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HANNAのファンタジー気分

February 3, 2020
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 サイバーがパンクだった頃の前作「ブレードランナー」の30年後という設定の続編「ブレードランナー2049」。すごく長くて暗そうなので劇場には足を運びませんでしたが、先日TV録画で観ました。

 確かに、全画面暗いです。というのも、前作で猥雑・アジアンな未来都市だったLAは、すっかり荒れ果てて雨や吹雪とスモッグで昼夜も分からないほどかすんでいるのです(旧市街はほとんど水没してる設定だそうです)。人影も人声もほとんどないのに巨大広告はまだあるので、それらばかりがむなしく目立ちます。いや、クリアに目立つのではなく、不透明な闇におぼろに浮かんでいて、悪夢的。
 郊外は砂漠化して草木も見えず、どの場面も荒廃と空虚ばかりで、地球とか自然とかはすっかり死に体。すぐ30年後の設定ですが、絵空事とは思えない気がしてとても怖いです。

 前作では、人間臭あふれる都市の中で異質で無機的・暴力的なイメージだった人造人間(レプリンカント)が、今回は無機的・暴力的な環境の中で、異質なほど生き生きとしています。
 こうしてみると、今作は前作を裏返したように作られていることが分かります。

 前作のヒロインのレプリカント・レイチェルが出産したという衝撃の発見があり、彼女を知る旧型レプリカントたちは「奇蹟を見た」としてレプリカントの生きる権利を主張します。死んだレイチェルを丁寧に葬ったり、免疫不全で産まれた子どもを当局から隠し無菌環境を整えて育てたり、彼らの一生懸命さは、人間味あふれています。
 また、主人公のレプリカント「K」の表情がとても人間的。レプリカントならでは(もしくは捜査官という職業柄)ポーカーフェイスなのに、なぜか優しく痛みを知るように見えると思ったら、演じていたのはあの「ラ・ラ・ランド」のセブ、ライアン・ゴズリングでした! (私的にはイマイチだった「ラ・ラ・ランド」ですがゴズリングは◎。何というか、たたずまいに味があります)
 それから、「K」の恋人が、レプリカントですらないホログラム(幻影)の女性なんですが、素直で繊細で思いやりがあって、すごく人間的なんです。あまりに人間なので、「K」がスイッチを切るとぱっと消えてしまうのがショッキングで切ない。

 前作では、レイチェルが自分は人間だと思っていたらレプリカントだったとわかるそのつらさが描かれましたが、今回はレプリカントの「K」がもしかしたら自分は産まれた子どもかも?という希望を持ったりそれがやっぱり違ったり、というつらさが描かれます。このあたり、妖怪人間とか吸血鬼モノなど異形の民によくある、人間性への切ないあこがれがあふれていますね。

 でも、この映画に本当の人間てどれだけ居るんでしょう。誰も自分が人間なのかレプリカントなのか、はっきりと証明することができない世界のようにも思えます。前作の主人公老デッカードも、今回の悪役、ウォレスの社長も、あるいは特別なレプリカントなのかもしれないし。
 人間らしいという点では、宇宙の支配者たらんとするウォレスの言動には情けも倫理観も謙虚さもありません。しかしもしかして、欲得尽くで極悪非道になりうるのこそが人間性なのでしょうか? 

 ともあれ、レプリカントが産んだ娘アナ・ステリンは、もはや人間/レプリカントの区別を超えた存在です。無菌室の中でレプリカントたちのために記憶を紡ぐ彼女は、この世界の未来の希望の象徴のよう。
 そして最後になってやっと、場面は白く明るい雪に覆われていきます。






Last updated  February 5, 2020 12:31:10 AM
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