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悠久のムンバイ

May 15, 2005
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 インドの警察は、いろいろな意味でマスコミへの登場回数が多いようです。先日も、前ムンバイ市警察長官のシン氏と会う機会があったのですが、彼などはムンバイで発行されている英字紙「タイムズ・オブ・インディア」に写真が何度出たということもないくらいに頻繁に登場していたので、ムンバイ市民の誰もが彼の顔を知っています。
 警察官といっても、彼のような幹部クラスになると、非常に紳士です。インドの様々な不合理もきちんと認識して、それらを改善しなくてはいけないと嘆いています。しかし、その意識が警察組織全体に行き渡ることは難しいでしょう。みんな、インドの国の将来より、今日の自分の生活の方が重要だからです。

 数日前も、ムンバイ市警察の警察官が、アッと驚くような事件を起こしました。ある日の朝刊の一面に、数人の女性売春婦が裁判所から出て来るシーンを映した写真が載り、“ムンバイのジュフビーチという繁華街にあるリージェンシーホテルを警察が売春の手入れを行い6人の売春婦と2人の手配人そして2人の顧客を逮捕した”というみだしの記事が掲載されました。私は、その記事を読んだ時、直感的に“へんだな”と感じました。そもそもホテルの部屋で売春を差し押さえたなんてあまり聞いたことがありません。ホテルの部屋の中で行われている行為が売春なのか自由恋愛なのかを証拠立てるのが難しいからです。警察が乗り込むのなら、普通はホテルの部屋ではなくて、女の子を集めて売春を組織している場所に捜査をかけて乗り込みます。
 
 また一方で、ムンバイの小規模なホテルでは、確かにホテル自体が売春を経営していることもあります。2階くらいに“隠れロビー”があり、そこに行けば女の子がラインアップして、選んでそのまま上の階のホテルの部屋に連れて行くというものです。ただし、これは警察が結構厳しく目を光らせている(注:捜査による取締りというよりはみかじめ料を徴収することによる管理)をしているので、中規模以上のホテルではペイしないのでやりません。外国人観光客はあまり泊まらないような下町のホテルだけです。
 これは全くの余談ですが、中規模以上のホテルはといえば、五つ星クラスの大ホテルも含めて、“ベルボーイのチーフ(荷物係の長)”がだいたい売春を管理していると耳にしたことがあります。ベルボーイが荷物を運んできてくれた時に、「ところでさ、・・・」と話を傾ければ、だいたいセッティングしてくれると聞きました、少し割高になるようですが。

 ともあれ、リージェンシーほどのホテルが売春の手入れをされたというのは、何か不自然なものを感じたのです。そのホテルの一階にディスコがあるので、確かに若者たちが自由恋愛を楽しんでホテルを使用しているのかもしれませんが、それは売春とは無関係な行為です。
 そうしたら、やはり、数日後に新聞に出たのです、“警察の警部、警部補の2名が賄賂を要求した罪で逮捕される”と。記事を読んでビックリしました。そこまでやるか、と。

 その警察官たちは、リージェンシーホテル(1階のディスコも含めて)のオーナーにみかじめ料を支払うように要求したのですが、彼がそれを支払おうとしないので、わざわざ売春婦や顧客たちを自ら手配してホテルに送り込み売春事件を創り出しておいて、それからホテルに捜索を仕掛けたというのです。オーナーの不法行為(例えば、売春とかディスコの違法深夜営業など)に対して賄賂を要求したのではなくて、自分たちで犯罪を仕掛けておいてそれで賄賂を脅し取ろうなんてのは、暴力団もビックリの行為です。さすがに、森の猿の国の警察官です。“法”で治安を維持するのではなくて“暴力”で治安を守っているのですから。

 さてインドでは、このように汚職といえばやはりその代名詞は警察官ですが、このような事件が起きるほど、やはり警察官という特権はおいしいのでしょうか。
「はい」、そうなのです。しかし、その“特権”を警察以外の他の省庁がみすみす見逃してくれるはずがありません。おいしい蜜には、蟻だけではなくて、いろいろな虫が集まってくるのです。

 ムンバイ市には、インド人女性がサリー姿で踊るダンスバーがたくさんあるのですが、隣接しているターネ市にもダンスバーは多いらしく、政府当局が捜索をかけたという記事が最近新聞に写真入りで掲載されました。捜索の理由は、その捜索を受けた店が法律で営業が許されている午前1時30分を越えて営業をしていたために市民からの苦情があったからということらしいのですが、その記事に書かれていない部分の生臭いにおいがぷんぷんとしてきます。
 
