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テーマ:短編小説を書こう!(521)
カテゴリ:Hannaの創作
夏休みに合いそうな、昔の創作を手直しして電子化しておきます。
1993年8月の公明新聞どうわコーナーに3回にわたって掲載されました。当時は畑アカラさんという方が元気いっぱいな挿絵をつけてくださっていました。 * * * スカートゼミ(1) 夏だ。キャンプだ! ぼくは和也(かずや)と「セミネ山自然の家一泊二日」に参加する。いよいよ今日、出発なんだ。おっ、和也のやつ、まっ白な新品の虫とりあみをかついできたな。 「セミネ山っていうぐらいだから、セミがたくさんいるぜ、きっと。つかまえるぞぉ」 「…和也、虫かごは持ってきた?」 「え? わっ、忘れた!」 和也はいつもこんな調子なんだ。 ぼくたちは、キャンプ・リーダーのおじさんを先頭に山道を歩いていたが、前を行く黒ブチめがねの子がふりむいた。 「ぼくはかんさつケース持ってきた。貸すよ」 見ると、それは銀色の虫かごで、かた側に拡大レンズがはめこんである。 「すげー、かっこいい」 感心するうちに、道は上り坂になった。ギラギラまぶしい行く手の山は、ばかでかい深緑のブロッコリーのよう。ジージーとセミの声がやかましい。さすが、セミネ山だ。 川べでお弁当を食べ、また歩いて、ようやくぼくらは「自然の家」に着いた。 「なーんだ、ただのふつうの家じゃん」 和也はまっ先にくつをぬいでドカドカ入っていったが、すぐに 「わっ、何あれ!?」 不安そうな声が聞こえてきた。行ってみると、和也は大きな部屋のまん中で、白目をむいて見上げている。天井にひらたい電灯があって、そこに、木の葉のようなぶきみな影がうじゃうじゃといっぱいうつっているのだ。 黒ブチめがねや、ほかの子たちも次々やって来た。最後に、「自然の家」のかんり人だというギョロ目のお姉さんが来て、みんなの見ているものに気づくと言った。 「あれはね、夜にあかりにひかれて集まったセミの死がいよ」 女の子たちがきみわるそうにあとじさった。 「ほんとにここはセミネ山だなあ」 和也のつぶやきにも、さっきのいせいはない。 その時、リーダーのおじさんの声がした。 「おーい、外でバーベキュー始めるぞ」 みんなはだまってぞろぞろと部屋を出た。 夕食、おかし、キャンプの歌にクイズ大会。それからまだまだ、もりだくさんだ。ぼくらはすっかり元気づき、何でもこいという気分になった。やがてギョロ目姉ちゃんが、 「食後の運動! 夜の森たんけんに出発」 と号令をかけると、たちまちみんな一列になって、細いまっ暗な山道に入っていった。 さっき夕だちがふったので、森には水がいっぱいだった。太いみきはぬれて黒ずみ、やぶが服にこすれると、ザッと水がかかる。頭上のえだから大つぶの水てきが、ぼくの頭のてっぺんにポタッと落ちて、びっくりさせられる。 前を行くのは、しめった足音をたてる黒ブチめがね。じまんのほ虫あみをかついだ和也は、ぼくの後ろ。もっとあとからは、ささやき声をたてながら女の子たちが続く。 息をすうと、森の空気がぼくのむねの中へ流れこんできた。右も左も、木々と下草のひみつめいた暗がりだ。大きなまっ暗などうくつの中にいるような、ぶきみな感じがだんだん強くなる。もうだれもしゃべらない。声をたてるな、夜の森だぞ! ほら、知らない虫がはい回る気配がする、シダの若葉がひらく音がする、ポタポタしたたる水、ぬれたクモの巣、それから…それから… 「あれ、何だろう?」 つづく。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
July 22, 2025 11:49:02 PM
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