閉鎖病棟にいきなり入院した時から
あの病院には二年通った。
もう来たくないという思いと
「外からの刺激から守られている」閉鎖病棟に帰りたいという思いが
いつもいつも混在していた。

結婚がきっかけか
猫を飼い始めたのが良かったのか
私の心は徐々に落ち着いていった。

普通の人に比べれば
かなりの情緒不安を抱えていたが
それなりに生活できていた。


彼の浮気が分かり、自分の心がバラけてしまいそうになった時
病院に行かなければもうダメだという気持ちがあった。
だけどどうしても二の足を踏んでいた。

病院に行ったらあの時のように即入院になるかもしれない。
もしお迎えに行けなかったら息子はどんなに傷つくだろう
そう考えると怖くて行けなかった。

児童相談所、保健センター、メンタル電話相談
どこに相談しても受診を勧められた。
自分の不安を話し、入院施設の無い病院を紹介してもらった。


最初に通った病院は本当に病院らしい病院だった。
普通の待合室。
診察室では蛍光灯の灯が全てを明るく照らし、丸くて回転する居心地の悪い椅子。

今度の病院は違った。
待合室にはソファやマッサージチェアが置かれ
診察室もまるで書斎のような部屋だった。
照度を落とした落ち着きのある明るさ。
ゆったりとしたソファに座り落ち着いて話すことができた。


十年で精神科も薬も随分変わったことを知った。