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ディズニーの「アラジン」はアニメ版も実写版も、ペルシャやイスラム圏の景色や装束(と思われるもの)が美しくあふれています。砂漠や回教寺院のような建築物や、精霊(ジン)、絨毯etc…(画像はブルーレイ表紙)それらを読むと、「アラジンと魔法のランプ」の話の舞台が「支那=中国」となっていて、まずびっくりします。アラビア世界から見て東方の未知の国として、魔法や不思議な話の舞台とされたのか? しかしそれなら、話に出る「支那」の風俗がまるっきりアラビア風なのは妙ですね。アラビアでアラビア風の国の話を語っても異国の雰囲気は出ないでしょう。 と思ったら、そもそも大もとのアラブの説話集には「アラジン」の話はなかったと解説にあります(「アリババと盗賊」「船乗りシンドバッド」もないそうです)。これにもびっくりです。フランス人ガランが、タイトルの千一夜に足りないので(?)、シリアで現地のキリスト教徒から聞いたお話を付け加えたのだとか。 アラブ世界に住むキリスト教徒からだと、アラビアも中国も異文化という点では同じだったのでしょうか。 少なくとも、中世から近代までのヨーロッパから見れば、そんなもんでしょう。純アラビア風な支那の国が描かれている「アラビアンナイト」は、ヨーロッパ人の憧れる夢のオリエントだったわけです。角川文庫に収録された英語圏の児童書の挿絵には、サルタンの服装や帽子が中国(清朝)風で、日本人からすると文化がごちゃごちゃ、違和感がすごくあります。 一方、悪い魔法使いはマグリブ人(モーロ人とも。北アフリカやスペインのイスラム教徒)で、シリアやヨーロッパのキリスト教徒から見れば西・南方という、対比があるように思われます。 アラジンの話の元になる説話や伝説は他にはないのかしらと思っていましたが、そっくりな話は見つかっていないようです。ただ、手持ちの『子どもに語るアジアの昔話1』(松岡享子訳)収録のアフガニスタンの説話「大工の息子」が少し似ています。 この話ではイスラム的脚色がなく、ランプや指輪の精霊の代わりに動物が助けとなるところが、素朴な感じがします。 イスラム的ということでは、アーヴィングの『アルハンブラ物語』に、スペインで語られる伝説として、「モーロ人の埋めた宝」を紹介し、 [モーロ人が建てた]塔の礎石の下に埋められているイスラム教徒の黄金伝承…[中略]…隠匿された財宝には必ず呪文がかけられていて、魔法や魔よけによって守られている。 ――アーヴィング『アルハンブラ物語』平沼孝之訳 などとあります。アラジンのランプが隠されていた穴が、輪のはまった平たい岩の下にあるというのを、思い出します。 おそらく、オリエンタルな情緒で素朴な昔話を肉付けし、アラジンの物語ができたのでしょうねえ。 そしてディズニーがそこへ個性的なキャラクターを肉付けしました。ランプの精や邪悪な魔法使い、ジャスミン姫も(名前も違いますが)、没個性な昔話とは違って、「個人」として生き生きしています。このようにして起源の分からない説話が、各時代独特のいろどりに飾られながら語り継がれていくと考えると、興味がつきません。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
September 30, 2025 06:25:45 PM
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