7月になり、仕事が落ち着いたので
約半年振りに髪を切りに行きました。
忙しかったのもありますが、
元々僕は美容室で髪を切るのが苦手なので
頻繁には髪を切りに行きません。
美容室が苦手という人は結構周りにも多く、
その大半が「店員との会話が苦手」という理由です。
僕もその例にもれず、あの店員との実のない会話が苦手です。
まず、僕の場合、仕事が不定期で
公演が絡んでくるので大体休みは平日になります。
そうなると美容室に行くのも平日になる訳ですが
平日昼間に美容室に行くと十中八九会話の切り出しは
「今日はお仕事お休みですか?」です。
「そうです」と答えると、次は
「お仕事なにをなされてるんですか?」と返ってきます。
僕は「お芝居とかのスタッフを…」と濁し、
店員は「ああ、ライト当てたりですか?」と返す。
面倒くさいので「はい、そんな感じです」と答え、
店員の「僕の友達にもそういう仕事の奴がいて…」
的な話を「へえ」「そうなんですか」で切り抜ける。
という毎回のパターンを繰り返す。
そんな不毛な会話が嫌でなかなか美容室には行けません。
じゃあ毎回同じところに行けば同じ会話はしないで済むじゃないか
と言われそうですが、毎回通いたいなと思えるほどの
会話にせよ、カットにせよフィーリングの合う人と出会えないので
それすらできないのです。
メンバーの山田氏などは、あの稀有な顔のおかげか
美容師さんと仲良くなり、やまのみずの公演にも
顔を出していただいた程で、僕にはどうすればそんな事が
出来るのか想像もできません。
そんなこんなで今日もしばらく無言で
店員さんのカットに耳を欹てていたのですが
隣でカットしている女性がやたらに饒舌に
そしてやたらと大声で話しているのが気になって
隣の席を覗いてみました。
すろと髪を切っている店員さんは黙々と鋏を滑らせています。
そのまま客の女性に目線を移すと、その女性は
携帯電話を手に持ち、電話をしながら髪を切られています。
その女性は「今?髪かわかしてる」とか
「さっきパーマあてたの」とか「シャンプー台にうつるわ」とか
ずっと電話を切る様子もなく電話相手に
現状をライブ中継しています。
ドライヤーをかける時も全く怯むことなく
電話をし続けているので、逆に店員さんのほうが気を使って
「ドライヤー良いですか」とジェスチャーで伝える始末で
いくら客だとはいえやりすぎだろうと思える光景を眺めていると
ふいに僕の後ろから、終始無言だった店員さんが
「最近いるんですよ」
とボソッと呟きました。
「迷惑ですよね」と僕が返すと「そうなんですよ…」
という何とも実感のこもった言葉が返ってきました。
初めて店員さんの本音が見えた瞬間でした。
その後、その電話女性が店を出てからは
店員さんと彼女の話題で盛り上がってしまいました。
話題は変わっても話は続き、もしかしたらこの人となら
話が合うかも…と小さな期待が沸いたころ、
店員さんが嫌な客という話題になり、
その店員さんが「やっぱ一番は無言で何も話さない人ですね」
と言った瞬間、今までの自分の美容室での態度がフラッシュバックし、
「ああ、僕って凄い嫌な客だったんだな…」と
身に沁みて思い知らされ、儚い期待を抱いたさっきの自分を自嘲し、
結局いつもと同じ、切ない気持ちで店を跡にしたのでした。
誰か良い美容室、もしくは美容室での処世術を教えてください。。
KUMA