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2009/12/07(月)08:30

カネを凍結させるのが 「子供手当」  ビル・エモット氏は的外れ

日本の政治(107)

“民主党不況” を9月29日にグーグル検索したら4,520件がヒットしたが、きょう12月7日には18,500件がヒットする。 “鳩山不況” に至っては、なんと277,000件もヒットする。 ちなみに “小沢不況” は1,370件。 来年の参院選に役立つと思われる政策を背後からごり押ししつつ、責任は鳩山官房長官に押し付ける妙法をご存知のようだ。 * 不況政策の最たるものは、やはり子供手当だろう。 見識不足のビル・エモット氏 (The Economist 誌 前編集長) が、12月2日の日経5面の特集連載 「政権 ― 知日派の見方」 で、「予算編成では何が重要でしょう」 と問われて、こんなことを言っている。 ≪公共工事から、子供手当や失業手当など福祉重視への転換を進めることだ。 理由は2つある。 まず、最低所得層の人々は政府から受け取るお金を全額使い切る可能性が高い。 貯蓄する余裕がなく、100円支給すれば100円使う可能性が高いので、景気の下支えには有効だ。 第2は日本社会の格差が広がりすぎ、福祉政策が必要になったこと。 経済協力開発機構 (OECD) 加盟国の中で貧困層が拡大しているのは日本だけだ。 最低賃金も日本はOECDで最低レベル。 かつてあれほど平等社会だった日本が今や英国以上の格差社会になったのは劇的な変化だ。≫ まったく的外れだと思う。 理由は2つある。 ひとつは、子供手当や失業手当をもらえる人というのは、けっして社会の最底辺ではないこと。 最底辺の人々は、結婚をする甲斐性もない。 あるいは結婚しても共働きでギリギリの生活を維持しなければならないから、子づくりを先延ばしにする。 「子供がある」 ということ自体、今や日本社会のステータスなのである。 子供は “できちゃう” ものかもしれないが、“できちゃった” あとの人間は人生におけるカネの配分をそれなりに長期的に計画する。 その日暮らしを卒業する。 うちでは、長女ができてから次女の中学入学くらいまで、貯蓄に精を出した。 子供のための教育支出が比較的少ない時期。将来に備えようと思った。 娘ふたりが私立中学に入り、親の学習指導を受け付けなくなり家庭教師をつけはじめた頃から、教育支出が見る見る上がり、長女の大学入学ではついに貯蓄の食いつぶしを始めた。 わが家の場合、私立中学だったからカネがかかったが、もし公立中学に行っていたら娘の中学卒業までは貯蓄モードだったはずだ。 子供手当は、子供が中学卒業するまでが対象だ。 人間が人生においてもっとも貯蓄に精を出す時期に与えられるのが子供手当だ。 子供手当をもらう人々は、ビル・エモット氏が言うような 「最低所得層の人々」では決してない。 「貯蓄する余裕がなく、100円支給すれば100円使う可能性が高い」 というのも、まったく外れている。 * 2つ目に考えるべきポイントは、子供手当が長期的に定着する政策だとは到底思われないことだ。 年に 5.5兆円必要といわれる子供手当の財源をひねり出すための事業仕分けショーを見れば、経済成長なくしては子供手当は維持できないことが分かる。 「仕分け 1.7兆円 捻出」 などと新聞は見出しをつけるが、1.7兆円のうちの1兆円は基金の国庫返納などの一時的なものである。 実際に捻出できたのは、0.7兆円だ。 こんな状態で、メリハリ欠如の子供手当に毎年 5.5兆円の財政支出ができると考える能天気な日本人が、どれくらいいるものだろうか。 将来に備えて子供手当は、子供の将来の教育費のため貯蓄に回す。 つまり公共事業に充てられていたら社会に還流したはずのカネが、いったんは貯蓄として凍結されることになる。 貯蓄されたカネを、もちろん銀行は貸し出しに使うけれども、事業のためにカネを借りる人がいなくなるのが不況の本質だ。

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