2011/02/01(火)23:16
寒がりの妖怪、『ぬくぬく』
天野祐吉さんって、コマーシャルの批評を書いている人だとは思っていましたが、こんな昔話ふうの絵本もつくっていたのですね。寒い季節の読み聞かせに『ぬくぬく』はいかがでしょう。
(じつはまったく同じタイトルの『ぬくぬく』について以前書いたことがあるのですが、今回のは別の話ですので、念のため。)
わらたばを体にまきつけた妖怪が、山道で、「ぬくぬく、ぬくぬく」と言いながら、旅人にからだをすりつけて来ます。これをやられると旅人は三日は寝込んでしまうのです。なるほど、一人で冬の山の中を歩いていると、寒さも身にしみますよね。
でも、この妖怪はワルモノじゃなかった。寒がりなのは、心がさびしかったから。
だから、妖怪をこわがらない女の子がついてくると、食べ物やわらたばを分けてやり、里まで連れてかえってやるのです。すると次の日、子供たちはみんなで妖怪の真似をして、「ぬくぬく、ぬくぬく」と歌いながら、ぬくぬくのところへやって来る。最後は子供とぬくぬくの大行進で終わります。
なんとも、温まるお話です。
もちろん、妖怪をこわがらないといのはかなり特殊なことで、女の子がぬくぬくと一緒に山に行っているあいだ、里では「神隠しにあった」と騒ぎになっています。
それにこの妖怪も、ほんとうは、集団からはみ出してしまった人間で、子供たちとの交流をきっかけに、里に迎えてもらえたらいいなあ、とか、そんな思いもよぎるのですが。
あまり深読みをせずに、「あいつがぬくぬく、どいつがぬくぬく?」と歌い続けてみるのがいいかもしれません。