2011/08/24(水)23:39
「三銃士」 @ 帝国劇場 堂々のミュージカル、再上演は確実ですね
いいミュージカルを観ると、1週間も2週間もそのメロディーがぼくを支配してくれる。
5月に2度観た 「レ・ミゼラブル」 は脳の音楽館で1ヶ月も鳴り続けていた。
8月26日まで帝劇で上演の 「三銃士」 は、7月28日と8月4日に観劇した。
スターウォーズのテーマ曲のように華麗なオープニングに始まり、エレジーからロックまで、聴かせどころたっぷりのメロディーが酔わせてくれる。
ドイツ語版のCD “Drei Musketiere・Das Musical CD” を聴くと (いまも書きながら聴いてる)、勇ましくも悲しく、氷原が熱く燃え立つ音楽に包み込まれる。
平成18年にオランダで上演された 「レンブラント・ザ・ミュージカル (Rembrandt De Musical)」(日本では未上演、ぼくは CD を聴いて惚れた) の肌合いに通じる曲もいくつか。
とくに、瀬奈じゅんさんが歌う 「帰ってきたミレディ」 に、「レンブラント」 のメロディを思い出した。
それも不思議ではない。
だって 「三銃士」 の音楽を担当したのは、オランダのポップミュージシャンの兄弟で、ミュージカル作品として世界初演を迎えたのも平成15年、オランダだった。
いっぽう 「レンブラント」 の音楽を担当したのは別のオランダ人・ベルギー人のミュージシャンのペアだった。
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ダルタニャンが恋するコンスタンス役の和音美桜(かずね・みおう)さんの微笑みが輝き続けてうつくしい。
自然な微笑みがかたまることなく、舞台で咲き続けた。
声もクリスタルに清らか。
和音美桜さんの舞台は、平成22年1月に 「ウーマン・イン・ホワイト」 @ 青山劇場で観た。悲運の狂女 アン・キャスリック役を演じていた。
コンスタンス役のあどけなく可憐なほどにうつくしい姿をみて、ファンクラブがあれば入りたいと思いましたが、ファンクラブはないようです。ブログを読むと、しっかりした芯のとおったひとです。
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リシュリュー枢機卿を演じる山口祐一郎さんの、気迫がぴっちりとつまった 「静」 と、ロックミュージックにはじけて縦横に闊歩する 「動」。
しっとりと歌い上げる 「おお 主よ」。
ダンス オブ ヴァンパイア の闇の深みを感じさせる 「我が心 氷にあらず」。
全開パワーの 「我を信じよ!」。
この3曲を聴くだけでも、祐一郎さんのリサイタルに来たような高揚がある。
脊椎に電流を走らせたのは、悲運の女傑ミレディと三銃士のひとりアトスの、せつない別れの場面だった。
瀬奈じゅんさんの歌い上げる 「あの夏はどこに」。
久々にからだじゅうに電気がはしった。Viva, musical!
2度目の観劇では、すでに耕されたぼくの心に、アトスの歌うバラードが めらめらと焔をあげた。
ゆえあって別れたけれど決して忘れられない美しきミレディへの思いを歌う橋本さとしさんは、まるで自らの恋の遍歴をかえりみながら思いを噴き出させているかのようだ。
すごみのあるバラードだった。
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配役の妙。東宝ミュージカル陣の才能のバラエティといったら。
歌のうまさと軽やかさは当然として、コミカルさも自然に湧き出す井上芳雄さんのダルタニャン。
独特のスパイスが匂いたつ、坂元健児さんの狂言回しとジェイムズ。
歌がひとつもなくてもったいない気もしたが、ひとひねりも二たひねりもあるルイ13世を颯爽と演じた今 拓哉(こん・たくや)さん。
「ダンス オブ ヴァンパイア」 や 「レベッカ」 で他人には真似のできない “怪演” をみせつづけた吉野圭吾さんのロシュフォールは、リシュリュー枢機卿の忠実なしもべという役どころで、遊びにくかったのか “怪演” は不発だった。
これはちょっと残念。
今回の「三銃士」は、ふたりのビルの対決でもあった。
帝劇の 「ミー&マイガール」 でビルを演じた井上芳雄さんと、東京宝塚で同じビル役を観せてくれた瀬奈じゅんさん。
瀬奈じゅんさんの力強く躍動するビルはぼくには驚きだった。井上芳雄さん以上の出来に思えた。
だから今回の三銃士の瀬奈じゅんさんにも、とてもとても期待していたので、神出鬼没の疾風から天へと昇華するミレディの人生を見せてくれて満足でした。