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ラジオに耳を傾けていたら、「クラブミュージック特集」と称して、
吹奏楽部の演奏や合唱コンクールの音声が流れてきた。 クラブと部活を掛けた冗談みたいな企画だったのだけれど、 MCの名調子もあいまって、これが実に感動的。 プロではない人たちが奏でる音楽の素晴らしさがあるのだ。 指揮者、演奏者、歌い手、すべての人たちが、 今後その道を目指すわけではない。 部活動なら当然だろう。 志はそれぞれで、モチベーションもそれぞれ。 メチャクチャ上手いけれど、将来は医学部を目指しているから今後一切やらない彼や、 下手糞でセンスも無いのだけれど、一生トランペットに関わろうと決めた経験の浅い彼女もいる。 そんな、様々な素人たちが会する部活動だ。 これが合唱コンクールならさらに多様になって、 歌なんて一度も人前で歌った事がない委員長や、 歌だけは自信があるのだけど、歌い方が変な不良の佐々木や、 中学生時代の僕みたいに、やる気がなくて、嫌味っぽくて、足を引っ張ってモテないやつがいる。 人種の坩堝みたいな教室で、しかし普段は関わりあおうとしない彼らが、 一緒のステージで一緒の曲を歌う。 これは彼らにしか出来ない音楽なのだ。 そんな中でも、特に目を引いた(耳?)のは、選曲の部分。 結構自由度があるらしく、いわゆるクラシックだけでなく、 映画音楽なんかもコンクールで演奏されたりするらしい。 感動的だったのはロッキーのテーマ。 (というか、MCの恣意的なチョイスでロッキーのテーマが流れまくったのだけど) 俺は負けた! でも、人生を進む上でかけがえの無いものを手に入れたんだ! そういうメッセージを込めて学生達が演奏している、 と、半ば勝手に解釈していくと、 実に感動的なのだ。 委員長は両親に反抗できず、敷かれたレールを歩まされているけれど、 しかし、このテーマを演奏する事自体が、かけがえの無い反抗なのだ。 不良の佐々木は何一つ真面目に取り組まず、人から嘲笑されているのだけれど、 しかし、こうして今、顔を赤くして笛を吹いている。 僕みたいな暗い奴は、これを演奏し終えることで、身長が伸びて性格も明るくなって彼女が出来る、と信じている。 そう勝手な背景を設定していくと、感動的なのだ。 …まあ、こっちのサジ加減なんだけど。 自分が小学校のとき、合唱コンクールで歌った曲。 全ての歌詞を思い出すことは出来ないけれど、それでもぼんやりと覚えている。 子供の歌う曲じゃなかったような…。 「エトピリカ」という混声四部合唱の曲だった。 濃い霧にめしい 黒々と 波のどよめく オホーツク という出だしで始まる。 暗い。 他のクラスが「君の朝」なんかを選曲している中、あまりにも渋い。 …どうしてこの曲を選んだのか。 「どの曲にするか?」で頭を悩ませすぎてヘンテコになったクラスと担任が、 もう勢いで決めてしまったんだと思う。 結果として、なんらかの賞をもらえたのかどうか、その辺りは覚えていないのだけど、 覚えていないという事は、多分、貰えなかったんじゃないだろうか。 しかしあの時、クラス中がヘンテコな感じになって、 この曲を毎日毎日練習し、体育館のステージで披露した事は紛れも無い事実で、 しかし、同窓会で語られる事も無く、ひょっとしたら覚えている人も少ないだろう。 合唱コンクールなんて多分そんなものだ。 だから、良いんだと思う。 その一瞬だけ一つになる、という、未完成さが胸を打つのだ。 あなたは何を歌ったか、覚えてますか。 愛、覚えてますか。 野間 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2011年02月09日 13時10分27秒
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