Butt video screening
12月14日オランダの誇るアート指向のゲイ雑誌、Buttマガジン主催のビデオ・スクリーニングに行って来ました。3ヶ月に1回のペースで出版されるこのButtマガジンを立ち上げたのはJop van BennekomとGert Jonkersの2人。Gert Jonkersはこちらの新聞NRC Handelsbladにコラムを持つファッション・ジャーナリスト、そしてJop van BennekomはButt magazine 以外に『Re-magazine』の編集も手がけるヨーロッパで最も重要なマガジン・デザイナー/エディターの1人。この雑誌が創刊された2001年には、俺とダークはまだニューヨークに住んでたんですが、Butt創刊号が出た時にはニューヨークのゲイのアート関係者とかデザイン業界のゲイの連中の間でも、口コミで評判が広まって、当然俺とダークも購入。それ以来の大ファンであります。ダークの崇拝するロンドン在住のドイツ人フォトグラファーWolfgang Tillmansや映画監督のGus van SantやJohn Waters、オランダを代表するファッション・デザイナーチームのViktor&Rolfなどなど、今迄この雑誌にインタビューが載ったアーティスト、そして作品をこの雑誌に提供した人々の顔ぶれには蒼々たるものがあります。今気になる人物、尖ってるコアなアーティスト達の作品や写真、インタビューが満載され、現在のアートシーンや、音楽などの動きに興味のある人にとっては読み応え充分な雑誌だといえるでしょう。アメリカやイギリスをはじめ世界各地に読者層を持つ『Butt』は、ゲイマガジンという枠を完全に超えたレベルで、様々なサブカルチャーを独自の視点で捉えたコンセプトマガジンとして各分野で高く評価を得ている雑誌でもあります。ファッション特集を装って、実は単にスポンサーの商品を紹介するに過ぎないような記事を何ページも組んだりなんていう愚かな企画は絶対にせず、写真のモデルも一人一人皆超個性的、他のゲイ雑誌でいたる所に登場するパーフェクトボディ+ルックスの複製人間みたいなタイプは全く見当たりません。アーバクロンビー&フィッチやAmerican Apparelの服を身にまとい、IKEAのカタログに出てくるような家に住み、全員マドンナやシザーシスターズあたりの音楽を毎日何度も何度も聴いて、テクノのダンスビートが流れて来ると途端に、『キャ~』って黄色い叫び声をあげながら条件反射的に上半身裸になって飛び跳ねて踊りだす…なんていうステレオタイプ的なゲイのライフスタイルとはまったくかけ離れたところに位置する雑誌です。これはゲイ関係の出版物だけに関した事ではありませんが、一般的にレイアウト・デザインや紙の質、カバーなど上っ面の見かけはもの凄く立派でおしゃれでも、内容的には何でもかんでもぎゅうぎゅうずめに押し込んだだけで最終的には他の雑誌と全く区別がつかないような雑誌がむやみやたらに存在してる、どこかの国の雑誌業界にも見習って欲しい姿勢を貫いた雑誌だと思います。今回のスクリーニングが行われたのはアムステルダム駅近くのレストラン/クラブ『11(エルフ)』 現在はSTEDELIJK MUSEUM CSが入っている元郵便局だったビルのてっぺんの11階にあるエルフ、裏口からレストラン迄上がって行くエレベータは郵便局の頃の貨物用エレベ-ターをそのまま使用、エレベーター内一面にローカルのグラフィティアーティストの作品が描かれてます。ダークの後ろの部分がちょうどむき出しになった壁の部分。この壁にも延々とグラフィティが描かれていて、エレベーターの動きにあわせてまるで動くアニメーションのように見えます。レストランは倉庫だったスペースの20メートル近い天井をそのまま生かしたデザイン。ワンフロアー全体をぐるりと囲む窓からはアムステルダムの夜の全景を楽しむ事が出来ます。スクリーニングが行われたのはレストランの裏側にあるイベントスペース。夜の7時半くらいからとだんだんと人が集まり始め、8時にはほぼ満員状態になります。アムスのあちらこちらのゲイバーで見かけた顔がちらほら… 結構ゴツめの髭レザー系のお兄さん、熊おじさん系が結構多いので、『へえ~、あいつもBUTTマガジンのファンなんだ~』みたいな感じでした。こちらは挨拶をするBennekom氏とJonkers氏。今回のスクリーニングは、過去に出版された『BUTT』のバックナンバーに掲載された記事やインタビュー、アーティストたちの作品をまとめた『BUTT BOOK』が TASCHENから出版されたのを記念し、ロンドンのテート・モダーンミュージーアムのキュレーターであるStuart Comer氏がBUTTマガジンに作品を提供するアーティスト達のショートフィルムやビデオ作品を集めたものだったんですが、Wolfgang Tillmans, assume vivid astro focus, William E Jones, General Idea and Walter Pfeifferなどの作品が約2時間弱に渡り上映されました。中でも印象に残ったのは実験派映画作家/写真家のWilliam E Jonesの『MANSFIELD 1962』。 1962年の夏、オハイオ州マンスフィールドのゲイのハッテン場であった公衆便所に警察が隠しカメラを仕掛け、そこで行われた同性愛行為をを8ミリカメラで撮影し、後に"sodomy law" (男性同士の性行為を禁ずる法)違反として30人に及ぶ男性達を逮捕する際の証拠として使用された映像を編集した作品。隠し撮りされた様々な『容疑者』達の性行為場面がしばらく続いた後、その男達が駐車場などで警察に尋問される場面にカットし、最後は彼らの"mug shot"(警察に逮捕された時にまず最初に取られる写真)が次から次へと映し出されるところで終わリます。ハッテン場の公衆便所で廻りに誰もいないことををちらちらと確認しながら性行為に耽る男達の表情や、細切れにされた場面が音無しのかなり荒れた白黒の映像で映し出され、これが帰って不気味な雰囲気を醸し出してました。この他にもなかなかユニークな映像感を楽しめる作品が何本かありましたが、文章で説明する事は不可能なので省略です。アーティーなゲイの画像の世界に浸った後は近くにあるゲイバーを何軒かはしごして、ロッテルダムに戻ったのは朝の3時でした。俺は金曜日は休みだったからいいけど、ダークは仕事でかなり辛かったみたいです。ああ、これから先クリスマス、正月にかけてまた飲む機会が増えそう… 皆さんもこれから飲み過ぎ、食べ過ぎには注意しましょう!!