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2025.06.07
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 横溝正史シリーズ 第1作『犬神家の一族
 放送日:昭和52年(1977年)4月2日~4月30日(全5回)

 古谷一行さんが初めて金田一耕助を演じた記念すべき作品。のっけから金田一耕助探偵事務所が入っているビルの屋上で逆立ち歩きする、当時30代前半だった古谷さんが若々しくて格好いい!

 昭和22年。舞台は信州・那須。
 「信州財閥の巨頭・犬神佐兵衛が波乱にとんだ81年の生涯を終えるところから犬神家の恐ろしい運命が幕を開ける。犬神佐兵衛は17歳の時にこの地に流れ着き、裸一貫から数十億の犬神財閥を築き上げたが、何故か生涯正式に妻を娶らず、ここに集まった一族も3人の妾の娘たちとその婿や孫たちである」
 というおどろおどろしいナレーションとともに映し出されるのは、死に瀕している犬神佐兵衛の枕元を囲む、3人の妾が各々産んだ娘である未亡人の長女・松子、次女・竹子と婿の寅之助並びに息子の佐武(すけたけ)と娘の小夜子、三女・梅子と婿の幸吉並びに息子の佐智(すけとも)の姿で、彼らは皆佐兵衛の口から発せられる遺言を待っているのであった。遺言状を預かっていると告げる古舘弁護士に早く発表するよう娘たちが促すも、佐兵衛の意思により松子の一人息子・佐清(すけきよ)が復員してから開封・発表されるとのこと。同じく佐兵衛の意思により犬神家の財産目録をこの場で発表するよう仰せ付かった古舘弁護士が長々と財産目録を読み上げる中、佐兵衛は恩人の孫ながら若くして両親を亡くして犬神家に引き取られた野々宮珠世を呼び寄せる。「斧(よき)、琴、菊…」との呟きを最後に佐兵衛は息を引き取る。
 古舘弁護士の助手であり、佐兵衛の遺言を公開前に知り得た若林さんから「近くこの犬神家の一族に容易ならざる事態が、佐兵衛翁の遺言を巡って一族の血みどろの争いが起こるやもしれず…」との手紙を受け取って那須にやって来た金田一探偵であったが、依頼者である若林さんは金田一探偵の宿泊先のホテルで毒殺された。同日、佐清復員の知らせを犬神家から受けていた古舘弁護士は改めて金田一探偵に依頼し、遺言状発表の場に同席するよう求めた。
 そして遺言状の発表当日、松子と共に現れた頭巾姿の佐清に対して息を呑む一同。本人確認のため頭巾を取るよう要求された佐清の、能面のような異様な白仮面顔にも驚愕。更に仮面の下の戦争で焼け爛れた素顔には誰もが慄きを隠せなかった。
 一同の前で古舘弁護士が読み上げた佐兵衛の遺言はというと
「一、犬神家の全財産並びに全事業の相続権を意味する犬神家の三種の家宝 “斧、琴、菊” は次の条件の下に野々宮珠世に譲られるものとす。
 一、野々宮珠世はその配偶者を犬神佐兵衛の3人の孫、佐清、佐武、佐智の中より選ばざるべからず。その選択は野々宮珠世の自由なるも、もし珠世にして3人のうち何人とも結婚することを希望せず、他に配偶者を選ぶ場合は珠世は “斧、琴、菊” の相続権を喪失するものとす。
 一、野々宮珠世はこの遺言状が公表されたる日から数えて3ヶ月以内に配偶者を選ぶこと。もし相手が結婚を拒否する場合には、その者は犬神家の相続に関するあらゆる権利を放棄せしものと認む。したがって3人が3人とも珠世との結婚を希望せざる場合、或いは3人が3人共死亡せる場合においては、珠世は第3項の義務より開放され、何人と結婚するとも自由とす。
 一、もし野々宮珠世が相続権を失うか、或いはまたこの遺言状を公表以前に死亡せる場合には、犬神家の全事業は佐清によって相続され、犬神家の全財産は公平に5等分され、その1/5ずつを佐清、佐武、佐智に与え、残りの2/5を青沼菊乃の遺子・青沼静馬に与えるものとす。但し、その際分与を受けたる者は各自の分与額の2割ずつを犬神ほうこう(奉公?)会に寄付すること」
 相続権が他人の珠世に渡ること、そして佐兵衛の愛人だった青沼菊乃の息子・静馬にも相続が及ぶと知った3姉妹の憎悪と怒りは頂点に達する。そんな中、佐武が惨殺されて生首を菊人形として晒され、絞殺された佐智の首には琴糸が巻き付けられていた。そして後日湖から二本足をにょきっと出した姿で発見された佐清らしき遺体にはスケキヨ(ヨキケス)との文字が書かれていた――。

