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悠久のムンバイ

May 22, 2005
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 “やっぱりまたか”と言うしかないこのインドの原始的民主主義。すばらしすぎます。これだけ発展してないと少々の異変には揺るぎもしないでしょう。世界が滅んでもインドだけは必ず生き残ることができるに違いありません。
最近の朝刊の一面は、マハラシュトラ州の現コングレス政権の行方を左右するほどの汚職事件に毎日大揺れです。

 そもそもの端緒は、約750億円ともいわれる巨額の印紙偽造事件で逮捕されて拘留中であった主犯テルギ被告が、警察幹部や有力政治家に多額の賄賂を渡して、その罪を逃れようとしてことにあります。その後、この事件は、マハラシュトラ州のブジュバル州副首相及びムンバイ市警察シャルマ警視総監などを巻き込む大事件へと発展してしまったのです。
 今年12月には冬季州議会開催が控えているので、この事件がその場で与野党攻防の重要議題となることは間違いがありません。来年には州議会議員選挙が控えていることもあり、野党のシブ・セナ党は、“コングレス党は汚職まみれで腐敗している”ということをスローガンにして、どんどん攻勢を掛けきそうな勢いです。

 この事件の背景となっている巨額の印紙偽造事件も非常にインドらしい事件です。主犯のテルギ被告は、元々は南インドの貧しい家庭の生まれです。成人してからムンバイに来て、旅行代理店やホテルなどで働いていたのですが、些細な詐欺の罪で1991年に逮捕されました。その収監中に、印紙などを偽造する専門家と知り合ってその道に進んでいったのです。

 その後、政府が発行する収入印紙や郵便切手などの偽造をしていた1995年、テルギ被告は再び逮捕されました。しかし、不思議なことに(まあインドでは不思議でも何でもなくて当たり前のことなのですが)、この時、ボンベイ高等裁判所がテルギ被告の保釈拒否の決定をしているにもかかわらず、結局彼は何の罪に問われることなく自由の身となっているのです。裁判は途中止めのままで保釈されているので、実質的には無罪と同じことになっています。要するに、弁護士を通して、裁判官と警察(検察)側に賄賂を渡して、事件をつぶしてしまったのです。でも、インドではこの種のことはよく耳にしますので、別に珍しいことではありません。

 このことがテルギ被告の犯行をさらに大胆にさせたようで、彼は刑務所から出た後、今度は、実際に政府の印紙印刷所で使用されている機械を入手することを計画しました。何せ、実際に本物の印紙を作っている機械ですから、偽造と言っても本物と同じ品質です。その方法は、その政府の印刷所で働いている政府役員に賄賂を渡しておいて、“故障して使用不能だから処分する”という虚偽の理由を作り上げてもらい、実際にはまだ使用できる機械を買い下げるというものです。だから、テルギ被告が“本物と区別が付かない精巧な偽造印紙”を製造していたと言ったって、当たり前です、本物なんですから。パキスタンのパスポートみたいなものです。実物は本物だけど、製造する過程や中身が偽造なだけです。そして、1998年にはオーストラリアから約300台の中古の印刷機を大量に輸入して、同じ技術を使って巨額の印紙偽造を行うようになったのです。

 まあそれだけ大々的にやれば、その土地の暴力団も黙っていないことでしょうが、彼には、かの有名な暴力団ダウド・イブラヒムが付いていたようです。ムンバイ市警察のしがない警察官の息子のダウド・イブラヒムとこの国鉄職員の息子テルギ被告は意気投合する何かがあったのかもしれません。

