2012/03/18(日)18:54
『シャンタラム(Shantaram)』 by Gregory David Roberts (新潮文庫)
「シャンタラム」 とは、主人公のオーストラリア人がボンベイで得た名だ。
単なるヴァイオレンス小説ではない。
ぼくのしらないボンベイのスラムの喧騒をかくも愛情こめてリアルに描けるものかと驚嘆させる上巻、痛々しさの極まる中巻、怒濤のアフガニスタン戦と謎解きの下巻まで、伏線をはりめぐらし、印象深いことばの結晶をちりばめてある。
登場人物たちと再会したいと、そんな思いを残す読了感。
映画 「ドラゴンタトゥーの女」 を観たときも、『シャンタラム』 の世界のヴェールが心にただよった。
≪光とは神が宇宙に、私たちに、語りかける手段なのかもしれない。≫
ボンベイのマフィアの頭目、アブデル・カーデル・ハーンが言う (下巻145頁)。
≪愛とは自分以外の真実を情熱的に探すことだからだ。
…
あらゆる愛の行為――心が真実を捜し求める瞬間――は宇宙的な善の一部であり、神、あるいは私たちが神と呼ぶものの一部だ。≫
(下巻164頁)
≪運って、運命が待ちくたびれたときにめぐってくるものよ。≫
珠玉のことばがあふれる魅惑の女性、カーラ・サーラネンのつぶやき (下巻514頁)。