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サラダホープは新潟でしか売っていない
のではなく、 サラダホープは新潟でしか売れない のだそうだ。 ネットでざっと調べてみたが、理由は不明。 何でも昔は全国区だったようだけれど、「何故だか売れなかった」ので、規模を縮小、 結果として新潟のみの販売に落ち着いたらしい。 山田兄妹は怒るだろうが、私の感想としては「そこそこ美味しい」が妥当なところだと思う。 埼玉の十万石饅頭 新潟のサラダホープ 釧路のナイスゴール 『これを知らずば県民(釧路市民)にあらず』と言っても過言では無い、 しかし県の域は出ない、なかなか通な名品が揃ってきている。 ちなみに熊脇の長崎で、カステラの出品は認められない。 それは何というか、ずるいからだ。 「そこそこ美味しい(県民のみ大絶賛)」商品でなければならぬのだ。 さて。 そんな第1次菓子戦争が勃発したのは、山田の誕生日の翌日1月30日未明の事であるが、 その前日、 山田兄妹が渋谷で「自分への誕生日プレゼントを兄妹で買いに出掛ける」という、 考えうる中でもかなり悲しい部類の誕生日を半ばヤケッパチで満喫している同時刻、 わたくし野間大資も渋谷の街にいた。 理由は、さして特殊なものではない。 たまたま渋谷の街を通りかかったからである。 時代の最先端の一歩先を歩く私であるから、渋谷にいるのは別におかしくない。 普通だ。自然だ。溶け込んでいる。 (ただ、時代は回るらしいので、「最先端の一歩先」=「時代の最後尾」である可能性は否定できない) そんな折、たまたま水島から一通のメールが、時代の最先端の私の最先端の携帯電話に最先端に届いた。 『山田兄妹は渋谷で自分への古着を買うらしい』 折角の新たな一歩目に誰かが着古した洋服を買うなんて、 一種の自己鍛錬か、それとも被虐嗜好なのか、と思案に耽っていると、 山田が良く行く大きな古着屋の近くを通りかかった。 (そう言えば、過去にここへ連れてきてもらった事がある) 私はほぼ核心に近い思いで、その建物の階段を上がった。 いた。 なんという予測可能な行動範囲だろう。 まあ、私も渋谷で用事がある店なんてたかだか数軒だから人のことは言えないが、 それにしても一発目で見つけてしまうのは、私に探偵としての才能があるだけではないだろう。 見つけてしまったものは仕方が無い。 うむ。 尾行しよう。 極めて自然な思考の流れである。 これが仮に、山田が麗しき亜麻色の髪の乙女でも引き連れてショッピングなぞに勤しんでおるところだったら、 どんな手を使ってでも山田を窮地に陥れる事にやぶさかでは無い、 もとい、 二人を応援すべく、私は死せず、ただ去るのみであったが、 同行者は気心の知れた山田妹嬢である。 尾行するのになんの躊躇いもない。 むしろしない方が、なんだか悪い。 という訳で、私は建物の外に出て、入り口が見渡せる向かいのビルの階段に腰掛けて二人を待った。 山田は「尾行してください!」と言わんばかりに赤い服を纏っている。 山田妹は「私を見つけてください!」と言わんばかりに、髪の毛が盛大な事になっている。 ガラス張りの壁のその向こうで、ハンガーに吊られている洋服を眺めている姿が見て取れる。 私は不審者になるのを避けるため、携帯電話を取り出し、 「あー、もしもし? 俺だけど」などと言い出した。 これなら安全である。 しかし、10分経っても20分経過しても出てこない。 些か疲れを感じていると、このビルを使用しているであろう5~6人の団体が私が座っている階段へ向かって来た。 数人が、不審な視線をこちらに送る。 私は携帯電話でやり取りをしながら立ち上がり、すぐさまその場を離れた。 その後もここそこと場所を変えつつも、誰かの人生相談に乗りながら(相手は架空の人物である)待つこと更に10分。 ようやく2人が店を離れる。 やっと、尾行ができる。 今まではただの尾待であった。動きたくて仕方が無かった。 山田兄妹はすとすとと渋谷の街を歩き、とある店へと入っていった。 渋谷の街の洋服屋はガラス張りされている所が多い。 相手との面識がなければ尾行に最適であるが、顔見知りだとそうも行かない。 こちらの存在がばれないように、常に何かの影に隠れなければならない。 再び待つこと10分。 出てくる気配は無い。 (…おかしいぞ。この店はどう考えても山田好みでは無いのだが) そこで気が付いた。 