カテゴリ:世界を見る切り口
名前はいちいち挙げないが、今回の世界金融危機で
「すわ、米ドル基軸の時代はこれで終わりだ」 と小躍りする論者がいて、現場の感覚とずいぶん違うなぁと思っていた。 金融危機でまとまった米ドル融資を調達するのがラクでなくなったのは事実。 困った事態だけど、要すれば市場が米ドル貨に熱いラヴコールを送り続けているのだ。 米ドルに取って替わる存在かと一時言われたユーロ (こちらは高くなりすぎていたが) のほうがずんずん下がっていく。 サブプライムローンの債権を金融商品化して世界中にばら撒くビジネスモデルで世界中にご迷惑をかけたのが米国金融界であったのは事実で、歴史的 「責任」 はあるだろうが (はやりの 「米国の罠」 ですかな……) けっきょくそうやって 米国国内にはしっかり住宅資産が積みあがり (しかも中国のバブリーな未来永劫だれも住まない投機用マンションではなく、確実に使える物件だ) その費用の少なからぬ部分を負担したのは、ヨーロッパ諸国をはじめ金融商品で儲けようとした国民だった、という構図だ。 帳簿上の損失は米国にもしっかり残ったが、資産もばっちり積みあがった。 米国外の人々は、ひたすら損をしただけ。 だから、あんがい米国が傷ついていないというのは、じつにロジカルなのだ。 なぜ 「米ドル」 がいま一層頼られるのか、わたしはうまく説明ができないが、11月8日の日経にわかりやすいコラムがあった。 記録も兼ねて全文引用させていただく。 『日本経済新聞』 11月8日、17面 「大機小機」: ≪むしろ再確認された基軸通貨ドル 米国発の金融危機が深刻になるなか、ドルへの信認低下が声高にいわれている。 今回の大規模な信用収縮は、双子の赤字を抱えて過剰借金・消費体質の米国にとってダメージが大きいというのだ。 米国では国内総生産 (GDP) の約7割を占める個人消費が低迷し、住宅価格は下げ止まりの兆しも見えない。 企業の景況感も悪化し、雇用情勢も失業率が6%台に乗るなど予断を許さない。 こうした米国経済の不振は米国が絶大な信用力によって世界中から引き寄せてきた資金の流れを阻むと懸念されている。 しかし今回大きく為替相場が揺れているのは、サブプライム問題により巨額の損失を被った大手金融機関やヘッジファンドが資金回収の動きを強めた結果であり、基軸通貨ドルの信認低下が起きているわけではない。 為替の動きを見ると、ドルは対円では減価しているが、ユーロやポンド、豪ドルなどに対しては大幅に増価している。 世界経済が回復への道を歩き出せば、基軸通貨ドルへの需要は高まる。 米国は世界の中央銀行として成長通貨を供給する義務があり、そのために一定の経常収支の赤字を続ける必要がある。 もし米国が経常収支の黒字国になると、世界経済は強烈なドル不足による金融引き締め状態になり、世界デフレになりかねないのである。 今回の金融危機において、ユーロは基軸通貨としての機能が不十分であることが明確になった。 それは欧州中央銀行 (ECB) の中央銀としての権限が平時のものしか与えられていないという事実である。 ECBは通貨の供給や金利政策などの機能を持つが、危機時の金融機関の監理監督権限、すなわち金融機関の破綻の是非、預金の保護、銀行間 (インターバンク) 市場の保証、公的資本の注入などの権限はあくまで各国の主権に属するため、その調整と管理が極めて困難なことである。 基軸通貨になれば、グローバル経済の拡大に応じてユーロ圏域外に対して成長通貨を毎年経常収支の赤字として供給しなければならない。 だがユーロの通貨同盟は加盟各国に財政や国際収支の節度ある運営を求めており、どこの国がどれだけの赤字を負うかなどを決定するのは難しい。 ユーロは基軸通貨としての役割を果たす準備ができていない。 ドル以外に世界経済を支える通貨はない。 ドルは基軸通貨として今後も長く君臨し続けるだろう。(枯山水)≫ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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