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昨日小生は呼び出された。
だから浦和宿の駅舎へと自転車を転がした。 浦和駅舎の東口に聳え立つ「PARCO」が目的地だ。 八時を五分過ぎたところで着いてみると、瀟洒に舗装された駅前広場の腰掛けに二人の姿を確認した。 長躯長髪で、如何にもフーテンと云った出で立ちの男。 その隣には、和装に身を包んだ肌の白い小柄な女性が小さく座っている。 一見すれば誘拐事件発生中である。が、そうではない。 そこへ、木彫りと謳われた土気色をした小生は近づいた。 一層誘拐色を濃くしたわけだが、 期せずして、部長副部長、並びに二代後の部長が顔を揃えた訳である。 今日は部活の同窓会である。 小生は高校時代、演劇部に所属していた。 そこで出会った数名とは今でも――細くではあるが――親交が続いている。 小生から率先して声を掛けることはないが、時折このような会を企画しては呼び出してくれる、 ありがたい存在である。 やがて元部員達が三々五々、集まってくる。 針金のように窶れた男、 岩のような出で立ちだが幼稚園で給食を作る男、 乳が無いとフーテン副部長に悪態をつかれ、怒りを露わにする女、 我々の先輩で、胎内に子を宿しているややギャンブル依存気味の女性。 本当はもっと多くの部員が存在しているのだが、 悲しいかな彼ら彼女らとは親交が途絶えている。 斯くして、同窓生五人、先輩一人、二個下の後輩一人の七人が一同に会したのである。 七人の侍――などと銘を打ちたい所だが、如何せん打つ銘など無いくらい刀が刃こぼれしている連中だ。 七福神にしては、男性陣に幸が薄すぎる。 それでも敢えて名乗るならば、 大酷天 阿鼻須 便座居天 無茶門天 未定 耄碌寿 御老人 と言った所か。 小生はおそらく耄碌寿か御老人だろう。 そんな七人はPARCOで食事会を催す事にした。 小生はPARCOの映画館を良く利用していたので、こう言った。 「PARCOに関しては小生が明るい。PARCOの事なら何でも聞き給え。何なら小生を『パルコ』と呼んでもいい」 すると彼らは躊躇い無く私を「パルコ」と呼んだ。 「おいパルコ、どこが美味しいんだ」 「レストラン街は何階だパルコ」 「アホー、アホー」 私が「PARCOに入ったら小生をそう呼んではいけないよ」と諭したにも拘らず、 彼らは阿呆の塊だから、PARCO内でも私をパルコと呼ぶのだった。 中華料理屋でやいのやいのと談笑する。 昔話に花が咲く。もちろんそれは徒花である。 話した内容は内輪受けしかしないので、ここには記載しない。 フーテン男が会の名前を欲しがっていたので、小生はこの会を「鴨の會」と名付けた。 皆気に入ってくれただろうか。 なし崩し的に、鴨の會に決まった感も否めないし、決まっていない気もする。 彼らが小生の事をどう思っているかしらないが、小生は彼らと過ごす「何となく」感がとても好きだったりする。 何となく集まり、何となく話し、何となく別れる。 次会う約束などしない。 誰かが企画するだろうと誰もが何となく思っている。 勿論、これは小生に限った話しなのかもしれないが。 ともあれ、その会も何となく終わり、それぞれ別々の人生へ岐路に着いた。 さらば、君たち。 次会う時もくうだらない人たちで居ておくれ。 小生はそれに勝るくだらなさで君たちを迎えよう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年06月12日 23時22分14秒
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