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文春新書『英語学習の極意』著者サイト

Feb 13, 2011

 
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カテゴリ:世界を見る切り口
官僚出身の論客でわたしが信頼しているのが、佐々淳行(さっさ・あつゆき)さんだ。初代の内閣安全保障室長。

靖國神社の月刊 『やすくに』 平成23年2月号に 「靖國神社と私」 と題して寄稿しておられる。

警察庁から外務省に出向し在香港日本国総領事館領事として勤務なさった昭和41年、ヴィクトリア湾の小島 Stonecutters Island (=中国語名: 昂船洲) での日本海軍将兵の遺骨収集のことを書いている。

ウィキペディア英語版によれば、ストーンカッターズ島は今では埋め立てで九龍半島につながってしまった。
かつては英国軍が通信施設を置いており、大戦中は日本軍がこれを利用した。血清をつくるための毒蛇の養殖場も置かれていたという。

佐々淳行さんの遺骨収集の話は、そのままテレビの1時間ものの単発ドラマに仕上がる。関係者に取材ができるうちに、どなたかシナリオを書いてもらえないだろうか。

佐々さんの文章から該当部分を引用させていただきますが、その前に月刊 『やすくに』 の宣伝を…。

12 頁ほどの小冊子ですが、毎号2ページものの時論と最終頁の英霊の残したことばが読ませます。
年間購読料は1,200円ですが、靖國神社崇敬奉賛会 (年会費3,000円) に入会しても送付されます。わたしは、同会の終身会員です。


月刊 『やすくに』 平成23年2月号
佐々淳行 「靖國神社と私」 より

≪(…前半略…)

私が靖國神社に感情移入するのは、もう一つ、別な理由がある。
それは私が外務省に出向し、香港領事としてかの地に勤務していた時の、遺骨収集の体験があるからだ。

昭和41年(1966年)5月12日、私は香港島と九龍半島の間のビクトリア湾に浮ぶストーンカッタース島に数名のクーリーを連れてのりこんだ。
昭和19年12月、米軍の空襲によりビクトリア湾で撃沈された海防艦 「神威(かむい)」 ほか数隻の旧日本帝国海軍将兵の遺骨収集のためであった。

151柱の戦死者の遺体は同島に仮埋葬されたまま忘れられ、昭和40年頃になって一人の軍医大尉が突然思い出して厚生省引揚援護局に報告したことから、その回収作業が俄かに浮上したのである。

外務省も厚生省も消極。
問い合わせをうけた英国香港政庁はもっと消極。
なぜなら、文化大革命と紅衛兵大暴動の不気味な黒雲が中国本土ばかりか香港にも立ちこめていて、そんな最中に旧日本兵遺骨の収集など、香港人を刺激する、とんでもない無用の国際協力だったからである。

公電のやりとりの結果、外務省も厚生省も香港政庁も一番事なかれの、ダメでもともと、すべての結果責任は警察庁から出向の佐々領事にありということで合意が成立、私に下った命令は、
「5月12日、午前9時半から午後4時半までに限り、警察庁の佐々領事1名のみ、軍事基地ストーンカッタース島立入りを認める。
クーリー数人の同行は認めるが、英軍は一切手伝わない」
という、ミッション・インポシブルだった。

つまり
「形だけやったことにする、その担当者は外務省でも英軍でも香港政庁でもない警察庁領事」
という、極めて官僚的でやる気のない決定だった。

私は、1体も残さず回収してやると決意してストーンカッタース島に乗り込んだ。

ミルトン大尉という守備隊長が冷たく応対し、
「当部隊には戦争中の日本軍捕虜となり、日本を憎んでいる兵もいることを忘れないように」
「午後4時半に作業は打切り。掘り切れなければそれまで」
「英兵は一切手伝わない」
と過酷に言い放った。

私は炎天下の砂浜にある埋葬現場にクーリーを整列させ、英軍監視の下、「海行かば」 をソロで歌う儀式をひとりぎめで行った。

英軍の軍曹がそばにきて、
「そりゃ何の真似だ?」
と聞くから
「帝国海軍の鎮魂歌だ」
と答えると、彼は制帽を脱いで小脇にはさみ、直立不動の姿勢をとった。
炎天下私はクーリーたちを指揮して遺骨を掘りに掘った。

頭蓋骨が姿を現わすと、私はスコップで掘ろうとするクーリーを制止し、
「手で丁重に掘れ」
と手本を示し、クーリーたちはみんな素直に従った。

大穴の底で一つの頭蓋骨を私は掘りあてた。
白い歯が綺麗にならび、命中した機銃弾の穴がポッカリあいている。多分少年兵の頭蓋骨だろう。
私はその頭蓋骨に向って呟いた。
「20年間も放置しておいてごめんな、私が君を靖國神社に連れ帰ってあげるから」
と。

人影がさしたのでふと見上げると墓穴のへりにミルトン大尉が立っていた。
「君は士官だろう。クーリーと一緒に骨掘りをすることはない、士官食堂で冷たいビールはいかがか」
といたわりの声をかけてきた。

「御好意は有難いが、英側が立入りを認めた日本人は私一人だ。時間も午後4時半まで。
私は全部一人残らず掘るつもりだから作業を続ける」
と私は一矢酬いた。

真先に動き出したのは、さっきの軍曹だった。さりげなく遺骨山盛りの麻袋を船の方へ引き摺ってゆく。
すると英兵たちもこれに倣った。

そして午後4時半。約束の期限までに151柱の遺骨を回収し、船につんでストーンカッタース島を去ろうとしたとき、ミルトン大尉が約一個小隊の英兵を整列させ、
「アテーンション!!」
と号令を下し、私と遺骨に部隊の敬礼を行ったのである。
私は胸が熱くなった。これが国のために戦死した兵士たちに対する万国共通の国際礼譲なのだと痛感した。≫



これをテレビドラマにするにはかなりの追加取材が必要だが、最後のほうの軍曹の協働、そしてミルトン大尉の号令のシーンは心をゆさぶる。

皮肉なことに日本社会の風潮からいえば、テレビの視聴者の大多数はおそらく佐々淳行さんにではなく、ミルトン大尉以下の英将兵の立場に自己投影するにちがいない。
佐々領事のお手並み拝見とばかりに。

だから視聴者は、ドラマの後半、ミルトン大尉や軍曹の立場に立って 「自分ならどうするか」 と考える。
そして、英将兵の行動にだいじな基本を教えられる。

屈折しきった日本だから、佐々淳行さんの遺骨収集が得がたいドラマになる。






最終更新日  Feb 27, 2011 11:51:26 PM
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