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HANNAのファンタジー気分

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November 9, 2009
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 図書館でハードカバーを借りて読んだ後、文庫本を購入したら、こちらには河合隼雄(心理学者)の解説がついていて、「ラッキー!」と思いました。
 河合隼雄は「すべての少女は心の中に「庭」を持っている」(『子どもの宇宙』)と述べていますので、13歳の少女「照美」が「裏庭」という異世界を旅するこの物語は、彼が解説するにはもってこいの作品だったのでしょう。

 それにしても、『裏庭』というタイトルは、何とも暗くて地味です。このタイトルは児童文学ファンタジー大賞をとった時に知りましたが、どうも読みたいという気にならなくて、同じ作者の『西の魔女が死んだ』の方を先に手に取りました。
 表紙を見ると「GARDEN」と英語のタイトルもついていて、こちらには「裏」という意味が含まれていません。主人公は日本人ですが、洋館やイギリス人が出てくるこの物語は、和風なところと西洋風なところが奇妙に混じり合っています。
 そして、和風なところは、日本の風土独特の暗さ・・・怪談じみた怖さとものがなしさがにじみ出ています。まさに「裏庭」という言葉がぴったり。
 ところが、対照的に、裏庭のある洋館の持ち主であるイギリスの老婦人が登場すると、からりとした明るい力強さが感じられます。無人の古い洋館にある、異世界への出入り口である古い大きな鏡も、アンティークな魅力たっぷりでそれほど怖くない。そして、

  そもそも、裏庭(バックヤード)という言葉自体がマーサには気に入らなかった。打ち捨てられた、とるに足りないものを思わせる、庭を侮った言葉だというのだ。  ――梨木香歩『裏庭』

 と作者自身が書いています。だからこそ英語のタイトルはBACKYARDでなくてGARDENなんでしょうね。

 このような和風な雰囲気と西洋風な雰囲気の混在やせめぎあいは、主人公が旅する異世界にどっさり詰めこまれていて、独特の世界をつくりあげています。が、私にはちょっと詰めこみすぎのように感じられました。主人公が現代少女だからかもしれませんが、登場人物やエピソードが和洋あちこちからの“借り物”のようで、それらをつぎはぎして世界がつくられているみたいに思えてしまうのです。

 たとえば、異世界に入りこんで最初に出会う人物は、ムーミンのスナフキンに似ているというのです。帽子や釣りといった共通点のほかに、ちょっと変わり者で集団に属さないところや、得体の知れないところ、少し怖いようなあんな目つきをしているらしい、そして彼自身も「スナッフ・キンだ」と名乗ったり・・・
 かと思うと「根の国」だの「ハシヒメ」「餓鬼」だの古風でおどろおどろしい和風のイメージ、「ドラゴングラス」「クォーツァス」「タム・リン」など洋ものファンタジーっぽいキラキラした言葉。双子の「カラダ・メナーンダ」(“だからだめなんだ”のアナグラム)「ソレデ・モイーンダ」はキャロルの『鏡の国のアリス』に出てくるトイードルダム・トイードルディ兄弟を彷彿とさせますし、地中から気味の悪い「黒ミミズ」や「地イタチ」が出てくるくだりは、まるでシュールな悪夢。
 また、この作者は香りについての描写が印象的なのですが、異世界で「クレゾール」や「プラスティック」などの今風な匂いがしたりします。

 現実世界と異世界の符合やからみあいは面白いし、心に残るイメージもたくさんあるのですが、私には最後までこのごちゃまぜ感がぬぐえなくて、ちょっと居心地の悪い異世界体験でした。それも作者の意図するところなのかもしれませんが。

 ストーリーはきちんとしていて、心に傷を負った主人公やその家族、周囲の人々もだいたいみんなおさまるべきところにおさまって、物語は終わります。

  「日本ではねえ、マーサ。家庭〔ホーム〕って、家の庭って書くんだよ。〔中略〕・・・日本の家庭はそれぞれ、その名の中に庭を持っている。」   ――『裏庭』

なんていうせりふが、前の「裏庭」「バックヤード」についての発言と対をなしているようで、なかなか考えさせられます。





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Last updated  November 9, 2009 11:24:06 PM
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