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悠久のムンバイ

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Jul 7, 2005
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○ 帰国して思うこと

 明治後期の一九〇〇年前後、ムンバイ(ボンベイ)には三千人以上の日本人が暮らしていました。現在、ムンバイで暮らしている日本人在留者数が約二百人ですので、その時の方が比べるまでもなく多くの日本人がいたことになります。当時のムンバイは英国の支配下にありましたので、ムンバイの町はロンドンに負けないくらいの近代的な町でした。

 今でも、その当時の写真がたくさん残っています。西洋風のモダンな建物群の街並みの中で、正装に身を固めた紳士や淑女が通りを歩いています。広くて、きれいに整備された通りを路面電車が走っています。その当時、まだ明治時代の日本と比べれば、インドのムンバイは遙かに先進都市だったのです。私の母親に言わせれば、子供のころに「インド」と聞けば「モダンな国」というイメージがしたと言うのですから、確かにボンベイの街は進んでいたのでしょう。

 そのモダンなボンベイが、一世紀後にこの悲惨なムンバイになるとは、だれが想像したことでしょう。もし、当時暮らしていた日本人が現代に現れて、このムンバイの惨状を見たとすれば、驚嘆することでしょう。良くなるどころか、巨大なスラム都市へと化してしまったのですから。今のムンバイを表現すれば、空港の周辺にスラムがあり、都市の人口の半分がスラムに住んでいるというよりは、都市全体がスラムであるといった方が遙かに当てはまります。高級住宅地と呼ばれる地区でさえも、路上脇にはスラムのような住居が建ち、何の臭いか分からない不思議な悪臭が留まるところを知らずに漂っています。

 インドに行った経験のある日本人たちの間でよく言われることですが、インドを訪れた日本人は、インドが好きになるか嫌いになるかのどちらか両極端で、中間という人はいないと言われます。それは本当ですが、好きになる人は、ほんの一握りだけです。あのインドの生活環境とインド人の独特な性格から考えれば、当然のことです。日本人とインド人の基礎的な性格から考えて、絶対に相入れるはずがありません。相手のことを配慮せず自分のことしか考えないあのインド人独特の性格が、日本人と合うはずがないのです。本当に、インドに長くいればいるほどインド人のことが嫌いになれるという、素晴らしい国です。

 日本の企業が中国には大々的に進出するのに、インドに進出しないという要因は、その辺りに大きな原因があります。中国が“地理的”に近くてインドが遠いというのではありません。遠いのは、“国民の性格”と“生活環境”の距離なのです。決して、地理的な距離ではありません。

 日本人と距離のある一つ目の“国民の性格”というのは、具体的にどういうことかと言えば、インド人が心底怠け者で、自分にとって、とても興味のあること以外は決して自分からは努力をしないという人間性と、時間も約束も守ろうとしない、悪いことはすべて世の中と他の人のせいにしてしまうという、極めて自分に都合良くできた責任感のことです。企業としては、従業員として、こんな国民の労働力を雇っても品質管理何てことはとてもできませんし、一方、共同経営のパートナーとしては全く信頼ができないので、安心して資本を投資することができないです。

 確かに労働力は安いのですが、幾ら安くても、製品ができあがるまでの時間、不良製品の発生する比率、できあがった製品の品質などを考えれば、いわゆる「安かろう、悪かろう」であり、他の企業の商品と比べて「売れる商品」を作ろうとすれば、労働管理から組合対策、経営の運営から商品管理まで、本当に途方もない努力をインドでは要するのです。

 そして、もう一つ、日本が中国に進出する大きな理由が“生活の環境”です。その中でも一番大きな要素が「食事」です。その国の街の中に、おいしく食べられる食事があるということは、大きな理由になります。企業としては、その国に進出するためには、多くの従業員とその家族を送り込まなければいけません。従業員や家族の人たちに喜んで行ってもらうためには、街中でおいしい食事が安心して食べられるということは、本当に大きな要素なのです。しかし、こればかりは、日本の企業がどうすることもできません。その国の文化ですから。

 喉が焼けるほど辛くて、油がベトベトのインドのカレー、お尻を拭いた手で食事を作る、不衛生なことこの上ない環境、埃まみれの街に漂う訳の分からない臭い、まあ普通の日本人なら中国で中華料理を食べている方がいいに決まってます。要するに、“国民性と食事”が企業の立地には大切なのです。その証拠に、地理的にも遠くて、それほど大きな商売上の魅力があるとは思えないタイには、五万人以上もの日本人が在留しています(バンコクには、企業が進出しても、喜んで男性社員が行ってくれる、もう一つの大きな要因がありますが、まあ、それは、それとして)。

 結局、総合的に考えれば、日本で生活することが一番です。仮に病気や大けがをして病院にかかったとしても、仮に犯罪に遭って警察を頼ることになったとしても、一方で子供の来るべき未来を考えても、やっぱり日本が安心です。
 「もう一度、何年間かインドに行くか」と聞かれれば、まず間違いなく行きません。私は、他の人と比べてもインドが好きな方だと思いますが、もうインドに行って、生活したいとは思いません。本当に、インドは地上“最後”の楽園ですから。

 日本に帰ってきて一か月が経ちました。四年間もインドにいたというのと比べると、まだ一か月しか経っていないのに、もうインドでの出来事は、遙か遠い過去のようです。何か、インドでの生活は前世の出来事であって、インド人が信じている輪廻転生の世界を現実に体験して、第二の人生を生きているとでもいうような不思議な感覚に陥ってます。しかし、またいつか、こんなインドでも、「行ってみたいなあ」と本当に感じる時が来ることでしょうか。

 インドでの四年間、いろいろなことがありましたが、大きな病気にかかることもなく、夫婦喧嘩をしながらも、家族が多くの時間を一緒に共有して、仲良く幸せに過ごせたことをインドの神様ガネーシャに感謝したいと思います。ダニヤワード。





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Last updated  Jul 8, 2005 12:03:02 AM
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