 この放送の半年前に公開されて大ヒットした映画版「犬神家の一族」は市川 崑さんが監督と脚本を務め、金田一耕助役の石坂浩二さんや松子役の高峰三枝子さん、佐兵衛役の三國連太郎さん等の豪華出演者に加え、原作者の横溝正史さんも特別出演していたりと、とにかく豪勢な作品だったが、ドラマ版も決して負けてはいない。
 古谷さんの温かみのある演技が抜群なのは言うに及ばず、松子役の京マチ子さんの凛とした佇まいや、古舘弁護士役の西村晃さんのどこか飄々とした感じだとか、見応え十分である。
 横溝さんも原作に忠実で構成もしっかりして映画に劣らぬ豪華キャストのドラマ版にすっかり満足されたという。約2時間半の映画に比べてドラマは1時間×5回分と長い時間を取っている分、丹念に描かれていると思われる。原作未読なので詳しくは知らないけど。
 この事件を担当する那須警察署の橘署長を演じているのはハナ肇さん。ハナさんが出演した「横溝正史シリーズ」は今作だけだが、昭和58年(1983年)から放送された「名探偵・金田一耕助シリーズ」では再び古谷さん演じる金田一探偵の良き相棒としてハナさんが亡くなった平成5年(1993年)まで出演している。

 個人的には佐智を演じた松橋 登さんの出演が嬉しい。元々TVドラマにもちょくちょく出演されているのだが、松橋さんといえば昭和57年(1982年)10月から約1年半NHKで放送された人形劇「三国志」で孫権孫策趙雲などの声を担当したり、「ラストエンペラー(The Last Emperor)」で清朝最後の皇帝・愛新覚羅溥儀役を演じたジョン・ローン(John Lone)や、「愛人/ラマン(L' Amant)」「楽園の瑕(東邪西毒)」などでのレオン・カーフェイ(梁家輝)の吹替でお馴染み。
 この「犬神家の一族」での松橋さん…いや佐智は従妹の小夜子とデキていながら珠世を薬で眠らせて手篭めにしようとするも謎の復員兵が現れて失敗、挙句の果てに何者かに殺されて “斧、琴、菊” の見立て殺人の “琴” に絡めて琴糸を首に巻き付けられた状態で発見されるという気の毒な青年である。佐武が菊畑に晒された生首となって発見された際にはほんの数秒映ったぐらいであったが、佐智の死体は松橋さん自身が演じてらっしゃるので結構長く映っており、結構美形な方なので半裸死体も美しい。金に目の眩んだ底意地の悪い女である梅子役を好演している小山明子さんの美しさも相まってついついうっとりと見てしまう。 

 横溝正史シリーズで忘れられないのが、茶木みやこさんの主題歌「まぼろしの人」だ。曲も歌声も何だか地味っぽくてドラマと合っている気はしないのだが、妙に記憶に残る歌なのである。あの人は幻だったのでしょうか~♪
 まぼろしの人 - 茶木みやこ(タイトルclickでYouTubeへGo!)

 「犬神家の一族」は横溝作品としては最も映像化回数が多い作品らしい。何といっても佐清マスクと湖から突き出た足のインパクトが強すぎる!とはいえ斧で頭を割られて湖に頭から突っ込まれて無残で滑稽な死体を晒される羽目になったのは、物語の全容を知れば何度見ても溜飲が下がる。
 でもって横溝作品といえば犯人の切なくも美しい最期なのだが、この作品の犯人もそれはそれは悲しく美しいのである。金田一探偵に謎を解き明かされた犯人は「あなたが心の優しい探偵さんなので本当に助かりました。お礼を言います」と最後に告げ、橘署長に支度をしてまいりますと言って自室に籠るや紅を引き、着物に香を焚きこめ、毒入り煙草を燻らせて人生の幕を引いた。





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Last updated  2025.06.08 15:10:58
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