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テーマ:お勧めの本(7722)
カテゴリ:これぞ名作!
私の最も尊敬する人物であるドリトル先生と、その物語の魅力をあげればきりがありませんが、長いシリーズものとしてすばらしいのは、いろいろな物語のジャンルがいれかわりたちかわり現れて、読者を飽きさせないところでしょう。
それは作者ロフティングのチャレンジ精神の表れだと思いますが、子どもだった私は、おかげで文学のいろんなジャンルに一通り触れることができました。 1巻『アフリカゆき』の語り出しは、おとぎ話風。細かな描写はあまりなく、さくさくと話が進む。 アフリカへの旅は、もちろん大英帝国の海洋ロマン。海賊との対決も楽しい。しかし、黒人の国ジョリキンキで、作者は帝国主義にクギをさすことを忘れず、王さまにこう語らせている。 「…ひとりの白人が、この国へやってきた。わしはその男に、たいへんしんせつにしてやった。しかるに、その男は土に穴をあけて金を掘り、象を殺して象牙をとり、こっそりとじぶんの船で逃げ失せた。――『ありがとう』ともいわないで。」 ――『ドリトル先生アフリカゆき』 2巻『航海記』の語り出しは、叙情的。「沼のほとりのパドルビー」の町の描写は、ディケンズの『大いなる遺産』を思い出させる英国ならではの古い町と湿地と港がすばらしい。 それから、少年トミーが海へ出る成長物語。合間には、「犬を裁判の証人にしたら」とか、「闘牛をやめさせよう」とか、続巻に多く出てくる、ドリトル先生の(=作者の)とっぴだが一理ある社会改良案のさきがけが見られる。 クモサル島では、先生が王様になって偉業が叙事詩になっているし、漂流島が海底におちつくあたりは、空想科学的。 3巻『郵便局』は、社会改良の試みが大々的に繰り広げられる。鳥の通信網、天気予報、遠隔地の動物たちの通信教育など、いかにも十九世紀的、大規模で楽天的な発想が楽しい。 とちゅうには動物たちが順番に語る物語が挿話的にあり、『動物園』での「サロン文学」の試みへとつながっていくようだ。 最後のノアの洪水を語るカメのドロンコは、聖書文学への第一歩。これは『秘密の湖』で本格的に語られる。 4巻『サーカス』でも、社会改良のチャレンジは、「引退した馬の会」結成や、「キツネ狩りに対抗するキツネ用救命袋」など、折にふれて続く。真ん中に挿入されるオットセイのソフィーの脱出・逃亡劇は、手に汗にぎる活劇で、ちょっとロードムービーにも似ている。 6巻『キャラバン』前半は、カナリアの伝記。そしてオペラの試み。もちろん「動物広告」「犬骨銀行」などの社会改革も忘れない。 (5巻は次の日記です。) つづく! お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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