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「ハウルの動く城」――アイドルから「主人公」へ。ハウルのレベル・アップ (2005.7)
『魔法使いハウルと火の悪魔』を再読しました。2度目は、映画を思い出しながらじっくりと。
原作はファンタジー的な舞台、小道具、筋立てをうまく使いながら、でもあくまでテーマは“ソフィーの恋”。女性作家ならではの少女漫画な(これ決してけなし文句ではありません、本質がピュアだということです!)物語でした。
どんなにうぬぼれ屋のダメ男くんであろうと、その実力と笑顔があれば、ハウルは理想の王子さま。90歳の老婆でも恋するほどの。
宮崎駿監督のすごいところは、このベタベタな性格と魅力をそのままに、自分の描き続けていることをしっかりとハウルにプラスして、しかもそれが破綻なく、かえって原作ハウルよりぐっと人間的に深みを増した宮崎ハウルがちゃんとできあがっているところ。
その一つが、空を飛ぶハウル。自由に空を飛ぶことは、宮崎アニメ永遠のテーマですよね。
それから、戦争。たぶん、(私にはわかりませんが)あの世代の人たちは、原体験として、描かずにはおれないのでしょう、美しい空をうめて飛来するぶきみな飛行機群、それを見上げて右往左往するしかない地上の人々の無力さを。
黒い色に合わせたドアの通じる世界を、ハウルの現世的逃げ場ではなく、ほんとうに真っ黒な戦争のただ中にし、そこでのハウルを宮崎さんのオリジナル・キャラとして創ったこと、その怪鳥じみたハウルをも愛すソフィーを描いたこと、これが映画のハウルを「主人公」級にしていると思います。
…少女のアイドルから人間的な「主人公」へ。これってやっぱりキムタク?
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