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HANNAのファンタジー気分

June 24, 2010
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 去年ご紹介した『ネズミの時計屋さんハーマックスの恋と冒険1〈月の樹〉の魔法』の続編『〈時の砂〉の秘法』を、ようやく図書館で借りて読みました。
 2巻は1巻と同じくらい、いやもっと面白かったです。最近のファンタジーではまれなこの快感を与えてくれたからには、純正ファンタジー的な大感動こそないけれど、私にとって当たり!といえましょう。・・・で、某ネット書店で中古品をつい買ってしまいました。

 舞台は、主人公の時計師ハーマックスが住む都市のほか、1巻ではジャングル地帯でしたが、2巻ではエジプトを思わせる砂漠の中の峡谷に眠る遺跡です。そこにある失われた文明の秘宝をめぐるレトロなアドベンチャーに、思わず「レイダース・マーチ」をBGMに流したい気分。
 しかし、この物語は冒険活劇なのにぐっとお上品です。今回も、冒険の発端になるのは権力争いの陰謀とか戦争沙汰ではなくて、展覧会にネコを描いた「おぞましい絵」が出品されたということ。

  「・・・ピンチェスターは文化的な都市なんだ! われわれは公共の場でネコの話をしない。ネコについて書かれた本は読まない。だからネコの絵を美術館で展示するはずがないだろう!」
  「・・・だれもネコを見たことがなにのに、ネコのヌードが描けるのか? そもそも存在しない生き物なのに、ヌードになれるわけがないじゃないか!」
  ――マイケル・ホーイ『ネズミの時計屋さんハーマックスの恋と冒険2〈時の砂〉の秘法』雨沢泰訳

 市長ネズミは上のように激昂し、いっぽう美術館側は芸術的観点からあえてネコの絵を世に問おうとします。ここで面白いのは、この世界のネズミたちは、ネコを想像上の怪物、または3000年前に滅び去った生き物と考えていることです。人間世界でいえば、ゴジラとかティラノサウルスのように。
 また、ネコの存在を否定する彼らは、ネズミこそ文明を築いた唯一の生き物であると信じています。印刷機も重力も顕微鏡もダイナマイトも、ネズミの学者一族が発見しつくりあげたものだというのです。

 ところが、都市からはるかな西の大砂漠に、3000年前のネコ王国の遺跡が本当にあった証拠が発見されます。そこには進んだ文明があり、なんとネズミは奴隷となっていた! 歴史と文明の根底を揺るがす大発見か!?
 主人公ハーマックスは、(前作同様ひそかに彼が慕う)女性冒険家リンカの飛行機に、亡父の友人である老シマリスとともに乗りこんで、砂漠を目指します。

 ここで登場する(というか、しゃしゃり出る)のが、1巻でも印象的だった化粧品会社の女社長、自らビューティー・クイーンを気取るタッカ・マーツリンです。ネコの絵の展覧会に触発された彼女は、自分でも美術館を建て、そこに巨大なネコ王のミイラ像を据えて町の話題をさらおうと計画します。ミイラを求める船旅を、新商品「ワイルドガール」のキャンペーンに仕立てる抜け目のなさです。
 鼻持ちならないジコチューなうぬぼれ屋タッカは、あまりにくどくて強烈なため笑いを誘い、かえって最後まで憎めないキャラクター。それでいて、自意識過剰な本人の自覚以上に、実は重要な役どころを担っているのです。

 今回も、クライマックスのどたばたは必要以上にハラハラさせず、ちょうどいいさじ加減でテンポよく片づきます。そしてネコ王国の遺跡での発見の中味も、破壊的な兵器などではなく、芸術と心温まるストーリーでした。
 ハーマックスは1巻同様、マイペースで、でしゃばらず、砂漠でもきちんと食べ、自分の本分を発揮します。ペットのテントウムシも健在。また、前作で彼が失恋した相手、ヒロインのリンカはこの巻では婚約者と別れました!

 第3巻(完結編?)『〈消えた“名女優”の秘密〉』を早く読みたい私です。 






Last updated  June 24, 2010 11:57:59 PM
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