文春新書『英語学習の極意』著者サイト

2007/05/24(木)08:13

米国・イラン融和 = インド・ヨーロッパ語族の連帯……

世界を見る切り口(173)

中東につよいトマス・L・フリードマンのコラム。 ことし初めごろは、 「はやく撤退の時期を明確に示してイラク人たちに突きつけないと、 いつまでもイラク人は米国駐留に甘えて、秩序回復に本気で乗り出さない。 <2007年12月には必ず撤退する。 悪いが、あとは知らんぞ> くらいのメッセージが必要だ」 と、まぁ、そういうイラク人への期待感があったのだが、 撤退期限を設けよという米国議会の要求はブッシュ大統領の拒否権発動に遭ってしまった。 だから、撤退期限のことをいつまでも書いていても仕方ないので、 そうなるとイランを取り込むしかない、 というのが、5月20日『ニューヨーク・タイムズ』紙の同氏コラムの骨である。 アフガニスタンのタリバンと サダム・フセインのイラクが イランを牽制・包囲する勢力だったのだが、 この2つの対抗勢力を滅ぼしてしまったから、 あとは <1> 米国がそれに替わる均衡勢力として“永遠に”中東にのこる <2> 盟主としてのイランの地位を認めてやり、懐柔をはかる の2つの選択肢しかないよね。 思い出せば、タリバン掃蕩のときは、テヘラン政権もアフガン北部制圧を邪魔することなく、協力的だったじゃないの。 「その割りに、そのあとの仕打ちが冷たいじゃん」とばかりにテヘラン側は米国不信なのさ。 孫引きになってしまうが、トマス・フリードマンがコラムで紹介している一節がある。 『シーア派の復活 (The Shia Revival)』を著した Vali Nasr から。 ≪中東の安定はいまや米国・イラン間の関係にかかっている。 カイロ・リヤド・アンマン枢軸がこの地域を抑えてくれた古き日々に戻ることなど、夢のまた夢だ。≫ > エジプトとサウジアラビアとヨルダンというアラブ本流の権威が、相対的に低下していることを見取るべきだ、という。 さて、ここから「泉」流でありますが、 エジプト・サウジアラビア・ヨルダンに替わって、 というか、これを圧倒する勢力として イラン(ペルシア)が擡頭(たいとう)するとすれば、 語族の争いという視点でゆくと、 アラビア語の相対的低下、 ペルシア語の擡頭 ということになろうか。 アラビア語は、アフロ・アジア語族(=旧称「セム語族」)でして、 いっぽう ペルシア語は、インド・ヨーロッパ語族なのですね。 だから、もしかりに 米国・イランの融和が成立するなら、 十字軍以来のインド・ヨーロッパ語族による中東制圧の悲願が はからずも成立する、 とマクロ世界史上に位置づけられるのでは。 (ヘブライ語もアフロ・アジア語族だが、こころはインド・ヨーロッパ語族だから。 ……というのは、こじつけが過ぎるか。)

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