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やまのみず お笑い コント

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2008年12月22日
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どうやら誕生日を迎えたらしい。

「また?」

「いい加減、マンネリじゃない?」

「よく飽きないね」

等々、ご意見も多数あるだろう。


私だって、出来れば毎年違った報告をしたいものだが、
如何せん誕生日というやつは、ぼんやりとしているだけでもやって来る。


私は基本的に、来るものは拒まないタイプなので、
誕生日のやつが呼び鈴を鳴らし、

「来ちゃった」

と、やや虚ろな目でやって来ても、追い返すようなことはしない。

「まあ、入れよ。どうした、傘も差さずに。今タオル持ってくるから」

と、なるだけ優しく扱う。

時には、「何しに来た!」と追い返そうとしたこともあったが、
基本的には、丁寧な対応を心がける。


しかし、今日の誕生日はなんだか様子が違う。

いつにもましてメソメソしているし、なかなか部屋に入ってこない。


「どうした?何かあったか」

なるべく穏やかな声で聞くと、
誕生日のやつは小さく嘆息し、やがて訥々と話し出した。


「僕、野間さんと居れるのはあと一年なんです。
来年以降は、僕じゃなくて、三十代のやつが来るようになるんです。
もうお別れかと思うと、寂しくて…」

誕生日のやつはいまにも泣きそうだ。


「そうかあ」

何と声をかけたものか、私はなかなか言葉を紡げなかった。


「今まで邪険に扱って、悪かったな。毎年、こんな私に懲りずにやって来てくれ
るお前には、本当に感謝しているよ」

私は正直に、自分の思いを伝えた。

すると、誕生日のやつはみるみる目を真っ赤にして、わんわんと泣き出した。



どれくらい経っただろう。
ようやく泣きやんだ誕生日のやつは、ぐずぐずと鼻水を垂らしながら笑った。


「野間さんから優しい言葉が聞けただけで、僕は幸せです!ありがとう!」


そう言うと誕生日のやつはすっくと立ち上がり、


「じゃあ!」


と片手を挙げて、部屋の外へと出て行った。


部屋の中に一人残される。


「おい!まだ今日は終わってないぞ!こら!仕事しろ!」


私は誕生日を追いかけて、雨の中を走った。


しかし誕生日の奴は思ったよりも足が速く、あっという間に見えなくなった。


走り疲れて家に帰ってみると、炬燵の上に三枚の薄い紙が置かれている。


「なんだ、これ…電報?」

どこか、親戚に不幸でもあったのか。
「チチ キノドク」とでも書いてあるのだろうか。余計なお世話である。


と、良く見れば、差出人には、山田、水島、熊脇の文字。


電報


三者三様の(正しくは山田妹も入れて四者四様)『誕生日おめでとう』の文字が躍る。



「ふむ。誕生日の奴、なかなか心憎い」



電子書信が発達したこのご時世、アナログな電報など、
結婚でもしない限り受け取る機会は無い。

しかし結婚など出来そうもないので半ば諦めていたが、
期せずして、誕生日に電報を頂く事になった。



実に、喜ばしい日のである。

三十路の道も、一歩から。
虚仮の一念、
いや、
虚仮の一年。

この一年は、自分のやりたい事をやる年にすると、
電報を眺めつつ、固く誓った次第である。





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最終更新日  2008年12月22日 23時37分05秒
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