全て
| カテゴリ未分類
| 近ごろのファンタジー
| 絵本の読み聞かせ
| ちょっとなつかしのファンタジー
| おうちのまわりの四季
| これぞ名作!
| 映画と原作
| お気に入りコミックス・アニメ
| かるいノリで古典を
| 気になる絵本
| ファンタジックなSF
| Hannaの創作
| ファンタジックな音楽
テーマ:お勧めの本(7204)
カテゴリ:かるいノリで古典を
「第2編」つづき。
大魔術師マイケル・スコットの墓から魔術書を手に入れたデロレインのウィリアム。 死者の手から書物を取るとき、何やら死せる魔術師が眉をひそめたように見え、彼はぞっとします。元通り墓穴を閉じると魔法の光がなくなってあたりは暗闇となり、ウィリアムと老修道士はめまいを覚え手探りしながら急いでその場を去ります。そのあいだにも、むせび泣き、あるいはあざ笑うような、人外の魔物たちの声が修道院のあちこちに響きわたっていました。 ウィリアムはふところにおさめた魔術書が胸を圧迫するのを感じて、聖母マリアへの祈りをつぶやきながら、ブランクサム城への帰途につき、再び馬を走らせます。 一方、彼を見送った老修道士は、自分の庵室に戻ってひたすら祈りますが、翌日の正午に仲間の修道士が見つけた時には、十字架の前に倒れて死んでいました。 ここで場面は変わって、テヴィオット川のほとり、ブランクサム城の美しい夜明け。朝の光に咲く野ばらの花より愛らしく、すみれよりなお青白い乙女がひとり、眠れぬ寝床から起き出します。彼女はブランクサム城主である奥方の娘、マーガレット。 何ゆえ、うるわしのマーガレットはそんなに早く起きるのだろう? 何ゆえそんなに急いでスカートをはき、 絹のひもを結ぶとき、彼女のほそい指は、 何ゆえそんなにふるえるのだろう? 何ゆえ彼女は秘密の階段を下りながら、 立ち止まっては辺りを見回すのだろう? ――サー・ウォルター・スコット「最後の吟遊詩人の歌」第2編より第298~303行(訳はHanna) マーガレットは母親(奥方)に気づかれぬよう、こっそり裏門から外へ出て城近くの緑の森へ向かい、さんざしの木の下で、恋する相手であるヘンリー・クランスタウン男爵と会うのでした。彼はすばらしい騎士でしたが、ブランクサム城のスコット一族とは血で血をあらうような対立を続けているカー一族の味方の家柄なのです。それゆえ、 「私はあなたの足もとで死ぬかもしれないが、あなたを愛することをやめはしない」と彼が誓えば、「それなら私も清い乙女のまま死にます」と彼女がこたえる、そんな若い二人の語らいもつかの間。少し離れた場所でクランスタウン卿の馬と武器をあずかって見張りをしていた、彼の小姓(これがまた、奇怪な小人なのです)が合図をし、恋人同士は急いで離れます。 その時はもう、誓い合ったりため息をついたりするいとまもなく、 うるわしのマーガレットは、はしばみの木立をぬけて 驚いたじゅずかけ鳩のように逃げていった。 小人の小姓があぶみを握り、手綱をあやつるや、 クランスタウン卿は軍馬に飛び乗った。 そしてこの朝の思い出にひたりながら 緑のさんざしの間を、東の方へ馬を駆っていった。 ――サー・ウォルター・スコット「最後の吟遊詩人の歌」第2編より第409~415行(訳はHanna) 「第3編」 馬上で甘い思いにひたるクランスタウン卿に、小人の小姓は再び危険を知らせ、彼は急いでかぶとをつけます。 そこへ丘を下り、連銭葦毛の軍馬に拍車を入れて、まっしぐらにやって来たのは、夜通し馬を走らせ続けてようやく城へと戻ってきたデロレインのウィリアムでした。馬は汗と泥で汚れ、彼自身も疲れ果てた様子です。 ウィリアムとクランスタウン卿。たちまち相対する、かたき同士!(つづく) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
September 24, 2006 10:45:56 PM
コメント(0) | コメントを書く
[かるいノリで古典を] カテゴリの最新記事
|