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2010/03/16(火)00:48

コンサート Frank & Friends/MITSUKO @ Bunkamura オーチャードホール  笹本玲奈さんが 「ルドルフ」 から2曲

映画・演劇(とりわけミュージカル)評(243)

ぼくの大好きなミュージカル 「ジキル&ハイド」 や 「シラノ」 を作曲したフランク・ワイルドホーンさんが第2部後半に登場し、そのピアノ演奏にのって、当世きってのミュージカル俳優が得意のナンバーを歌うという贅沢な企画。 3月13日、夜の部に行った。 Frank & Friends (フランクとその友たち) の名のとおり、ワイルドホーンさんと俳優さんたちが音楽の同志として交わすうちとけた会話が気持ちよかった。 笹本玲奈さんは第2幕前半、薄紅色の大輪のバラの枝を濃いローズ色の地にプリントしたドレスで登場し、楽団の演奏で 「ルドルフ」 から 「愛してる それだけ (Only Love)」 をしっとりと歌ってくれた。 さらに1曲おいて、井上芳雄さんと 「ただ君のために (I Was Born To Love You)」 を。 カーテンコールの挨拶で笹本さんは 「きょう1日だけ、昼と夜の2回の公演でしたが、『ルドルフ』 をこういう形で久々に歌うことができて、感ずるところがあって涙ぐんでしまいました」。 7日の鹿賀丈史コンサートでは、ぴちぴちと明るさ全開でしたが、13日の笹本さんはどことなく沈んでいました。 プロですから、歌うときは その歌の顔になっているのですが、歌やセリフがないときの笹本さんはそのときの気分が正直にあらわれてしまう。 舞台の名演技で大ウソを演じながら、じつは嘘がつけないひとなのです。 いっぽう、第1部の 「MITSUKO ~愛は国境をこえて~」 は、来年春に安蘭(あらん)けい さん主演で舞台にかかるミュージカルの聴かせどころをコンサート形式で披露してくれた。 オーストリアの外交官ハインリッヒ・クーデンホーフ・カレルギー伯爵に見初められ嫁いだ明治女性の青山光子 (ぼくにとっては、香水 MITSUKO の由来となったひと)。 彼女の生涯と、彼女をとりまく世界の波乱が、その子リヒャルトを狂言回しにして語られてゆく。 光子が安蘭けい さん。ハインリッヒは、誰が演じるか。 岡 幸二郎さんあたりでしょうか。わたしは、石川 禅さんヴァージョンで観たいです。 * それにしても、このコンサートは贅沢。 去年6月以来ひさびさの井上芳雄さん。声の伸びが高音から低音までまんべんなく突き抜けていた。 同じステージに田代万里生(まりお)さんも登場するというところがまた。 ふたりとも主役を張るひとだから、お芝居での共演は当分ないだろう。 田代さんの高音は、世界をぐいぐい持ち上げるような歌い上げかただ。 ワイルドホーンさんも 「今回の公演のリハーサルの楽しみのひとつは、マリオのみごとな歌声を発見できたことだった。ニューヨークに連れていきたいくらいだ」 と絶賛していた。 「ジキル&ハイド」 からは、ぼくが心酔する娼婦ルーシーの歌 「新たな生活 (A New Life)」 をマルシアさんが絶唱。じんじん来た。 「罪な遊戯 (Dangerous Game)」 と 「あんなひとが (Someone Like You)」 も。 カーテンコール挨拶でマルシアさんは 「 『ジキル&ハイド』 は自分がミュージカルの舞台にデビューさせてもらった作品で、役づくりはまるで自分の子供を産むような気持ちでした」 と。 マルシアさんはワイルドホーンさんのタイプらしく、ワイルドホーンさんはしきりに彼女の美貌をほめていた。 3月7日には鹿賀丈史さんに 「時が来た」 を歌ってもらって背筋に電流が走ったが、13日の夜は同じ曲をハンガリー人のマテ・カマラスさんが英語で歌ってくれた。 これがまた、よかった。 カーテンコール挨拶で、マテ・カマラスさんは 「きょうは This Is The Moment を昼と夜、2回も歌うことができた。 自分でも感激している」 と上気して話していた。 特筆して褒めておきたいのは岡本 茜(あかね)さん。 今回は第1部で光子の次男リヒャルトの年上の恋人イダを演じ、第2部では 「シラノ」 から 「これが恋 (Love Is Here At Last)」 を田代万里生さんとともに歌った。 長身で愛くるしいルックス。伸びやかな声。これは舞台の神さまが放っておかない。 岡本さんが宝塚雪組を退団後、オーディションで舞台に立ったはじめてのミュージカルが平成19年4月の 「ジキル&ハイド」。 この舞台をぼくは2度見ているが、岡本さんのことは記憶がない。 プログラムを見ると、そのとき岡本さんの名はアンサンブルの皆さんの最後に載っていた。 「シラノ」 の修道女役で、ぼくは彼女に注目した。 鹿賀丈史さんとともに主演していた朝海ひかる さんより輝いて見えた。 * そして、そして、 このコンサートでいちばんの活躍は安蘭けい さん。 第1部の MITSUKO での女役もよかったけれど、第2部で久々に宝塚時代に戻って The Scarlet Pimpernel から 「ひとかけらの勇気 (A Piece Of Courage)」 を歌うと、でかいオーチャードホールが宝塚の侠気で満ち、ぼくのからだも うきうき反応して止まなかった。 (このあと3月18~21日には大阪の梅田藝術劇場メインホールでも公演あり。ただし、大阪公演には笹本玲奈さん・井上芳雄さんは出ないので、別の人たちが 「ルドルフ」 のナンバーを歌います。)

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