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テーマ:短編小説を書こう!(525)
カテゴリ:Hannaの創作
さらにつづきです。
* * * スカートゼミ(3) どうやらギョロ目姉ちゃんの声らしい。 「…ある夏の朝、キャンプに来た子たちが、セミの子供をたくさんとったの。都会の子にはセミがめずらしかったのね。虫かごに入れて部屋においといたのよ。ところが夕方見ると、小さなかごにすきまもないほど、おとなのセミがぎっしりつまっていたの。どのセミも羽や体が曲がったり、ゆがんだりしていたわ。脱皮したのに、せまいので体がうまくのびないまま、かたまってしまったのよ。 みんなはびっくりしてかごをあけた。でもそのセミたち、まっすぐに飛べないの。そして、あかりに目がくらんで、ひとばんじゅう天井でバタバタもがいていた。…朝になると、みんな電灯の上で死んでいたの」 ぼくらは息もできないほどシーンとしてしまった。暗がりが体にしみこむようだ。と、前を行く和也(かずや)が急にくるっとふりむいた。 「おい、幼虫をにがせ。今の話、聞いたろ」 和也にしてはめずらしくまじめなその口調に、黒ブチめがねはしぶしぶかごをあけ、 「一ぴき、二ひき、三びき」 幼虫をとり出して、道ばたの枝にのせた。 けれど、ぼくはまた見てしまった。暗くてわかりにくいけれど、黒ブチめがねのにがしたのは三びきだけだ。最後にとったあの大きな幼虫は、かごのおくに残っている。 ぼくらはようやく暗い森を出た。 次の朝。ぼくは和也の声で目をさました。 「おい、まだ一ぴき残ってるじゃないか!」 和也は黒ブチめがねから虫かごをひったくり、ふたを大きく開いた。そのとたん、 「あっ」 ぼくもふくめて全員びっくりした。中にいるのは茶色いセミの成虫だが、両方の羽の先がまるでスカートのすそのような形にめくれあがっている。かごの底にあたってひん曲がってしまったのだ。“せまいので体がうまくのびないまま、かたまってしまったのよ…” 「こいつ、飛べるかな」 さすがの黒ブチめがねも心配そうな声を出して、かごをまどから外へつき出した。 「よし、いいか。そら、飛べ」 まぶしい朝日をあびて、スカートゼミの黒い目玉がキラリと光った。と、ジジジ! しゃがれた声とかわいた羽音を残して、スカートゼミは飛んだ。先のめくれた羽で、ぎこちなく木立ちのほうへ飛んでゆく。 「やった…よかった。飛べたねえ」 ぼくも和也も、ほっとして笑った。 さて、キャンプももう終わりだ。 「さすが、セミネ山だったなあ」 山道を下りながら、和也がしんこきゅうして言った。 「だってさ、おれ考えたんだけど、ギョロ目姉ちゃんって、セミの女王さまとちがうか」 「そういえば、あのギョロっとした目は、セミそっくりだったな」 「ばかいうな。ギョロ目はただのかんり人だ」 急に黒ブチめがねがわりこんだ。 「でも、けさは見かけなかったよ」 「きっとギョロ目姉ちゃんは、スカートゼミといっしょに森へ帰ったんだ」 「それに、天井の電灯に黒い影なんて、けさはぜんぜん見えなかったぜ」 「さっすがセミの山、セミネ山だなぁ!」 だが、黒ブチめがねはむきになって言った。 「ちがう! この地図の漢字を見ろ。セミネ山ってのは蝉(せみ)じゃなくて、瀬峰(せみね)山だ! セミとは関係ないんだってば!」 おわり。 ずうっと昔、私がキャンプで体験したことをもとにしてできたお話でした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
July 24, 2025 11:55:45 PM
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