 そもそも、このダンスバーに捜索をかけたのは、警察ではなくてマハラシュトラ州内務省当局です。州の内政を担当する内務省と警察はある意味で関係の深い組織なのですが、それだけに敵対するところもあります。以前会ったある警察の幹部がその関係について次のように言っていました。
 「20年くらい前までは、警察官の人事権は警察自身が持っていた。しかし、内務省の政治家や役人がしだいに警察の人事を握るようになり、今では警察上部や警察署長など幹部クラスのポスティングはもちろん、警部補や巡査部長のポスティングに至るまで口を出すようになってしまって残念だ」、と。
 要するに、内務大臣は政権与党の中でも一番主要なポストなので一番有力な政治家がその地位に就くのですが、それらの政治家やその者に近い人間の意見が大きく警察組織の人事に影響を持つようになってしまったというのです。簡単に言えば、それらの政治家により多くの賄賂を支払った警察官がよりよいポストに就くことができるというのです。
 
 警察の幹部たちも、かれら政治家に逆らえば次はとんでもないポストへ左遷されてしまうので聞かざるを得ません。グジャラート暴動で、警察幹部がモディ首相率いるBJP党の言いなりになった背景には、このポスティングの事情もあるのです。人事権を警察自身が取り返さないことには、警察はただ単なる政権政府の暴力装置になってしまって、警察官たちの意識からは治安維持の使命感は消えて、汚職と欲望に支配された政治家たちのための組織へと堕落の一途をたどって行ってしまうのです。

 今回のダンスバーの捜索にしても、ダルダ州内務大臣がじきじきに現場に出向いて捜索を指揮する念の入れようです。ダルダ州内務大臣が捜査を指揮している写真が新聞に掲載されているということは、内務省が新聞記者に事前にコンタクトを取り、その捜索に新聞記者を同行したということでしょう。そうして写真入りで記事を書かせることにより、内務省の力の誇示をしようとしたに違いありません。選挙民と警察に対するアピールです。
 記事の中にも掲載されるように、内務大臣はわざわざはっきりと言っています、「この捜索は、ダンスバーだけに対するものではない。時間外営業を見逃す代わりに店に“みかじめ料”を支払わせていた地元の警察に対するものでもある」、と。こうして、警察に対する打撃を加えて優位性を確保し、さらに警察の人事権をより内務省が握ることにより、ポスティングに対して警察官から賄賂を受け取ることのできる体制を強化することができるのです。

 内務省は、この捜索により、2カ所からのみかじめ料を得ることができるようになります。ダンスバーと警察官からです。警察官たちからのポスティングに対する賄賂の額はさらに増え、さらにダンスバーからの甘い汁も加わったのですから、一挙両得、“一粒で二度おいしい”グリコのキャラメルのようです。わざわざ新聞社を現場まで連れて行って、写真を撮らせた甲斐があるというものです。
 内務省はこの日5カ所のダンスバーを捜索しました。これで、今後一年は左うちわで過ごすことができるいい成果を上げたことでしょう。それに、お金だけではなくて、きっと、彼らは、店の中でも極上の女性たちを“捜査資料”として、店の幹部たちの任意の提出により“お持ち帰り”になったに違いないのです。
 かわいそうなのは、ダンスバーです。これからは、地元の警察だけではなく、内務省関係者に関しても「みかじめ料」を支払わなくてはならなくなってしまいました。まったく、踏んだり蹴ったりです。
 
 それにしても、警察組織はだらしなさ過ぎます。警察も賄賂捜査課を持っているのだから、バンバンと内務省の政治家や役人の汚職を挙げてやれば、警察の力も取り返せて、人事権も帰ってくるのです。まあ、インド人なんて、大部分は自分が良ければそれで良いのだから、内務省の偉い役人とつるんで、一緒に甘い汁を吸わせてもらい、警察組織のいいポストに就けてもらう方がいいに決まっているのでしょうが、情けない。
 警察の権威の回復のために、自分の地位を投げ捨てて闘うという警察官は出てこないのでしょうか。インド警察、がんばれ。政治家なんかに負けるんじゃない。






Last updated  May 15, 2005 07:35:21 AM
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