玲児の近況

2010/08/20(金)09:06

朝鮮総督府の歴史認識

 朝鮮総督府が昭和10年に朝鮮総督府施政二十五周年で刊行した、『朝鮮史のしるべ』 、朝鮮総督府 という一般向きの歴史書がある。好評だったので昭和12年3月31日に再版、昭和14年11月30日にも三版がでたらしい。国立公文書館にあるのは3版である。 アジア歴史センター で画像閲覧できる。  イメージは昭和12年再版本である。  日本語で出版されたものであるから、当時の朝鮮総督府と日本人の朝鮮半島の歴史に対する考え、あるいはこうあってほしいという先入観、自己宣伝をよく示しているものだろうと思う。  石器時代から日韓併合までを記述しているが、読んでみると学問的な記述、立派なデータや表が多く、現代に出しても多少の改訂と補論で通用するのではないかと思うくらいの力作である。御用学者・官僚による編纂物にしては出来すぎている。  ただ、読んでいると不思議なことを感じる。日韓の軋轢になりそうなところは、できるだけ触れない、あるいは軽く書いてあるのだ。読んだ日本人が民族対立感情をもたないように書いてあるといってもいい。腫れ物に触るように、あたらずさわらず、とにかく無難に共存共栄を図る、というような姿勢で書いてある。  まず、白村江: 本格的戦争の前に、日本から連れてこられた百済の王子が現地指導者鬼室福信を殺すという、非常識な仲間割れをやったことが敗因の一つであることは有名であるのに、一切書いてない。「勝敗の如何は大した問題ではありません」とあっさり逃げている。   次  遣唐使:朝鮮半島西岸沿いの航路が新羅の非友好的行動によって通れなくなったので、危険な東シナ海横断航路を使わざるをえなくなった。このため、遭難を繰り返したのは周知のことであるが、これは一切記述されていない。  次 元寇:元史・新元史・高麗史の原文を読むと、元に仕えた高麗人官吏と高麗王子(後の忠烈王)がクビライに薦めた、と書いてある。このことを一切書かず、あたかも高麗はクビライに強要された被害者のように書いている。  次、応永の外寇 李氏朝鮮が対馬侵略を行って撃退された事件だが、一切記述がない。     次、伊藤博文暗殺事件:犯人が誰か何も書いていない。   細かくチェックすれば、倭寇や豊臣秀吉の征明の役(朝鮮半島を舞台にした日明戦争)の書き方にもかなりフィルターがあるかもしれない。   日韓の協力、合作を望んでいたことはわかるが、ここまでやると歴史の捏造に近くなっているのではないかと思った。

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