 しかし、1999年10月、ついにテルギ被告の仲間の家に警察の捜索が入り、そこからその偽造印紙の一部(約2千万円相当分)が発見されました。でも、その時もテルギ被告は逮捕を免れました。たぶんまた賄賂を使ったのでしょう。警察も、彼から賄賂をもらうために、形だけの捜索を実施したようです。偽造印紙を製作した機械などはわざと押収しませんでした。現在この事件を捜査している捜査官は、「もしその時に彼の機械が押収されていたら、この事件もその時点で駆逐されていただろう」と述べています。確かに、そうしていれば何百億もの偽造事件にまではなっていなかったかもしれません。
 まあ、でもそんなことをいえば、1995年の時に、きちんと裁判をせずに刑務所から逃してしまったインドの裁判所や検察当局が悪いのです。やっぱりインド全体が腐っているのです。結局、最終的にテルギ被告が逮捕されたのは、2001年10月になってからでした。

 この事件が世の中の脚光を浴びるようになったのは、去年の2002年6月になってからです。2,200クロールピー(約550億円)相当もの偽造印紙が捜査当局により押収されたことから事件が大きくクローズアップされるようになりました。
 そして、この事件が単なる偽造事件としてだけではなくて、警察や政治家を巻き込んだ汚職事件へと発展する端緒となったのが、その年の10月、当時のプーナ市警察のシャルマ警視総監(現ムンバイ市警察警視総監)が、プーナ市内にある警察署に被害届が出されたテルギ容疑者に対する偽造事件の捜査を意図的に遅らせたという職務怠慢の責任で、当時彼の部下であったムシュリフ警視から告発されたことが発端です。この告発に基づいて、マハラシュトラ州政府は特別捜査チーム(Special Investigation Team: SIT)を組織しました。

 半年後の今年4月、シャルマ警視総監とその部下2名についての特別捜査チームSITの調査報告書が政府に提出されました。マハラシュトラ州政府のブジュバル州副首相は、この調査報告書に基づき、その部下2名に対しては停職処分としたのですが、シャルマ警視総監は潔白だったとして、何の処分も下しませんでした。
 調査報告書の内容はわからないのですが、報道によれば、テルギ被告の妻や家族がこの事件で逮捕されないようにするために、この部下2名がテルギ被告に3クロールピー(約7500万円)の賄賂の要求をして、15ラックルピー(約375万円)を受け取った疑いがあるとの報告だったのではないかと言われています。そして、プーナ市警察にいた当時の警察官によれば、警視総監のシャルマ氏は、この両名と“3人だけの特別な会合”をたびたび持っていたとのことなので、シャルマ警視総監がこの両名と共謀していたのではないかという疑惑に油が注がれているのです。

 そもそも、シャルマ警視総監とブジュバル副首相の仲は“通々”のようです。昨年10月に部下の告発を受けたシャルマ警視総監を、3ヶ月後の今年1月にムンバイ市警察の警視総監へと大抜擢したのはブジュバル副首相です。他にも有力候補がたくさんいたにもかかわらず、極めて不自然にシャルマ氏を抜擢しました。この時も、新聞は、「賄賂による取引レースだ」と書き立てました。
 もし、上記の部下2名が逮捕されれば、彼らは“もらった賄賂の中からシャルマ警視総監へもお金を渡した”と自白してしまう可能性がありますし、そうすれば、シャルマ警視総監が逮捕されるのはもちろん、ブジュバル州副首相の関与も浮上してしまうかもしれません。ですから、ブジュバル州副首相も、彼ら二人を停職処分にはしたもののそれ以上の行動は取れず、彼らは逮捕も何もされずに半年間そのままです。インドの得意“犯罪握りつぶし作戦”でしょう。インドでは、犯罪自体も賄賂取引の大切な要素です。

 しかし、こんなインドでも、若干の正義はあるのです。あまりの政府と治安当局の腐敗に業を煮やした社会の有識者が立ち上がったのです。今年7月、社会活動家のハザレ氏が、この偽造事件に対する警察捜査の解明を求めてボンベイ高等裁判所に“公益提訴(Public Interest Litigation)”を行いました。この公益訴訟制度こそがインドが最後の砦とする正義達成のための手段です。高い社会見識を持つ市民が、政治社会改革を達成するために、裁判所に対して公益提訴に訴えるというインド憲法の保障する制度です。裁判の公正さ、公害をまき散らす工場の閉鎖、汚職捜査の捜査機関に対する監視などを求めて提訴することが出来るのです。

