文春新書『英語学習の極意』著者サイト

2012/09/27(木)09:04

lest xxxx should yyyy たとえば、中国が yyyy しないように…

中 国 界(103)

高校生のころ、学校で教わるが実際には使われない英語の典型として “lest xxxx should yyyy” という表現がよく槍玉にあがっていた。日本の、文法中心の英語教育への批判として。 念のため書いておくと、“lest xxxx should yyyy” は 「xxxx が yyyy しないように」 という意味だ。 たしかに会話で使うような表現でないことは確か。 会話なら、 “so that xxxx may not yyyy” とか、あるいは発想を変えて “to prevent xxxx (from) yyyying” といった言い方をするだろう。少なくともぼくは。 だからといって “lest xxxx should yyyy” を知らなくてよいかというと、そんなことはない。 人間の傾向として、名詞・形容詞・動詞はまめに辞書を引こうとするし、辞書を引くことへの抵抗も少ない。日本語だって、知らない名詞や形容詞は、字引を引いて (いまなら 「ネットで調べて」?) 意味を確かめようとするだろう。 しかし lest のような機能語 (lest は接続詞) を辞書で調べるのは面倒くさく感じられる。 そしていい加減に読み流す……と、とんでもないことになる。 接続詞の lest には 「~しないように」 という否定の意味が、地雷のように潜んでいるからね。 実際に使われることが少ない接続詞でも、いざこれが出てきたときは極めて要注意なのである。 だから、高校生たちの頭の隅っこに “lest xxxx should yyyy” を刻んでおくのは、意味がある。 * と、突然に “lest xxxx should yyyy” のことを書いたのは、9月25日付のウォールストリートジャーナル紙の社説(Review & Outlook) で、この構文が2度も使われていたからだ。 反日を煽っておいて、高まりすぎると抑えにかかる中国政府のやり口を評して、 This dual approach typifies Beijing’s attitude. The Communist Party benefits from keeping anti-Japanese feeling simmering, since it derives its historic legitimacy from (supposedly) driving out the Japanese invaders and restoring China to its proper place in the world. But anger against Japan must also be kept within bounds, lest protesters blame China’s leaders for not being more assertive with Tokyo. (こういう、あちらと思えばこちらというアプローチは、中国政府の典型的なやりかただ。 共産党としては、反日感情がふつふつと煮えたぎるほうが都合がいい。共産党の歴史的正当性は、日本の侵略者を追い出し(と一般には言われているが)、中国を世界におけるしかるべき位置に復帰させたことにあるとされるから。 しかし日本への怒りが度を過ぎることがあってもいけない。反日抗議の声が、中国の指導部は日本に対して腰がひけている、などと批判をしないように。) もう1箇所は、社説の最後のところ。 中国の体制側が自国中心主義に安易に身をまかせぬよう、米国はきっぱりとした対応が必要だ、というもの。 So far China has not sought to overturn the international status quo as the Soviet Union did, but a rising, undemocratic power has often destabilized the world order, especially when nationalism is in the saddle. The U.S. needs to take a firm line against Chinese aggression toward its neighbors, lest Beijing’s rulers think they can indulge their nationalist furies without cost. (これまでのところ中国は、ソ連がおこなったような国際秩序の破壊というところまで踏み込んではいない。しかし、非民主的勢力が力をつけると、国際秩序を不安定化させることが多い。 米国は、近隣諸国への中国の侵略に対してきっぱりとした対応をすべきだ。自国中心主義に安易に身をまかせるわけにはいかぬと中国政府に思い知らさせる必要がある。) 以上ふたつの用例は、米国式に 「should なし」 表現になっている。 より正確にいえば、動詞のかたちは 「仮定法現在」。つまり、たとえ主語が三人称単数でも、いわゆる三単現の –s が付かず、動詞の原形が使われる。

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