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HANNAのファンタジー気分

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July 5, 2006
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テーマ:お勧めの本(7200)
カテゴリ:これぞ名作!
エルマーとりゅう 『エルマーのぼうけん』の続編です。この巻では、子ども部屋のごっこ遊びっぽかった第1巻からかなり成長して、海の冒険ロマン的な物語が展開します。

 第1巻のご紹介でエルマーの年齢を9歳と書きましたが、じつは年齢がはっきり分かるのはこの2巻になってからです。
 1巻めではエルマーは、ねこに言われるがまま冒険の準備(遠足レベル)をし、言われたとおりの道筋をたどってりゅうを助けだします。トラやライオンなどに対しては知恵を働かせてうまくだましたりしますが、本気で恐怖をおぼえたり不安になったりすることもなく、9歳よりまだ幼い感じさえします。

 けれど2巻めのエルマーは歳相応に成長しているように思えます。
 たとえば、帰路で嵐にあうところでは、本当の絶望や恐怖とたたかいます。

  エルマーは、目をとじて、ちからいっぱい、りゅうにしがみつきました。それから、「ないちゃいけない、うちのことも、おもいだしちゃいけない」と、じぶんにいいきかせました。
                 ――R・S・ガネット『エルマーとりゅう』わたなべしげお訳

 それから、りゅうとの友だち関係。嵐の後、動けなくなったりゅうに対するエルマーの思いやりは、なかなかすてきです。

  エルマーは、ぐるりとまわって、りゅうのあたまのほうへあるいていきました。そして、りゅうのなきべそがおに、きがつかないふりをしました。 ――『エルマーとりゅう』

 彼は自己嫌悪に陥っているりゅうをなぐさめ、体をほぐすのを手伝います。それからりゅうを休ませておいて、自分だけ無人島探検にでかけ、りゅうの食べ物をさがして運んでやります。友だち思いで、しっかり者のエルマーくんですね。

 さて、地図もなくねこの教えもなく、独力で積極的に未知の世界を探検するのは、不安だけれどわくわくするような面白さもあります。見返しについている地図も、1巻と2巻ではだいぶ違います。1巻では登場者すべてがえがかれ、そのいちいちに説明文もついていました。けれど、2巻では地図は絵だけになり、主要地点も絵とは別に箇条書きにされているだけで、読者は自分で物語に出てくる場所を地図からさがして、エルマーの足跡をたどっていかねばなりません。

 そして、宝探し! 海の冒険ロマンの大定番ですね。海賊の宝ではないようで、あけてみると実用的な食器や種子などが入っている宝箱ですが、とにかく、エルマーとりゅうはお宝を見つけます。
 そして、大事なのは、この巻でもやっぱりエルマーは、家と家族のことを考えていることで、最後には、おとうさんの誕生日に金貨を、おかあさんには時計をおみやげにします。
 こんなプレゼントを持ち帰るなんて、エルマーはなんと大人になったことでしょう。もう本物の探検家です。そして、最後の方にある見開きの絵、エルマーの家の居間の暖炉の前で、あの老ねこがソファに寝そべっています。
 旅行家だったねこが家に落ち着き、家庭しか知らなかった子どものエルマーが大旅行をして宝をたずさえて帰ってくる。ねことエルマーの表裏一体の関係を、おかあさんはちゃんと分かっているようで、

  「エルマー、おまえがいなくなったつぎの日、このねこが、またきたんですよ。そこで、おかあさんは、かんがえたの。『エルマーは、このねこをかわいがっていたわ。だから、こんどは、わたしが、だいじにしてあげなくちゃね』って。」 ――『エルマーとりゅう』

 エルマーのかわりにねこを家において、彼の帰りを待っていたらしいおかあさん。息子の独り立ちを、こんなふうに見守り支えてあげられるおかあさんも、成長したのかもしれません。
 そして、みかんばかり食べていたエルマーは、この巻の最後ではごちそうを求めて冷蔵庫へ走ります。彼にとってのごちそうは、我が家の食事でした。





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Last updated  July 5, 2006 09:57:58 PM
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