この店は大通りに面している! そちら側にも入り口が無い訳が無い! 慌てて向かってみれば案の定、大きな入り口がそこにあった。 しかし、困った事に二階にも地下にも店はある。 (先ほど山田は手ぶらだった。今日という日は流石に坊主で帰るつもりは無いだろう。何かしら買いたいに違いない。 という事は、普段は訪れない店の商品も見てみようとするかもしれない) 思考の迷路に迷い込んでしまった。 5分待ち、10分待ったところで私は意を決し、大通りに面したその店へと入った。 階段の角々に注意しながら二階へ上がり、 すれ違わないように急ぎ足で地下へと下がる。 どこにも兄妹の姿はない。 しかし、私は焦らない。大丈夫だ。 最初の店を出てこの店に向かったとなれば、次に向かう場所は予測できる。 何故なら、その先にも以前山田に連れて行ってもらった古着屋が存在しているからだ。 走って向かった3番目の店は二階にあり、窓もやや小さく洋服もぎっしり吊られているので店内が見にくい。 が、まるで私を助けるかのように、山田妹嬢が窮屈なハンガーをすっと避け、顔をこちらに出した。 安堵すると共に、「本当に予想通りの行程だなぁ」と、やや苦笑い。 その後も更に一件見て回った二人は、そのまますっとタワーレコードに入っていった。 厄介な店だ。 そこはさながら要塞で、店外からでは中の様子を確認できない。 しかし、フロア内にはCDが積まれた棚が沢山存在している。ある意味、尾行しやすいと言えなくも無い。 慎重に距離を取っていた私は、タワーレコードに向けて走った。 一階には、いない。 二階はJ-POPだ。いるとしたら二階だ。 慎重に階段を上がり、素早く列を確認して行く。が、いない。 まさか、三階か? しかし三階は洋楽だぞ。 いやまあ、山田は洋楽を聴かない事もないだろうが、きっと買わない筈。 しかし、ここにいないとなると、三階か。 私は意を決してあがった。いるなら、ここだ。 が、いない。 四階なのか? 四階はHIP-HOPだぞ。 いや、山田はHIP-HOPも聴くだろうが、しかし、買うほど興味があるだろうか…。 いやいや待てよ。 山田妹嬢は、なんだかHIP-HOPを聴いていそうな顔してるぞ。 段々と駅へ近づく行程を辿っているのだから、最後に寄っていい? はある。 可能性はあるぞ! 私はあがった。 いないし。 どこにもいないし。 ああ、失尾だ。 見失った。ロストした。“ハードラック”と“ダンス”っちまった。 仕方ない。 もう帰る頃だろう。水島と合流すべく私は山田家のある駅へ向かった。 その後の話では、タワーレコードにはただ「トイレを借りに」寄っただけとのこと。 さらに追い討ちを掛けるように、私が目的の駅に着いて水島と合流しても、 彼ら兄妹は渋谷でうろうろとしていたそうだ。 まったく、憎たらしい兄妹だ。 その後は山田の記したとおり、妹嬢の手引きで難なく山田家に進入、 見事山田を驚かすという流れになった訳である。 私の尾行は一体何であったのか。私に答える術は無い。 誰を驚かせるわけでもなく、何になるわけでもない。 私が抱いている、私も御し得ない不穏な部分が顔を出したのかもしれないし、 「何だか尾行したらきっと面白い!」と、何の考えもなしに悪戯ッ子の如くやっただけかも知れない。 人は私を見て言うだろう。 気持ち悪い、と。 私はこの行動をここに記す事で、それを受け入れよう。 ただ、私の尾行によって、きっとどこかで誰かが救われている筈だ。 一匹の蝶の羽ばたきが、遠くで嵐を巻き起こすように。 以上で、私が語れる「山田の誕生日」に関する話は終わりである。 しかし、山田の誕生日を完結させるためには、まだ足りないピースが存在している。 一体、誰が山田の誕生日プレゼントを購入したのか? それはどのようにして運ばれ、どこに保管されていたのか? 山田妹と綿密なやり取りをしていた人物とは? あなた方はまだ、真実の「山田の誕生日」を目撃してはいない。 私の語った事など、その当日に起こったほんの一部の出来事にしか過ぎないのである。 最後にこの言葉で締めくくらせてもらおう。 「山田の御母堂が作ったチーズケーキは、 欠点が無い所が欠点である」 おいしかったんだなあ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年02月01日 01時39分58秒
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