
ネズミ年にちなんで…といっても、このブログでは動物ファンタジーに出てくるネズミたちをすでにいくつも、紹介してきました。
そこで今年は、年賀状の絵の題材にした、
『ネズミの時計屋さんハーマックスの恋と冒険』シリーズ最終巻のご紹介です。
おしゃれなネズミの街ピンチェスターの住人、ドーナツ好きの時計師ハーマックスと、飛行機乗りの冒険家リンカの物語は
、「1〈月の樹〉の魔法」、
「2〈時の砂〉の秘宝」、
「3 消えた名女優の秘密」とあって、3巻目でようやくハーマックスとリンカの恋が実ります。
で、最後の第4巻が未訳なのが残念で、以前、原書を買っちゃいましたので、以下に少しだけストーリーを抜粋してみます。タイトルの「
Time to Smell the Roses」は直訳すると「バラの香をかぐ時間」ですが、「一休みする」という慣用句(take time to smell roses)の一部です。「
バラの香りでほっと一息」とでも訳しましょうか。Rose に the がついているのは、このタイトルが、物語に出てくるすばらしいバラ香水の名前でもあるからです。
第1章 バラ戦争 (相変わらず、章のタイトルも凝っていますね!)
「結婚するってこんなにたいへんだなんて、思ってもみなかったよ」 ハーマックス・タンタモクはペンを置いてコーヒーを一口すすった。
そう、ハーマックスとリンカは結婚式の準備をしています! といってもまず招待客を減らさないと予算が足りないし、顧客や知人の多いハーマックスは招待客リストを前に頭をかかえています。
そんな彼の悩みをよそごとに、友人のニップが新聞記事を読んできかせます。
「
海岸に不明死体 バラの都のセレモニー混乱の幕切れ おそらく溺死
6月5日ソーニー・エンド(茨末町とでも訳せましょうか)」
ニュースの舞台ソーニー・エンドは海辺の小都市で、目下、町のシンボルである古い時計塔の修復が計画されています。資金を提供するのは、町の名士で最高級品種のバラ「ローザ・フラグランティシマ」を育てる園芸家ドローゼンクィル。そしてこのバラを使った香水は、あのタッカ・マーツリン化粧品の香水を抜いて、番付ナンバーワンに輝いたというのです。さあ、美の女王を自認するタッカはどう反撃するでしょうか? ソーニー・エンドの水死体と何か関係があるのでしょうか?
原文では rose、drownd、DeRosenquill など似た発音の言葉が多く使われています。
第2章 厚きときも薄きときも (原文はやはり慣用句で「良いときも悪いときもずっと」の意味)
化粧品会社社長タッカは自社ビルの私室で、自分の唇が薄くなったと悟ります。さすがの美の女王も盛りを過ぎようとしているのでしょうか? 香水チャートのトップの座も奪われて、(柄にもなく)哀愁を漂わせかけたタッカは、秘書が届けてきたバラ「ローザ・フラグランティシマ」と、それを使った香水「バラの香りでほっと一息」を試します。そしてその香水を作ったリーゾー・ブリーサムのことを考えます。彼はもとはタッカのアシスタントだったのです。
彼女は考えこみ、考えこみながら花束のバラ全部の花びらを1枚1枚むしっていった。
「好き、キライ、好き、キライ、」と彼女は口ずさんだ。
むしり終わるまでに、床は花びらだらけになった。そして彼女は決意した。リーゾー・ブリーサムはキライだ。ほんとに、大キライ。彼を廃業させてやる。
第3章 ベルに運良く救われて (原文はまたまた慣用句で、ボクサーが試合終了のベルでノックアウトされずにすんだ! つまり偶然助かったという意味)
ハーマックスはまだ招待客リストをしぼりこめずにいます。リンカが忙しそうにやってきて、招待客の人数が決まらないと他のことが決められないと、彼をせき立てます。彼がいいわけに困りそうなところへ、ちょうど電話のベルが鳴りました!
それは例のバラ園芸家ドローゼンクィルからで、非常にせっかちに、ある仕事を任せたいから明日の朝ソーニー・エンドに来るようにと言います。
時計塔の修復の仕事だと思ったハーマックスは、これで結婚資金もたっぷり稼げると喜びますが、明朝までにソーニー・エンドに行けるでしょうか? しかし、大丈夫。リンカが彼女の愛機で送ってくれることになりました。彼女自身は郊外のおしゃれな結婚式場を見学するつもりです。
・・・と、こんな感じで物語が始まります。タッカは悪党を雇います。ハーマックスがリンカにあげようと買ったバラには巨大なあやしいハチがついていて、そのおなかの毛には「IM」という文字が!
つづきます。