2570489 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

Pastime Paradise

Pastime Paradise

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X
2025.03.21
XML
カテゴリ:池田可軒さん
 文久3年(1863年)から元治元年(1864年)にかけて27歳にして遣欧使節団(横浜鎖港談判使節団)の正使を務め、スフィンクスの前で記念撮影したイケメン侍として知られる池田可軒(長發)さん。
 少年時代は昌平黌に学び、成績は抜群に優秀だった――とWikiさんでも紹介されているが、可軒さんは「人間は萬巻の書を讀まなければならない」と他人に勧めているほど大変な読書家であった。
 そんな可軒さんが渡欧中に購入した書物は以下のとおりである。

 ・日本鹿兒島測量圖 (1864年巴里出版 一葉)
 ・日本下田鹿兒島測量圖 (1860年巴里出版 一葉)
 ・日本江戸測量圖 (1861年巴里出版 一葉)
 ・日本箱舘測量圖 (1860年巴里出版 一葉)
 ・日本長崎測量圖 (1860年巴里出版 一葉)
 ・佛國度量衡圖説 (一册)
 ・動植物アルバム (二十九葉)
 ・支那探檢地圖 (1860年巴里出版 一册)
 ・アッシュデュホール氏近古世界圖 (1865年巴里出版 一册)
 ・オーヅー博士解剖生理學初歩 (一册)
 ・ローパン・ジュウェー氏冒檢譚 (一册)
 ・醸造論 (1862年巴里出版 一册)
 ・工藝概説 (1850年巴里出版 一册)
 ・ドンケルクルチウス氏日本文法論 (1861年巴里出版 一册)
 ・プウエーケルチェー氏紡績事業 (1863年巴里出版 一册)
 ・佛譯四書 (道光27年出版 一册)
 ・政治的軍事的方面より見たる那翁の生涯 (一册)

 まずは鹿児島、下田鹿児島、江戸、函館、長崎の各1枚ものの測量図。測量図といえば文政4年(1821年)に伊能忠敬が中心となって作製した「大日本沿󠄀海󠄀輿地全󠄁圖」(伊能図)が完成していたが幕府が秘蔵したため、慶応3年(1867年)になって「大日本国沿海略図」(幕府から伊能図(の小図で縮尺1/432,000)の写しを入手した英国が、その写しを元に1863年に「日本と朝鮮近傍の沿海図」として刊行し、それが日本に逆輸入されて勝海舟が木版刊行したもの)や、幕府開成所が同じく伊能小図を元にした「官板実測日本地図」を出版したことにより、ようやく一般の目に供されるようになったぐらいなので当時地図はとても貴重だったと思われる。しかし日本人のごく一部しか知らなかった測量図が外国で簡単に入手できたのもおかしな話である。
 続いては仏国の度量衡図説。江戸時代の日本は尺貫法が使われていたので、この本に興味を惹かれたのも分かる気がする。ちなみにメートル法は18世紀末の仏国において、世界で共通に使える統一された単位制度の確立を目指して制定されたものらしい。1799年に仏国でメートル法が公布された際のスローガンは「全ての時代に、全ての人々に(À tous les temps, à tous les peuples.)」だったそうな。日本がメートル条約に加盟したのは明治18年(1885年)のことだった。
 探検地図や冒険譚など少年っぽさを感じさせる本もあるにはあるが、解剖生理学、工芸概論、醸造論といった専門書っぽいタイトルが並んでいる。醸造ってことはワイン作りでも始めたかったのかしらん。他には外国人の日本文法論だとか紡績事業の本だとか、那翁(ナポレオン)の伝記本だとか。ナポレオン3世(Napoléon III)に謁見して感じるところがあったのかも。
 「佛譯四書」は道光27年出版ということは中国の本なのね。上海で購入したのかな。そういえば可軒さんの蔵書には四書(「論語」「大学」「中庸」「孟子」)に関する書物が多かった気がする。岡山大学付属図書館所蔵の池田家文庫中に所在する可軒さんの蔵書目録のうち、昭和43年発行「書誌学(11-13)」に載っている岡田祐子著「池田可軒の舊藏書(1-3)」に列記されている「池田可軒蔵書目録」と「歳寒書屋珍収蔵書目録」所載の漢籍、準漢籍の合計は400点、4,400冊余という膨大な量であった。その内四書(特に中庸)関連は約100点(冊数は書かれていない)。昌平黌で抜群の成績だったというのも頷ける。
 「人間は萬巻の書を讀まなければならない」――可軒さんはまさに有言実行の人であった。

 ノート 参考文献
・小林久麿雄『幕末外交使節池田筑後守』(恒心社)昭和9年
・岸 加四郎『鶴遺老:池田筑後守長発伝』(井原市教育委員会)昭和44年
・日本書誌学会 [編]『書誌学』11-13(日本書誌学会)昭和43年
  岡田裕子『池田可軒の舊藏書(1-3)』





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2025.03.21 01:38:32
コメント(0) | コメントを書く
[池田可軒さん] カテゴリの最新記事


PR

Free Space

Recent Posts

Category

Keyword Search

▼キーワード検索

Headline News


© Rakuten Group, Inc.
X