116593 ランダム
 ホーム | 日記 | プロフィール 【フォローする】 【ログイン】

超重神山さんDESTINY

超重神山さんDESTINY

第16話 混戦 1


自衛軍が隊長候補としてセルギルを迎えてから三日がたった。
特にこれといった出来事も無く自衛隊員とセルギルにもこれといった問題は無く三日という時間が過ぎていた。

「暇だなぁ・・・・」

「暇だねぇ・・・・」

「暇よねぇ・・・・」

食堂で昼食を取りながらマグナ、ゲイル、サリアがぼやいた。最近までアキラの戦死やらなんやらでゴタゴタしていただけに敵襲も無くこれといった問題もなく平和な三日間を過ごしている・・・・・・のは構わないのだが、やることがないのだ。

「平和なのはいいけど・・・・何も起こらないと暇でしゃーねぇなぁ・・・・」

「私たちが暇なのはいいことなんだけどねぇ・・・・」

そうぼやきながら同じタイミングで三人はみそ汁を飲み干す。

「そういや・・・最近シャイル見かけないよな」

「そうだなぁ・・・・どうしたんだろ?」

「なぁんか・・・・セルギル隊長候補が来てから機嫌悪いのよねぇ。挨拶しても無視だしさ」

シャイルと部屋がお隣さんであるサリアが言う。セルギルが来てからというものシャイルは誰とも口を聞かなくなった。たまにトレーニングルームで見かけるが声をかけても無視している有様・・・・・・特にセルギルとは顔を合わせようともしない。
彼女とセルギルの間には何かあるのではないか? と言う噂まで立ち始めているほどだ。
「どうしたんだろうな・・・・シャイルの奴」



トレーニングルーム。シャイルは苛つきを晴らすように片っ端からトレーニング器具を使って汗を流し今は休憩のためにソファーに横になっていた。

「はぁ・・はぁ・・はぁ・・・」

無駄に苛つく。理由はアイツが・・・・セルギルがいるからだ。
何故、アトランティスにアイツがいるのだ?
セルギルは4年前のあの時、確かに死んだはずなのに・・・・・・。
いや、正確には生死不明であって死亡を直接確認していなかったのだが・・・あの状況で生き延びられるなど思っていなかった。

「・・・めない」

誰にでもなく呟く。

「認めない・・・・あんなヤツ・・・・絶対に認めない・・・・」

その声には明らかに憎しみの感情が含まれていたが・・・・・・それと共にまるで何かを求めるような感情までが入り交じっていることにシャイルは気がつかなかった。



アトランティス領海の海底。其処をゆっくりと潜行する三隻の潜水艦の姿があった。
潜水艦の一隻、サーペントのブリッジでジャウルクは自分の席で目を閉じている。
出撃を前にした彼なりの精神統一の方法である。ブリッジでやるのは此処が一番落ち着くからだ。

「船長、各部隊の出撃準備整いました」

部下の報告を聞きゆっくりと目を開ける。

「よし・・・このまま可能な限り接近してからMSを発進させる。総員戦闘配備」

ジャウルクが静かに指示を出す。その直後、レーダーが別の反応をとらえた。

「船長、レーダーに反応・・・・パンゲアの部隊です」
「なに?」

「数は大型潜水艦1隻に中型潜水艦2隻・・・・どうしますか?」

それを聴いたジャウルクは考え込む。中型の潜水艦2隻と言うことはMSは多くても12機がいいところだ。しかし、大型潜水艦の搭載数は有に10機を越える・・・・・・・つまりパンゲアの部隊はMSが22機はあると考えた方が良い。アトランティスの方は本拠であるためMSは多数あるだろう。が、パンゲアの軍は優秀であり戦闘力も高いお互いにぶつかれば無傷では済まないだろう。

