記のリンク先から見ることができます。 以下、甲説による取り扱いを具体的に述べます。 規則61Ⅶただし書が、どのように作用するかをご確認ください。 1、規則61Ⅳとの関係 例)再任でない取締役の就任による変更登記(非取締役会設置会社) 取締役の就任承諾書 住所✖ 実印〇 印鑑証明書〇 →61Ⅶただし書により、住所の記載を要しない 2、規則61Ⅴとの関係 例)再任でない取締役が就任し代表取締役となったときの変更登記(取締役会設置会社) 取締役の就任承諾書 住所✖ 実印✖ →61Ⅶただし書により、住所の記載を要しない 代表取締役の就任承諾書 住所✖ 実印〇 印鑑証明書〇 →61Ⅶ本文(就任承諾書に住所氏名を記載せよ)は代表取締役についての規定ではない。 3、規則61Ⅵとの関係 例)再任でない取締役甲が就任し、他の取締役乙を代表取締役に選定した取締役会の議事録に実印を押印したときの取締役甲の就任による変更登記 取締役甲の就任承諾書 住所✖ 実印✖ →規則61Ⅶただし書により住所の記載を要しない。 →甲の印鑑証明書は取締役会議事録のために添付する。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2017.04.30 20:00:35
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