しあわせ牧場「ボスの出産」
しあわせ牧場で最高齢の牛「ボス」14歳が出産いたしました。牛の寿命は20年と言われているなかで、乳牛では14歳まで現役でいることは珍しく、乳量減少などの理由から、ほとんどの場合10歳以下で淘汰されてしまいます。このボスは、しあわせ牧場の開拓からの付き合いで、放牧が初めての牛たちのリーダーなってもらうべく、田野畑の大先輩放牧酪農家からゆずりうけたベテラン牛です。群れのボスだけあって気性は荒く、ちょっと近寄り難い存在で、いつもみんなの先頭を歩き、その季節にあった最適な場所へと群れを導きます。雪の日も先陣を切って雪をラッセルし、道を切り開き、餌場へと群れを導く姿は神々しくすら思えます。体が大きく、時には若い牛に頭突きをして指導したりもする、頼れる姉御、そんなボスもここ数年、歳のせいか少し動きがゆっくりになってきたなぁって感じていました。そしてある日を境に、先頭を歩く牛がサブリーダーのベスに変わっていました。ついにこの日がきたかぁいや、また返り咲くんじゃないかと見守っていると、順列はだんだん下がり、最後尾を歩くボスの姿…歩く速度も遅くなったなぁ…歳だなぁ…って思っていたら…なんと妊娠しているではないですか!歳なので妊娠は諦めていたのですが、ご懐妊^^難産を覚悟の上で今回の出産に臨みました。日に日に動きが鈍っていくボス体が重そうです。出産間じかになり、牛も人もソワソワ…常に群れで行動する牛、しかし、放牧の牛は出産時に群れから離れひっそりと出産、そして産んだら子牛を見つからないように木の間に隠します。野生の本能なのでしょう。その日はボスも姿を見せず、いよいよかと探すと、牧場の奥深いところで、いきんでいるボスの姿…お尻から出ている胎盤の中に足が見えます。お出産に立ち会える^^と近寄ると足元には子牛が一頭…あれ…?君は誰…えーなんと双子じゃないですか!しあわせ牧場で双子が生まれるのは初めて、どうしていいかわからず、まずは様子を見ていると、通常は前足から産まれるのですが、どう見ても後ろ足が出ています。…逆子だ!逆子の出産も初めて、やはり見守るしかなかったのですが、ボスが苦しそうにこちらをチラチラ「見てないで手伝ってよ(怒)」って顔をするので、急遽助産をすることにしました。後ろ足にロープをかけ、ボスのいきみに合わせて引っ張ります。逆子は首など引っかかる部分が多くなるので、大人二人でもなかなか出てきません、ダメなら獣医をと思って最後の力を振り絞ると…ズルッと抜けてきました!ふぅ…産まれた…すぐにボスが振り返り子牛の体に付いている胎盤や血を舐めます。一説には他の動物に襲われないように出産の痕跡を消すためとのこと家畜なのですが、この行動も野生動物の本能を垣間みる瞬間です。はぁ…無事に産まれてよかったぁん…双子がお腹にいて重くて動きが鈍っていたのかな…産んで身軽になったら、またボスの座に返り咲くのか…今後が見ものです^^