今日、隣に座っている人がおそらく東野圭吾著『容疑者Xの献身』を読んでいた。
私はその時、同作家の『予知夢』を読んでいた。
なんという偶然なのだろう。
同じ作家である、という事も稀であるが、
ご存じない方の為に説明しておくと、予知夢も容疑者Xの献身も、共に「探偵ガリレオシリーズ」なのである。
「容疑者X」は私が次に読もうとしている本でもある。
まあ、東野圭吾氏は人気作家だし、「容疑者X」は最近文庫化された作品であるから、
確率的には低いわけではないのだろうけれど...。
これで相手がうら若き亜麻色の髪の乙女だったりしたら、
そりゃあもうたまらん話だったのだが、
どうやってもオジサン以外の何者にも見えなかったので、彼と私の間には驚くほど何も無かった。
べつにオジサンとのロマンス、いや、ロマンスグレーはいらないので、残念では無い。
いつか、同じ本を読んでいる方を見つけたときは、
その人がどんな人であれ、こちらも同じ本ですよというアピールをしたいものだ。
もし、電車内で貴方と同じ本の表紙をわざとらしくこちらに向けて、
目が合おうものならにやりとやってきた男がいたら、通報は避けてください。それは私です。
さて。
もうすぐ、我らが山田宗和が芝居の本番を迎えるという。
しかも、そのお題が「東海道四谷怪談」だと言うでは無いか。
四谷怪談といえば、お岩さん。お岩さんといえば提灯お岩。提灯お岩といえば妖怪である。
やまのみずの妖怪として数々の悪さをしている山田、特に、かの妖怪が狙わずとも内から発しれている悪さ、
「気持ち悪さ」に掛けては定評がある山田宗和である。
これを見て山田は「なにこの!」と言うかもしれないが、気持ち悪さこそ妖怪を妖怪たらしめている訳であるから、むしろ胸を張るべきである。
そんな妖怪が妖怪に纏わるお芝居に出演する。
「化けて出る」と言えば、様々な意味で正確だろうか。
これは期待出来ようというものだ。
まあ、法界悋気の妖怪、いわば妖怪悋気と自虐する私が言うのもなんであるが、役者としての山田は実に味のある妖怪である。
しかし、同時に「普段の方が面白いですね」とか言われて、日光を浴びたドラキュラみたいに弱っている姿も何度か見かけている。
ちなみに水島は妖怪と言うより妖精っぽい。
熊脇は怨霊である。音量でもいい。ウルセーし。鼻ツマミ者なのだ。
私はやまのみずの面々が、私の預かりの知らぬところで芝居に出ている姿を見るのが好きである。
見慣れた彼らの見慣れぬ姿。
実に頼もしく、喜ばしく、気恥ずかしい。
「あれは私の知り合いなんですよ!」と舞台中、舞台後に拘らず叫びたくなる。
けど叫ばない。私は偉い。
はてさて、今回の山田はどうであろうか。
余り持ち上げすぎても山田が困るだろうし、
山田は七月ごろ「私あまり出ませんよ!」と言っていた。
もしその言葉が額面通りならばそれはそれで、舞台に集中できて良いというもの。
赤坂なんてお洒落千万な街では御座いますが、お時間がある方はご覧になられては如何でしょう。
そういえば、七月ぐらいから彼ら妖怪たちには会っていないなぁ。
山田からは何度かお誘いを受けたのだけれど、都合が付かず会えず仕舞い。
このお芝居が終わったら、やまのみず四人で集まる事を「四や会談」というのは、
それほど上手くはないだろうか。
ああ、恨めしや。
記:野間(妖怪悋気)大資