2005/05/20(金)09:10
不思議な世界(その101)
予知の不思議2
正木和三や茂在寅男のケースは、自分とは直接関係のない事故や出来事に対する“予知”であったが、自分の身の上に起こる危険を予知したケースは、これまでにも世界中で報告がある。宮城音弥の『超能力の世界』(岩波新書)には、いくつかの興味深い予知の例が紹介されている。
それによると、1881年1月、アメリカ陸軍のマックゴウワン大尉は、子供たちを劇に連れて行こうと思い、前日に切符を買った。ところが観劇の当日、頭の中で声が聞こえるようになった。その声は「劇場には行かぬがよい。子供たちは寄宿舎に帰らせるがよい」と言う。その声は段々と強くなり、マックゴウワンはとうとう観劇を取りやめた。その劇場が火事になり、305人の命が奪われたのは、まさに彼らが劇を観ようとしたその晩のことであった。
1912年3月23日、その男はニューヨーク行きの豪華客船タイタニック号の切符を予約した。当時、世界一といわれたタイタニック号の処女航海は4月10日だった。ところが出発の10日前ごろ、彼は夢を見た。それは、その船がひっくり返って、旅客や船員がその周りを泳いでいる夢だった。翌日も同じ夢を見た。不安を覚えたその男は、切符を払い戻してもらった。
タイタニック号は4月10日、英国サウザンプトンを出港。4月14日午後11時40分ごろ、北大西洋上で氷山に激突して、15日午前2時20分ごろ沈没、1500人以上の人が犠牲となった。
こうした事例は、いわば危機回避の予知であった。日本でも、危険を知らせてくれたり、普通では知りえないことを教えてくれたりする「虫の知らせ」という現象は昔から多く報告されており、枚挙に遑(いとま)がないほどだ。
私の中学時代の家庭科の先生にも、同じようなことが起こったという。普段はかなり厳しい先生で、無駄口などたたけない雰囲気があったが、一日だけ授業中に自分が体験した不思議な話を披露したことがある。その中のひとつに、やはり「虫の知らせ」があった。ある大きな列車事故があったが、その列車に乗ることになっていた先生は、乗る前に「乗るな」という声を聞いたので乗らなかったのだと話していた。
こうした声や夢は、おそらく未来を予知したものなのだろう。まさかと思う人も多いだろうが、実はこれと同じような現象は、日常的に私たちにも起きているともみることができる。たとえば、「うわさをすれば影がさす」という言葉があるが、「あれは影があるから、うわさをするのです」と秋山眞人は言う。皆がある人のうわさをしていると、当人がそこへひょっこり現われるという現象が「うわさをすれば影」であるが、その人のうわさをするのは、その人が自分たちに近づいてくるのを事前に察知するためであるといのだ。
おそらく、この現象に予知のメカニズムの謎を解く鍵があるのではないか。明日はそのメカニズムに迫りたい。
(続く)=文中敬称略