アニー・リーボヴィッツ
日曜日、シネテリエ天神で「アニー・リーボヴィッツ レンズの向こうの人生」を見た。ずっと狙っていた映画、ようやく見ることができた。予想どおり、実に充実したドキュメンタリー映画だった。女流写真家で映像の最先端を長年に渡り疾走する希代のハードワーカー“アニー・リーボヴィッツ”絶頂期のStonesのツアーにべったり張りつき、数々の写真を撮った人ジョン・レノンが亡くなる直前にオノヨーコとの抱擁写真(あの超有名な)を撮った人デミ・ムーアの臨月ヌードを撮った人ロックアーティストや役者から絶大な信頼を得ている人だいたい僕が知ってた知識はその程度だったのだけど(ミックジャガーとキースリチャーズとかパティスミスなんかがコメントを寄せてると聞いてこの映画がずっと気になっていた))知らなかった真実が興味深かった。彼女と被写体との関係性ひとつひとつに“物語”がある。アニー・リーボヴィッツは語る。 写真は高潮した一瞬を切り取るものなの。ここにいるあなたと私だけが真実写真は手紙かメモみたいなものね。投げ掛けた言葉が場面を創る。彼女しか撮ることができない写真があるのは演出の力だったり、関係の編集だったりするわけだ。対象との絶妙な距離感と斬新なアイデア、浮遊する言葉その辺りも映画では丁寧に描かれるオノヨーコは語る。彼はアニーに協力したのあれはジョンではなく、アニーの創作品なの被写体となった数々のアーティストの言葉が彼女の写真を浮かび上がらせる過去の映像と現在が交錯し1人の写真家の人生を描きながら職業論としても、女性の生き方の1つのモデルとしても見ることができる。アメリカの雑誌(ローリングストーン誌やヴァニティフェア誌)の歴史的変遷も興味深い。60年代から派生したサブカルチャーの系譜を辿りアングラからメジャーへと変遷していくローリングストーン誌に蔓延したドラッグカルチャーと彼女の転機がリンクしていたり大御所になる過程の苦悩みたいなものが深まるにつれセットや細かい仕掛けが冴え渡り“狂気”じみた仕事に圧倒される。ロックの世界の人がファッションからダンサー、はたまた政治家セレブへと仕事の幅を拡大していく感じは痛快。“写真”を軸に、贅沢な登場人物が次から次に、出るわ出るわミーハー心も満たされる映画でした。単館系でかかる秀逸な番組はあっという間に上映終わってしまいますからとにかく見ておいたほうがいいですな。