「予定を変更するか・・・・・全艦その場で戦闘配備のまま待機しろ」



パンゲア軍潜水艦ビックホエールと追従している2隻の潜水艦ではいつでも出撃出来るよう戦闘配備が整えられていた。

「いい加減に何かしらの戦火をあげんと・・・上が五月蠅いか」

ネプチューンの乗り込みながらオルトが呟く。本国からは早くアトランティスを堕とせと矢の催促・・・・・・そろそろ上層部の老人共の堪忍袋も限界に来ているようだ。

「・・・・そもそも他の海上都市を支配してどうするつもりなのだ」

以前から気にかかっていた事を口に出す。パンゲアは数ある海上都市でも有数の軍事都市だ。他の海上都市との関係は決して良かったとは言えないが・・・・・・それでも侵略しようなどと言う動きは皆無だったのだ。それが急に他の都市への侵略を結構するなど、いくらなんでもおかしいのだ。資源などに困っていると言うことはないので侵略する理由がない。

「やはり、あの男が来てからか・・・・上が変わったのは」

パンゲア軍上層部に二年前、参謀として現れたあの男が来てからだ。上層部が今の姿勢になったのは。何度かあったことがあるあの男には正直、良い印象は持っていないどころか嫌悪感すら抱いている。他人を見下し、全てが思い通りに動くと確信している。今回のアトランティス侵略もその参謀の指示だ。

「考えても仕方ないか・・・・・」

どのみち、自分は軍人。命令に従うだけと納得させネプチューンの発進準備を整える。
その横のメンテナンスベットに固定された黒いハスターのコクピットで発進準備を整えているフェルはいつものように接触的に戦おうというような意欲がわかず複雑な心境になっていた。

「頼むから・・・・出てこないでよ」

願うように小声で呟く。出来る事ならばゲイルと戦わずにすむようにと・・・・・・。

『隊長、全機発進準備整いました』

艦内アナウンスで全部隊の発進準備が整ったことがオルトに伝えられる。それを聞いたオルトはヘルメットのバイザーを降ろし深く深呼吸し気分を落ち着けてから指示を出す。

「全艦浮上。全機出撃しろ!!」

『了解!!』

海を割り三隻の潜水艦がまるで飛び上がる鯨のようにその巨体を浮上させた。



海上都市パンゲア。有数の軍事都市として有名なこの都市の中央塔にある軍部。その一室で白い軍服に身を包んだ20代後半の男が静かにコーヒーを飲んでいた。パンゲア軍参謀フェイク・ルアノス・・・・・・それがこの男の名だ。

「ああ・・・全ては順調に運んでいるよ」

フェイクは机の上にある小型の通信用端末に向けて静かに言う。端末の向こうからは声からして20前後といった感じの女性の声が帰ってくる。

『そう・・・・それにしては時間がかかりすぎじゃなくて?』

「フン・・・駒共の容量が悪いだけさ」

前線で戦う兵士を駒と言い切るフェイク。彼にとって部下はただの駒、道具でしかない。
それを知っている女性は「フフフ」と意味深な笑いをこぼす。

『相変わらずね・・・・でも、そう言うところ嫌いじゃないわ』

「惚れたか?」

『まさか、アナタに惚れる女なんて私がお目にかかりたいわ』

女性の言葉をさらっと聞き流しコーヒーを飲み干す。このやりとりはいつものことだ。フェイクも彼女に惚れる男性がいれば見てみたいと喉まで出てきたが辞めた。よく考えたらその男は自分自身ではないか。

(滑稽だな私も)

と心の中で苦笑しながら彼女にまだ言っていなかった情報を伝える。

「そういえば・・・・白ヘビからの報告だが、例の娘・・・・・・アトランティスにいるらしいぞ」

それを聞いた女性は一瞬沈黙する。

『へぇ・・・・てっきりジューディスやマウラーク辺りに可愛がられてると思ってたけど・・・フフ。ねぇ・・・・・フェイク、白ヘビに伝言頼める?』

「娘を生きたまま連れてこいだろ?わかったよ・・・すぐに伝える」

『ありがと』

そして女性は通信を切り端末からは雑音が流れる。フェイクも端末を切りコーヒーを口に運ぶ。

「惚れた弱み・・・と言う奴か。滑稽というより・・・・道化だな私は」


続く


© Rakuten Group, Inc.