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テーマ:ファンタジー・児童文学(37)
カテゴリ:これぞ名作!
![]() ところでWikipediaに、アリスが鏡の国を体験したのは「ガイ・フォークス・ナイト」の前日とあります。これはアリスが冒頭で、 「あしたは何か知ってて?」 「男の子たちが、かがり火にする木の枝を集めるのを見ていたの」 「あしたはかがり火を見に行きましょうね」 ――ルイス・キャロル『鏡の国のアリス』岡田忠軒訳 古い角川文庫、以下引用はこの本(画像は岩波少年文庫)。 と言っているからでしょう。この日は確かにかがり火を焚くそうですけど、11月5日です。地球温暖化前とはいえ、英国オックスフォードで雪が降るでしょうか。なぜって木の枝集めは寒さと大雪のため途中でやめになり、窓いちめんに雪がキスするように当たる音がしているのです。 これはやはり冬至とかクリスマス、または大晦日あたりの情景ではないでしょうか。アリスは暖炉の側の大きな椅子でぬくぬくと丸まり、子猫は毛糸玉で遊ぶ…真冬の楽しみですね。 ともあれ、アリスはマントルピースの上の鏡を抜けて異世界へ入ります。 どういう構造の世界だか不明の「ふしぎの国」に比べて、今回はアリスがチェスの歩(ポーン)になって1目ずつ(最初は2目ですが)進み、8の目に到達して女王になる、とっても分かりやすい舞台設定。 といっても、初めて読んだ時チェスのルールを知らなかった私は、なぜ女王はいつも高速で走っていて、王様は居眠りしているのか、とか、ふしぎに思うことがたくさんありました。大人になってチェスを少し覚えましたが、それはひとえに『鏡の国』を理解したいがため。また、英語の原書にはちゃんとアリスの棋譜が記してあり、これでかなり謎が解けました。騎士たちがちょっと前進しては落馬するのもね。 『ふしぎの国』より成長している感じのアリスは、相変わらず妙な言動の登場人物たちに対し、ある時はおびえ、ある時は憤慨し、ある時は笑いをこらえながらも、辛抱強く礼儀正しく、誠意を持って対応していきます。 たとえば、トイードルダムとトイードルディーに対して、最初丁寧に敬語を使って道を尋ねています。ところが二人は学校生徒そっくりなので、アリスの態度は次第に弟妹の遊びにつきあい、けんかをなだめるお姉さんのようになっていきます; アリスは他方の感情を傷つけてはいけないと思いましたので、どちらか一人と先に握手する気にもなれませんでした。…[中略]…一度に両方の手を握りました。すると、たちまち三人は輪になって、ぐるぐる回って踊りだしたのです。 「おれはまっさおかね?」[トイードルダムのせりふ] 「そうね――青いわ――少しはね」とアリスはやさしく答えました。 「それならきょうは戦わないほうがいいわ」とアリスは、仲直りのちょうといい機会と思って、いいました。 「ただ、がらがらのためだけにね!」とアリスはいいましたが、そんなつまらないことのために戦うなんて、少しは恥ずかしいと思ってもらいたいと考えたのです。 こんなふうにアリスは、相手に合わせて対応を変化させてもいるのです。賢い! また、笑いをこらえる場面は前作より多くなっているようです。たとえば、傲岸不遜なハンプティ・ダンプティとのかみあわない会話で、彼女は褒めたり、へりくだったり、話題を変えたり、うまく機嫌を取っていますが、数学が得意でないらしいとわかった時、怒らないで笑いそうになっています; アリスは手帳を取り出しながら、つい微笑しないではいられませんでした。そして、彼に代わって、計算をやりました。365-1=364[筆算] アリス、余裕ですね。そして、返事ももらえず立ち去った時も、 「わたしの会った、好ましく思われない人のうちで――」 と、冷静に、少し気取って感想を述べようとしています。 次の章で一角獣に「化け物」と言われた時も、アリスは笑いを押さえて、あなたも化け物、と言い返しています。その後、何度も「化け物」呼ばわりされてすっかり慣れた、とあります。アリス、見習いたいほどメンタル強めです。 こうして順調に進み、アリスは女王になります。 むかし私は、女王になったあとどんなことをするのかととても期待しました。ところが、突然の混乱であっという間に(と私には思えました)夢が覚め、物語は終わってしまいます。まさにうたた寝の夢のようにはかない感じ。…ですがこれも当然、チェスなのでアリスが勝ってゲームが終わってしまうのです。 この物語も前作と同様、品があって賢いアリスと同じ目線で、周りの人々の見かけや言動がこんなキャラクターに見えるんだな、と思えて自然に読み進められます。アリス自身は大人っぽくなったせいか、前作ほど破天荒な言動をしないのがちょっと寂しいかも。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
December 25, 2024 12:03:50 AM
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