2007/12/31(月)22:09
『お正月さまござった』――忘れられた神さま
大晦日にふさわしい絵本といえば・・・、
今月の5年生の読み聞かせにとりあげた、『お正月さまござった』はいかがでしょう。“お正月さま”というのは、大晦日の晩にやって来てお餅を配って回る年神(としがみ)様のことです。絵ではみずらに結った髪にヒゲ、勾玉の首飾りなどつけて、七福神とか福の神とかに似た、いかにも古風ないでたち。
そんな神様が現代の町にやってきますが、子供たちはサンタクロースのことは知っていても、お正月さまなんて知らないので、神様は誰からも招かれず、とぼとぼ歩いています。このくだり、ちょっとつらいですねえ。
昔はお正月というと一つ年をとるので、子供たちにとっては今の誕生日と同じように、個人的にも重要でおめでたい行事だったのでしょう。でも今は、クリスマスの方が豪華なプレゼントがもらえてケーキも食べるし、お正月はごちそう食べてTVの特番を見て大笑いして、お年玉をにぎっておもちゃ屋さんへGO! みたいな感じで、どうも、心静かにあらたまって・・・という清らかさがありません。
この本のお正月さまは、1軒だけ、お正月さまを迎える歌を歌っている家を聞きつけて、そこへ出かけます。でも、お父さんが仕事で帰ってこない!と子供が泣きわめいているので、お正月さまは、鬼の姿になって現れるのです。表紙のやさしげな神さまとは一変。なまはげみたいです。
そのあと、お正月さまは都会へでかけて、その子のお父さんが家に帰れるように一工夫するのですが、最後まで正体は現しません。家の人は、神棚に年餅がのっているのを見て、お正月さまが来たと知るだけですし、最後も神社の物陰から初詣する父子をそっと見守るだけです。
この奥ゆかしさが、ニッポンの神様なんだなあ、と思います。
ほのぼのとしたやさしい絵が素敵な絵本ですが、絵が薄くて細かく、見えにくいので、5年生には「朗読」で届けました。