2013/02/16(土)22:24
聖マリアの乳首 @ エル・グレコ展
西洋の古典絵画のなかでも、エル・グレコの作品は筆致や配色が特異なので、わたしのような者でも
「あ、エル・グレコだ!」
と当てることができる。
時代に先んじた特異性ゆえに長いあいだ忘れ去られ、そして幸運にも再発見・再評価された。
エル・グレコの絵に、ぼくは浮世絵の大衆性、漫画の速写性を感じるのですがね。
展覧会ポスターに使われた、高さ3.47メートル、幅1.74メートルの 「無原罪のお宿り」 が掉尾(ちょうび)を飾っている。
下から見上げることを計算に入れて人体を縦長に描いてあるという解説が十分に流布されたためか、絵の前にかがみ込んで下から見上げる実践者が目立つ。
ぼくは 「無原罪のお宿り」 よりも、「聖アンナのいる聖家族」 が好きだな。1590~95年頃の作という。
聖アンナが聖マリアの母であったことを、今頃になって知った。
聖アンナ、聖マリア、聖ヨゼフと乳飲み子イエスの聖家族だが、この絵で驚くのはイエスに乳をふくませようとする聖マリアの右乳房が乳首まであらわになっていること。
さすがに乳首も乳房全体も肉感こめて描いてはおらず、乳房全体を白い光で照らし出すことでエロチックな要素を洗い落としてある。
1576年頃の 「悔悛するマグダラのマリア」 と 「受胎告知」 も、生き生きとしていて好きだ。
1571~72年頃の作という 「燃え木で蝋燭を燈す少年」 にも驚いた。光と影の荒削りな躍動感。オランダ絵画に、こういうスタイルの絵がなかっただろうか。