Pastime Paradise

2010/03/21(日)08:35

マルセル・エメ傑作短編集 / 完全教祖マニュアル

書籍・雑誌(147)

 昨夜は雷鳴に慄きつつ眠りについたが(雷がめっちゃ苦手)、今朝は未明から空はどよ~んと白く澱み、風も強かった。スーパーカブの荷台に積んでいた新聞を前かごに移そうと配達の途中で荷紐を解いた途端、強風が吹いて新聞が道路に飛んでいってしまった。普段は通行量の多い道路なので一瞬ヒヤリ。その時は運良く然程車が走ってなくて事なきを得たが、万が一、走行中の車のフロントガラスに新聞が張り付いて視界を遮りでもして事故になったら… 気を付けなきゃ。 (あ、散乱した新聞は後でちゃんと回収しましたので)  さて、3月11~20日に読んだのは新書1冊に文庫が7冊。今回はサクサク読めるものが多かった。   「完全教祖マニュアル」 架神恭介/辰巳一世 ちくま新書  多くの人をハッピーにしながら、大きな尊敬を受ける―教祖ほどステキなビジネスはほかにありません。キリスト教、イスラム、仏教などの大手伝統宗教から、現代日本の新興宗教まで、古今東西の宗教を徹底的に分析。教義の作成、信者の獲得の仕方、金集め、組織づくり、さらには奇跡の起こし方―あらゆるシチュエーションを実践的に解説した本邦初の完全宗教マニュアル。  働けど働けど一向に上向く気配など微塵もない今の生活から手っ取り早く抜け出すには、もう教祖になるしかない!と悲壮な覚悟で手に取ったみた…というのは嘘で、元々宗教に興味深々なのでタイトルに釣られて読んでみた。  「教義を作ろう」「大衆に迎合しよう」「信者を保持しよう」といった思想編と、「布教しよう」「甘い汁を吸おう」「後世に名を残そう」などの実践編があり、教祖のハウツー本というよりは面白くて分かりやすい宗教入門書といった感じ。  先程宗教に興味津々…と書いたが、どちらかというと信者さんの方に興味がある。どういうきっかけで信者になり、傍から見れば怪しすぎて仕方がない新興宗教を深く信仰するまでに至ったのか、その心の経緯を知りたいと思っている。  この本はそんな疑問をちょっとだけ解決してくれた。無宗教の方は面白く読めるだろう。  「弥勒の掌」 我孫子武丸 文春文庫  愛する妻を殺され、汚職の疑いをかけられたベテラン刑事・蛯原。妻が失踪して途方に暮れる高校教師・辻。事件の渦中に巻き込まれた二人は、やがてある宗教団体の関与を疑い、ともに捜査を開始するのだが…。驚天動地の結末があなたを待ち受けます。  この作品に描かれている胡散臭い宗教団体、その名も「救いの御手」。教祖は弥勒様と呼ばれる女性で、何やとてつもない力を持っているらしい。  と、後半までは互いに奥さんを殺された男達と怪しげな宗教団体との絡みに手に汗握って読んでいたのだが、結末は驚天動地というか無理矢理やんけ!というか…  唯一、辻夫妻の冷えすぎた関係の描写だけは感心した。なぜなら我が家の夫婦関係とあまりにも酷似しているので(原因は違うけど)。もし、だんなさんもしくは私が行方不明になっても、おそらく互いに探さないと思う…(^^ゞ  「マルセル・エメ傑作短編集」 マルセル・エメ 中公文庫  いつぞやミャンマー生まれでスコットランドの小説家・サキの短編集を取り上げたが、今回はフランスのマルセル・エメ(エイメ)の短編集を読んでみた。  不意に成長を始めるサーカス団のこびと、独軍占領下のパリの夜を行く闇屋、裏社会に身を投じる青年、場末の街路をさまよう浮浪者、上流階級の偽善、農婦が語る飼い犬たちの思い出…ユーモアとリアリズムとファンタジーによって〈良識〉を反転させる異貌の語り部エメの奇妙な魅力に満ちた世界を味わうための七つの短編。  七つの短編のうち、個人的に最も面白かったのは「ぶりかえし」という作品。1年を24ヶ月とする法案が可決され、年齢だけでなく肉体までも半分の若さになってしまう。そうなると喜んだのは人生の最高期を過ぎてしまった中高年達。職場で再び権威を振りかざしたり、色恋に溺れてみたり。  一方の若者はたまったものではない。恋愛に胸ときめかせていた18歳の女性はいきなり9歳の少女に戻ってしまったため相手の男性からは相手にされなくなるわ、せっかく仕事が認められようとしていた若者は少年になり地位を奪われそうになるわで、苦しむことばかり。果たしてこの法案の行方は?  他には、35歳になって不意に成長を始めたサーカスの小人に対し、それまでは誰もが彼に笑顔を向けていたのに普通の大人になった途端、誰からも関心を寄せられなくなってショックを受ける「こびと」が印象深い。  何でも江戸川乱歩はエメの作品性を高く評価していたのだとか。ちょっぴり分かる気がする。

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