 このハザレ氏の公益提訴を受けて、今年9月、ボンベイ高等裁判所は特別捜査チームSITの総括監督者として元マハラシュトラ州警察長官のプリ氏を任命するという行動を起こしました。元々、SITを組織したのはブジュバル副首相ですので、今までは彼の息がかかっていて彼の意に反する行動は取れなかったとも言えるのですが、プリ氏が最高責任者として任命されたことで、SITチームが清廉潔白な組織として再スタートがきれたのです。ただ、元警察官のプリ氏がどこまで積極的に警察の汚職に切り込むことができるのだろうかと疑問だったのですが、その不安は杞憂でした。その切り込みはF1並みの鋭さでした。

 この11月に入って、特別捜査チームSITは、マハラシュトラ州警察幹部ワギル警視正を73ラックルピー(約1800万円)の賄賂をテルギ被告から受け取った罪で逮捕しました。去年3月から今年3月までの間、ワギル警視正はムンバイ市警察犯罪局長だったのですが、その時に、この事件を積極的に捜査しないようにすること及びテルギ容疑者を刑務所に拘留する代わりにホテルや彼のアパートに宿泊させることなどをする見返りとして、部下のカマト警部補(逮捕済み)を通して賄賂を受け取ったという容疑で逮捕されたのです。
 また、それと前後して、SITの総括監督者プリ氏は、シャルマ警視総監を2日間にわたって呼び出し尋問を行いました。シャルマ警視総監については、SITの調査報告書が改めて作成されるようです。シャルマ警視総監は、先月にはマハラシュトラ州警察へと昇進する予定だったようですが、それも見送られてしまいました。

 また、報道は、警察幹部のポスティングの権限を持つ内務省の長であるブジュバル州副首相兼内相が実質的に上記「シャ」警視総監やワギル警視正を現在のポストへと任命を行っていたことから、その任命の過程で何らかの不正があったのではないかと憶測をしています。

 さて、野党シブ・セナ党は、警察組織に腐敗が蔓延している監督責任という観点からも、ブジュバル州副首相に政権からの離脱を求めています。そして、ファザル州知事に対しては、州当局の捜査だけでは疑惑解明は難しいので、インド中央捜査局CBIがこの事件の捜査に乗り出すように依頼をして欲しいとの要求を行っています。

 しかし、ある知り合いのインド人は言っています、「そもそもそれらすべてが彼らの中では出来レースだよ。シブ・セナ党の党首バル・タカレーが“コングレス党は汚職まみれだ、我が党にはそんな者は一人もいない、コングレス党は政権党にふさわしくない”と強調したところで、誰もそんなことは信じてない。コングレス党と比較すればシブ・セナ党は汚職率は低いのかもしれないけど、やっぱり大多数は多かれ少なかれ汚職にまみれているのだからいっしょだよ」、と。

 来年の選挙までは、戦術として、シブ・セナ党も「断固とした捜査ですべてを解明させるべきだ」と叫んで闘うかもしれませんが、でも決してムンバイ市警察警視総監のシャルマ氏まで逮捕したり、ブジュバル州副首相を逮捕したりまではしないことと思われます。もし仮に来年の選挙で政権を取った時に、あまりにもやりすぎたために、警察側から反撃を食らったりコングレス党から攻撃されれば、それこそ大変です。

 そのインド人はこうも言っています、「選挙が終わったら事件も終わりだよ。ちゃんちゃんと手を打って、みんなが裏で握手をして終わり。政治家はみんな裏でつながっているんだから、」と。いいなあ、その感覚。






Last updated  May 22, 2005 10:50:35 PM
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