2011/05/26(木)07:43
廃炉・解体のコストは、いずれかかる。原発は設計寿命まで使いきるべき
原子力発電はほんとに安いのか?
運転中の発電コストが安いのは日々実証済としても、老朽化したあと廃炉・解体するコストはどうか。
放射性物質つきの大量の瓦礫をどこへ持っていくのか決まっていないのだから、廃炉・解体の費用は未知数だ。
原子力発電のコストは過少見積りではないか、という議論は昔からある。
わたしだって、そこを突かれるとコメントのしようがないさ。
しかし自信をもって言えるのは、次のこと。
いま稼動している原発を、政治的な理由で早々に廃炉・解体しても、設計寿命まで使い切ってから廃炉・解体しても、後始末のコストは同じだ。
あたりまえだけどね。
それなら少なくとも、動いている原発は設計寿命まで使い切るべきだ。
建設中の原発はどうか。
廃炉・解体は、2050年ごろだよ。それまでに30基以上の原発の廃炉・解体が終わっているわけだ。
ぼくが生きてりゃ90歳になっているころだけど、さすがにそのころの人類は廃炉・解体の技術ノウハウを開発しきっているだろう。
建設中の原発をあきらめるべきではない。
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5月22日の日経7面に囲み記事で、 A.T. カーニー社が試算した 「原発全廃後の電力料金」 のことが載っていた。
原発を全廃したら2020年ごろの電力料金は70%アップだろう、という内容。
さすがに、いま全国的輪番停電覚悟で原発全廃というのは現実的にありえないから2020年に設定したのだろう。
勤務先の仕事でお世話になった A.T. カーニー社の人がたまたまピントのずれた人だったこともあって、この記事は一歩引きながら読んだけれども (もちろん同社には優秀なかたも多々おられるはずです)、こういう試算をいろんなところで行って、原発の必要性について共通の認識を広げるべきだ。
日本経済新聞 平成23年5月22日 7面
≪電 気 料 金
原発全廃なら70%上昇も
2020年に、民間が試算
原発全廃で2020年に電気料金は70%アップも――。コンサルティング大手の A.T.カーニー (東京・港区) は、東京電力福島第1原発事故を受けて脱原発を進めた場合の電力料金シナリオをまとめた。
原発を軸にしたエネルギー政策の見直しが避けられないなか 「料金負担を含めて議論する必要がある」 としている。
原発の廃炉コスト1基あたり1,000億~2,000億円、太陽光導入のための送電網強化対策約4兆円、電力需要4%減などの前提条件をもとに発電コストを算出。
国内54基の原発を停止し、発電量で約30%を占める原発分を液化天然ガス (LNG) で17%、残りを再生可能エネルギーで代替した場合、2020年の1キロワット時の発電コストは70%増、二酸化炭素 (CO2) 排出量は19%増となる。
稼動から40年以上の老朽化した原発を止めた場合、2020年時点で37基の原発が稼動し (設備利用率65%)、原発比率は16%となる。不足分を再生可能エネルギーと LNG でまかなうとすれば発電コストは48%増となる。
同じ稼動数で設備利用率を85%まで引き上げれば発電コストは5%増にとどまる。
政府は昨年6月、2030年までに原発など CO2 を排出しないゼロエミッション電源比率を34%から70%に引き上げることを柱としたエネルギー基本計画を策定。原発事故を受け全面的に見直す方針を打ち出している。≫